GUILTY 51 三宅の笑顔 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?



森田に連絡を取った後もしばらく寝付けなかった三宅は、明け方になってようやく眠りに落ちた。


朝、目が覚めると既にベッドに岬の姿はなく、時計を見るととっくに岬の出勤時間を回っていた。


「やっべぇ!」



保育園まで送って行くと約束したのに!


三宅は跳ね起きて部屋を見回した。


すると、ひょこっと岬がキッチンから顔を出した。



「あ。やっと起きた」



寝癖頭に上半身裸の三宅はポカンとして岬を見た。



「あれ?え?」



もう一度時計を見る。



「岬、今日休みだっけ?」




「お休みにしたの」




「え?なんで。あ!俺が送って行くって言ったのに起きなかったから?ごめん!」




「違うよ」



岬はベッドに腰掛けて、三宅の髪に手を伸ばした。



寝癖を直しながら、



「健ちゃんとデートしたいなと思って」



と微笑んだ。



「え?ってことは、サボり?」



岬は、照れ笑いしながら、うん、と頷いた。




「健ちゃん新喜劇、見に行こっか?まだ行ってなかったもんね」









三宅と岬が大阪を選んだのは、三宅が幼い時に母と旅行に来た思い出があったからだ。それは三宅が経験した唯一の家族旅行だった。



「そんときさ、新喜劇観たんだよ。もう大爆笑してさ、俺が人生で一番笑ったのって多分あの時」



「ふふ。いくつだったの?」



「小1かな?そんときさ、東京で母の彼氏と一緒に住んでたんだけど、なぜかそいつはいなくて、母とふたりだけで大阪来たんだよね」



「彼氏ってその



「ああ、そう。俺がそいつの息子だって、森田が言ってたあの男」



「そう。ねぇ、じゃあ健ちゃん、大阪に行く?」



「そっか。そうだなぁ。大阪にしようか。人が多い都会の方が、隠れるにはいいかもしれない」




そうして、ふたりは大阪に来ることを決めたのだ。



岬も、岡田の出身地であることで、なんとなく大阪に親しみを感じていた。


もう二度と岡田に会うことはなくとも、どこかで岡田と繋がっていたい。無意識のうちに、そんな思いがあったのかもしれない。







岬は、昨夜森田が訪れたときの三宅の様子が気になっていた。



絶対守ると言われて不安になるのは、三宅に悪い気もしたが、岬は三宅のその意志の強さが怖かったのだ。



三宅は見た目のわりに、男らしいところがある。三年前、音信不通になったのも、岬に手を出されたくない、岬を守りたいという気持ちがあったからだ。



しかし、聞けば借金を抱えたきっかけも、盗みの濡れ衣を着せられたからで…だったら自分に一言相談してくれれば、他にやりようがあったのではないかと、岬はそう思わずにはいられなかった。



三宅は、強い意志や大胆さを持ちながら、一方で、繊細で脆いところがある。どこかアンバランスなのだ。その危うさがほっとけないのだが…。




だから、岬は三宅を笑顔にしたかった。



「岬を絶対守る」という言葉に悲壮な決意が秘められているようで、怖かったのだ。



その決意も、不安も、そしてこれまでの三宅の不幸も、全部笑い飛ばしてしまいたかった。



岬は、三宅の笑う顔が見たかった。