GUILTY 82 長野という男 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


「男⁇女⁇」


凛子は思わず身を乗り出していた。



「男です」



「よかった」



「なんで安心するのかな」



凛子は目を丸くした。



「え⁇博ちゃんってまさかそういう趣味⁇」



「かもしれませんよ。独身だし」



「嘘⁇だから私のこと全然相手にしてくれないの?」



凛子は、ふふふ、と笑った長野の意味深な顔を唖然として見る。と、その時デザートが運ばれて来た。



「わっ!美味そう。お凛さん、溶けないうちに、さぁ



言われて、凛子はシャーベットを口に運んだ。



「いただきます。んーっ!美味しい!」



その後、長野は食後のコーヒーを飲みながら、ジビエについてのうんちくを語り、凛子はいつの間にかその話に引き込まれていた。



「長野に地元で獲ったジビエを食べさせてくれる美味しいお店があるんですよ。森の中にあって



「素敵!行ってみたいわ」



「じゃあ行きますか?今度」



「ほんとに?嬉しい」



「予約しておきますよ。いつがいいですか?」



「いつでも。博ちゃんに合わせるわ」



「うーん。来月なら



24日!」



「僕に合わせるって言わなかった?今」



「クリスマスイブは都合悪いの?」



「今のところ



長野は顎に指を当てて、スマホを見る。



「予定はない」



「じゃ、決まり!」



「仕事が入ったら、ドタキャンもありで」



「わかってるわ」



「お互いにね」



「楽しみにしてるわ。ジビエとヒロシ」



「僕は食えませんよ」



「ふふ



凛子は肩を竦めて笑った。



「食えない男だもんね」



凛子はグラスに口をつけて長野を横目で見ると、クッと赤ワインをあおった。





長野は凛子と食事をした後、妖しいピンクのネオンが光る通りに来ていた。


その通りにあるゲイバーの中に入ると、店の奥から美しい青年が出てきた。



「長野さん!いらっしゃい」



微笑んで、長野に取り付く。



「やあ。外に出ないか?」



「いいよ。じゃ、ちょっと店長に言って来るから待ってて」



長野はホスト達の視線から逃げるように、


「外で待ってる」



と言って店を出た。




しばらくすると、青年がお待たせと言って出て来た。


ふたりは喫茶店に入った。



「誕生日、おめでとう」



「ありがとうございます」



長野はリボンのついた小箱を取り出した。



「わ!うそ⁈なになに?」



「開けてみて」



中には、ピアスが入っていた。



「わ!素敵!ありがとう〜!大事にします!」


青年の喜ぶ顔を見て、長野は微笑んだ。



「今回は、ありがとう。囮捜査に協力してくれて。未成年の君に



「ギリギリね。もう18歳になりました」



「そうだね」



大阪では、岡田や井ノ原の協力のもと、うまい具合に時効が来ていない事件が見つかったが、東京ではそれが見つけられなかった。



そこで、長野は独竜会とSNSを利用して、リストに載ってる男達を、この青年のところにおびき寄せ、新たに罪を犯させたのである。



売り専をしている青年にとっては、新たな客を取るだけの話であったから、捜査に協力するのはたやすいことであった。


それに、スカウトの森田から紹介されたこの長野という刑事のことを、青年は一目見て気に入ったのだ。


美しい顔立ち。聡明な話ぶり。優しい笑顔。上品な物腰。その長野に、自分と同じ施設上がりの殺人犯、三宅の話を聞かされたとき、青年の正義感に火がついた。



「時効が…10年?」



「そう。10年経てば罪には問われない。やられた方は、それで人格が破綻したとしても、だ。まして、子供に対して犯した罪に10年の時効があるなんて



長野は悔しそうに俯いて、首を振った。



「法は許しても、俺は許せない」



長野の強い瞳に青年は胸を打たれた。



「協力してくれるかい?」



「はい」



「俺に頼まれたことは誰にも内緒だ」



はい」



青年はあと数日で18歳になるところだった。目的はどうあれ、未成年の売春を暗黙した上に、それを促し、囮捜査に利用するなど、上にバレたら長野の刑事人生は終わりだ。


しかし、長野は、倫理的なことや常識、そして刑事としての良識でさえ、必要とあらば捨てる。


仏の長野が独竜会に恐れられているのは、目的のためには手段を選ばない型破りな強引さと胆力を、その涼しげな美しい仮面の下に隠し持っているからだった。







喫茶店を出て、別れ際に青年が言いにくそうにもじもじと長野を見た。



「長野さんはそのノンケですよね?あ、ノンケっていうのは



「知ってるよ。うん。まあ、そうだね。僕は女性が好きかな」



「そうですか」



青年は見るからに残念そうに肩を落とした。



「彼氏はいないの?」



青年はハッとして顔を赤らめた。



「ああ、ごめん。立ち入ったこと聞いて」



「いいんです。彼氏はいません。長野さんは?」



「俺?」



「いるんですか?彼女」



「彼女はいない」



「へーぇ⁈意外だなぁ!じゃ、クリスマスはお一人様?」



「彼女はいないが、イブには予定がある」



「え?なにそれ?デート?それとも仕事?」



「うーん


長野は腕を組んで目を閉じた。



「悩まないでくださいよ!」



「ハハハ!」



長野は明るく笑うと、じゃあまた、と言って手を上げた。



「あ長野さん!」



青年は、颯爽と人混みの中に消えていく長野の後ろ姿を見送ってため息をついた。



「はあ。長野さんって不思議な人



見返りはなくとも、長野のためならまた捜査に協力してもいい、いや、したいと青年は思った。