GUILTY 42 三宅の訪問 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日3話目の更新ですニコ







7時前に岬がアパートに帰って来ると、突然入り口の植え込みの陰から人が現れた。


「きゃっ⁈」


岬は、びっくりして立ち止まった。



「な、なんだ。健ちゃん」


「ごめん。びっくりさせて」


「ま、待ってたの?ひょっとして」


「…うん」


三宅は気まずそうに俯いた。


「電話してくれればいいのに」


「でも仕事中だろ?昨日は6時だったから、それぐらいには帰って来ると思って」


上目遣いで、岬を見る。


「え?6時から待ってたの?」


「…うん」


「もう7時じゃない」


「…うん」


「健ちゃん、仕事は?」


確か今はバーテンをやってると言っていた。


「…休んだ」


「体調悪いの?大丈夫?熱振り返した?」


岬は三宅の額に手を当てた。


「ちょっと熱いかな…。とにかく、上がって」


「いや、いいんだ」


「え?」


「ちょっと…顔が見たかっただけだから」


「でも…」


「いいんだ。…ほんとに」


青白い街灯の下に立って、後ずさる三宅は、だんだん光の及ぶ範囲からはみ出していき…


そのまま暗闇に溶けて、消えてしまいそうだった。


岬は、不安になって、思わず三宅の手を取った。


「ダメだよ…っ健ちゃん!」


強い眼差しを三宅に向ける。



「また勝手にいなくなったりしちゃ…」



三宅はビクッとして、岬を見た。


「私にできることは何でもするから!…だから、勝手にいなくなったりしないで」








シャワーを浴びて浴室から出て来た三宅の体はあちこちに打撲の痕や擦り傷があった。


「どうしてほっといたのよ。こんな傷」


三宅はパンツを履いただけの格好で、岬に傷の手当てをしてもらっていた。


「怖くて帰れなかったんだ。家に。岬、独竜会って知ってる?」



「独竜会?聞いたことある。暴力団…か何か?」


「うん」



三宅は今朝森田に言われたことを岬に話した。



「その人たちが、健ちゃんを殺すって?」


「うん」


「そんな…。身に覚え、ないんでしょ?」


「うん。ないけど…でも…森田って男は本気だった。あいつめちゃくちゃやりやがって。いてて…」


三宅は脇腹を抑えて顔をしかめた。


「しみるよ…岬」


「我慢して。それで?」


「八木って男が母の恋人だったのは事実だけど、俺は息子じゃないから…」


「じゃあ、きっと誰かと間違われたのよ。人違いよ。大丈夫じゃない?」


「でも…多分あいつに息子なんていなくて…だとしたら、俺って思われても仕方ない」


「どうして息子がいないってわかるの?」


「あいつ、子供作れないんだ。そういう体…」


「え?」


「それで母とよく喧嘩してたから。母はあいつの子供が欲しかったのに…」


傷の手当てを終えて、岬は三宅を見つめた。


「岬…」


三宅の目は不安に揺れていた。


「俺、多分殺される」


「やめて。そんな簡単に…そんなこと…」


「岬にはわからないだろ。あいつらの恐ろしさ…。ひょっとしたら、殺されるより、もっと酷いことされるかもしれない…」


「何よ。…もっとひどいことって」


三宅は岬から視線を外した。焦点はどこにあっているかわからない。


「…健ちゃん…?」


「岬には、想像もつかないような…もっと…」


「私に想像つかないなら、健ちゃんにだって…」


「俺にはわかるんだよ。俺は知ってる」


「…どうして?」


三宅はしばらく黙って遠くを見つめていた。その視線の先にどんな恐ろしい光景が映っているのか…。

いや、三宅にもわからないはずだ。暴力団のことなんて。なのに、なぜ…。


一体、岬と離れていた3年間、三宅はどこで何をしていたのだろう。


「あいつら…人間じゃない…」


その冷たい表情は、岬が初めて見るものだった。


「だから…殺られる前に…殺るか…」



ゾッとして、岬は息を呑んだ。



「…逃げるか…」



岬は恐ろしくなって、いきなりバッと三宅を抱きしめた。


「逃げよう!健ちゃん、逃げよう!」



でなければ、本当に独竜会に乗り込んで行きそうな気がした。それぐらい、三宅の表情は本気だった。


三宅が誰かを殺すなんて、そんなこと、絶対にあってはならない。

人殺しなんて、普通はできるものじゃない。だが、三宅の純粋さが、岬は恐ろしかった。



『あいつら、人間じゃない』


三宅の純粋な心の目が怖かった。


三宅なら…ひょっとして…普通の大人より、躊躇なく…。


そこまで考えて、岬はブンブンと頭を振って、その恐ろしい考えを振り払った。


三宅を、ひとりには、できない。



「逃げよう!健ちゃん。…私と一緒に…逃げよう!」