GUILTY 52 岡田の実家 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


岡田と井ノ原は愛媛から急遽大阪に向かうことにした。大阪で降りると、その足で井ノ原は府警に出向き、岡田は実家へ立ち寄った。




「パパーーーっ‼︎



実家に着くと、駿作が玄関まで飛んで来て岡田に抱きついた。



「駿作っ!」



ぎゅむっとしがみついてくる駿作の温もり。柔らかい体。陽だまりのような匂い。


岡田は我知らず目頭が熱くなった。



「おかえり。言うても仕事か」


と、姉はため息をついた。



「ああ。姉ちゃん、ありがとうな。駿作のこと。勝手にいなくなったりして迷惑かけたな」



「迷惑っていうか心配したわ。ほんまに。あんたも小さい時よう行方不明になっとったけど」



「行方不明って何やねん」



駿作を抱いたまま、岡田は笑った。



「ほんまやで。なあ?お母さん」



姉が振り向くと、母も隣で、



「せやったなぁ」



と相槌を打った。



「ほら!婆ちゃんに新喜劇連れてってもらった時、婆ちゃんとはぐれて。あんときは大変やったで」



「そんなことあった?」



「ほら。ほんま覚えてへんねんな。准。あん時のこと。夜遅くなってひょこっと見つかって、准、何言うた?『よその子と遊んでた』やで。なぁ?お母さん」



「そやったかなぁ。私ももう忘れたわ」



「えーっ?」



「准、まあ上がりぃな」



母はそう言うと、リビングの方へ歩いて行った。


岡田は駿作を抱っこしたままスリッパを履いて、母の後について行った。


「パパ、悪い子だったの?」



駿作が小声で岡田に聞いた。



「悪い子じゃないよ。めちゃくちゃいい子だったよ?」


片眉を上げて、小声で答える。




「ほらほら。子供にそんな嘘ついて、めちゃくちゃ悪いオッサンやんか」



「うるさいわっ。あ。そうだ。駿作、岬先生からお手紙来た?」



「うん!」



「パパに見せてくれる?」



「いいよ!あっちあっち!」



実家へ来たのは、岬の居場所について手がかりを掴むためだった。


駿作は宝箱から手紙を取り出し、岡田に渡した。岡田は消印を確かめ、それから中を見た。


手紙には、引っ越したから保育園にはもういないと書いてあった。連絡先や、手がかりになるような記述はなかった。



すると、



「岬先生もいなくなっちゃったんだね」



と、駿作が呟いた。



「岬先生、どこに行ったの?先生には、会える?」



岡田は駿作の前にしゃがんで手紙を見せた。



「ほら、ここに『また会おうね』って書いてあるだろ?きっと駿作が会いたいってずっと思ってたら、いつか会えるんじゃないかな」



と微笑んだ。




「ねぇパパ」




「ん?」



「お手紙、ママにもちゃんと渡してくれた?」



不意を突かれて、ドキッとした。



「あああ。でも、ママは手を怪我しててね、お返事が書けないんだ」



「パパ



ん?」



「パパって、嘘つきなの?」



「ハッ。なんで



「さっきおばちゃんが言ってた」



「あれは



「ねぇ、パパは僕に嘘ついてるの?ほんとはママ、もういないの?」



「え?」



「僕のママ、死んじゃったの?」



岡田は予想外の言葉に一瞬固まった。



まさか駿作が母親と会えないことの腑に落ちなさを、そんなふうに理解しようとしていたとは



ここは、死んでなんかいないよと笑い飛ばすべきなのだろう。和佳子は生きているのだから。



だが、駿作の母親としての和佳子は果たして、本当に生きていると言えるのか?



いっそ死んだことにしてやった方が駿作のためには、いいのかもしれない。



それにしてもと岡田は思った。



考えてみれば、駿作の母親も、母親のように慕っていた岬も、自分が駿作から取り上げてしまったことになる。



そのことに気付いて、岡田は愕然とした。



するとその時、リビングのテレビから「独竜会」という言葉が聞こえて来た。



画面に目をやると、独竜会の本部事務所から段ボール箱を運び出す背広姿の男たちが映っていた。



銃刀法違反の容疑で事務所が家宅捜索を受けている様子だとキャスターが伝えた。



「やったな長野さん」



長野の目的は、あの顧客リストの正体に違いない。銃刀法違反を口実にガサ入れをして、一連の殺人事件との関わりを示す証拠を掴むつもりだ。



自分もここでゆっくりはしていられない。



「駿作、この手紙、ちょっとパパに預からせてくれ」



岡田は手紙をジャケットの内ポケットにしまった。



「いいよ!」



駿作は目を輝かせた。



「パパが岬先生に会わせてくれるの?」



事件解決のために岬を見つけようとする父親と、純粋に岬に会いたいと願っている息子…。




「会わせてあげられると、いいんだけどな」



「パパ、頑張って見つけてよ。刑事なんだから」




「了解」



岡田は駿作に向かって敬礼した。