GUILTY 37 三宅と岬 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

三宅は、昔から、知らないうちに人から嫌われたり意地悪をされたりすることが多かった。


だから、いつもできるだけ目立たないようにしているつもりなのに、なぜか人が寄って来ては、離れて行った。


自分には、何か欠落しているところがあるのだろう。だから、人付き合いが上手くいかないのだ。それは三宅自身の努力では、どうにもできないものだった。


例えば、三宅は、ぼーっとしてるうちに気がつけば時間が経っていて、今自分は何をしていたんだろう?と思ったりすることが度々あった。そんなときに人から話しかけられても、まず聞こえていない。


それが冷たいだの、無視されただの、人をバカにしてるだのと言われる一因だろうということは、岬に指摘されて初めて気づいた。


岬は、三宅に悪気がないことを初めて信じてくれた人間だった。


健ちゃんは、子供みたいで可愛い。


付き合い始めた頃、岬は三宅にそう言った。


私ね、大人より子供の方が尊敬してるんだ。子供はよくわかってるんだもん。目が曇ってないのよ。心の目が。

健ちゃんも、そうだよね。健ちゃんは、子供みたいにきれいな心の目を持ってる。



保育士の岬は、優しくて母性的で、三宅は岬といると安心できた。


3年ぶりに、岬を抱いて、三宅はやっと安心できる場所を取り戻した。







三宅に抱かれながら、岬は、ひょっとして自分はただの淫乱な女なのだろうかと思ったりした。岡田を頭から振り払い、三宅に身を委ねれば、三宅を愛しいと思う自分がいたからだ。


岡田に抱かれれば岡田を愛しいと思い、三宅に抱かれれば三宅を愛しいと思う。


私は、男なら、誰でもいいのだろうか。自分を必要としてくれる男に甘えられれば、誰にでも体を許して、誰でも好きになってしまう。そして、男に捨てられても文句も言わない。そんな、男にとっては都合のいい女なのだろうか。


…だとしても、だからなんだ?


それで誰を不幸にしてる?


岬は半ば自棄になっていた。自棄になるほど自分の傷が深いということには、思い至らず…。


三宅は岬を捨てたわけではなかった。そして、こうして岬のところに戻って来てくれた。


岬に受け入れられないかもしれないと恐れながら、それでも雨に濡れ、三宅は岬を頼ってやって来たのだ。


岡田は、もういない。


三宅を受け入れない理由は、どこにも見当たらなかった。



岬は、岬の中に自身を埋めて、恍惚とする三宅を見上げた。


閉じた目。震える睫毛。中途半端に開かれた口。揺れる前髪。喉仏。鎖骨。


女の岬が恥ずかしくなるほどの三宅の美しさは、20代の頃と変わらなかった。そして、色っぽさは若い頃より増していた。


熱い息を吐いて、三宅が岬の上にしなだれかかった。



「健ちゃん…重…いっ…」


言えば、わざとよけいに体重をかけてくる。


「みさきぃ…っ」


甘えた呼び方や仕草が、付き合っていた頃と同じだった。


「健ちゃん…変わらないね」


「何?相変わらずスケベだって?」


三宅が顔を上げて、悪戯っぽく笑う。


それから、ふと寂しげな表情をして、


「岬は、大人になった」


と言った。


岬はハッとした。


そうだった。付き合ってた頃、岬は三宅のそんな表情にいつもドキッとさせられていたのだ。


この男をひとりぼっちにしてはいけない。


岬にそんな使命感にも似た思いを抱かせる表情…。



「…変わった?私」


「うん」


三宅はチュッと唇に軽くキスをして、岬を見下ろした。



「色っぽくなったよ…前より…ずっと」



そう言って、満たされた甘い笑顔を見せた。


騙された。と、岬は内心、苦笑した。しかし、寂しげな表情が気のせいだったなら、それはそれで、安心した。


また、この男に振り回される日々が始まる。


その予感は岬にとって、決して悪いものではなかった。