GUILTY 36 忘れさせて | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


「実は…俺、3年前、仕事でトラブッて、すごい借金作っちゃったんだ」

三宅は、3年前に突然姿を消した理由を話し始めた。


「借金?」


「ああ」


「仕事って…バーの?」


「うん」


三宅は岬と付き合っていた20代の頃、職を転々としていた。引越し屋、宅配便、アパレルショップ…最後はバーのボーイだった。


「借金取りに追っかけられてさ…岬に迷惑かけたくなかったから…」


「相談してくれればよかったのに」


「そんなことしたら、岬は何とかしようと思うだろ?だけど、岬に借りて返せるような額じゃなかった。それに…」


「それに?」


「すげー怖い連中だったんだよ。俺に返済能力がないってわかったらさ、女はいないのかって言い出して…」


「…女?」


「付き合ってる女か知り合いの女を風俗で働かせて金返せって…」


岬は息を呑んだ。


「だから絶対岬のことバレたらダメだって思って…」


それで突然姿を消したのか。


「ごめん」


「それで…借金は?」


「返し終わったんだ」


「全部?」


「全部」


いくらか知らないが、そんな多額の借金をいったいどうやって返したのか。


「どうやって…返したの?」


「がむしゃらに働いて」


「がむしゃらにって…」


「ほんっとにがむしゃらに。朝から晩まで。痩せただろ?俺」


「うん。…ねぇ、健ちゃん」


「ん?」


「何か…その…悪いことしたんじゃないでしょうね?」


「悪いこと?」


「うん。だってそんな3年で返せるなんて…」


「悪いことはしてないよ」


三宅はフッと笑って髪をかき上げた。


「めちゃくちゃなことはしたけど…悪いことはしてない」


「めちゃくちゃなことって…?」


「俺、こう見えて結構タフなんだぜ?」


三宅はちょっと胸を張って笑った。


つられて岬も笑った。


すると、三宅が、


「やっと笑った」


と言って岬を抱きしめた。



「…健ちゃん…?」





「会いたかった…」




ギュッと岬を抱く手に力がこもる。



「ずっと会いたくて…でも…会う勇気なくて…。岬を捨てたみたいなことしちゃったから…怒ってるだろうし、きっと許してくれないだろうなって」


「怒ってはいないけど…悲しかった…」


「ごめん…。会うのは怖かったけど…気がついたら…フラフラと岬のアパートの近くまで来てて…。でも、すごく頭が痛くなって、寒気もして、しゃがみ込んでたら…」


「びっくりしたよ。本当に。まさか健ちゃんとは思わなくて。…ずぶ濡れだったし」


「うん。なんで傘さしてなかったのか自分でも、わかんないんだ。俺も、岬に声かけられて、最初幻聴かと思ったもん」



「……」




「でも、幻じゃなかった」



…トクン…と岬の鼓動が鳴った。




「俺が捨てたはずの岬が…岬が…俺を拾ってくれた」



ずぶ濡れの三宅は確かに捨て猫みたいに頼りなく、そして岬の世話で回復した。ふらりといなくなったと思ったら、またふらりと戻って来た。


岡田と別れた、このタイミングで。


これを運命と言うのだろうか。傷心の岬を慰めるために戻って来てくれたのだろうか。

神様は岡田ではなく、三宅を岬に与えたのだろうか。


岡田を好きでいることは、岬には辛いことだった。できれば、早く忘れたかった。身を焦がすような思いは、別れた今となっては、ただ岬を苦しめるだけだった。


「岬…許してくれる?」



「…うん」


岬は三宅の腕の中で、目を閉じた。


「健ちゃん…」


岡田に抱かれた短い日々の思い出が、岬の体を熱くした。


岡田の甘い声が、優しい微笑みが、岬の胸を締め付けた。涙が出そうだった。



「忘れさせて…あの人のこと…」