条くんが私に顔を近づけ、私は目を閉じる。
フワッとセクシーな匂いがして、条くんの息遣いを間近に感じる。
と、ふいにエレベーターが止まった。
チン!
目を開けると、条くんが
「甘いの…好き?」
って私に聞いた。
キスもしてないのに、雰囲気だけで酔ってしまった私はボーっとして…
日本語に頭がついていかない。
「甘い…の…キス?」
プハッて条くんが笑って、
「違うよ!甘いキスもいいけど、スイーツのこと」
って言って私に手を差し出した。そして私の手を取ると、優しく引っ張ってエレベーターを降りた。
そこはホテルのカフェで、条くんはスタッフに「ふたり」と言うと、案内された席まで私の手を引いて歩いた。
席に着くと、条くんがスタッフに、
「ケーキ見せてあげて?」
と言った。私はスタッフが持って来てくれたケーキの中から好きなのを選んだ。
「条くんは?」
「やっぱショートケーキでしょ」
苺のショートケーキを見て嬉しそうに笑った。
それから、ふたりでケーキセットを注文して食べた。
「ごちそうさまでした。すっごく美味しかったです」
「よかった」
ニコニコして口を拭く条くん。
「でも、甘いキスの方がよかったかなぁ♡」
なんて、肩をすくめて横目で条くんを見て言ってみた。
「食っといて、それはないでしょ!」
「キス、タダでできます。ケーキお金かかります。条くん、お金もったいない」
条くんがプハッて吹き出した。
「だから食ってから言うなって!」
「条くん、さっきエレベーターの中でキスしようとしてました」
「してないよ。誤解、誤解」
「本当に?」
「ほんとほんと」
じっと条くんの目を見つめる。
条くんが目を逸らせて、戻ろうかと言った。
レジを済ませて、カフェを出た所で、私は条くんの背中に話しかけた。
「…キスしても、いいですよ?」
条くんが立ち止まって、ゆっくり振り向いた。ピクリと眉を上げる。
「…どっちが、口説く役だっけ?」