※本日3話目です
岬が保育園から帰って来ると、奥から「おかえり」という声が聞こえた。
三宅がカーペットに座って、頬杖をついてこちらを見ていた。
「熱下がったよ」
にっこりと笑っているその顔は少年のようで、可愛かった。
とたんに、懐かしさと愛しさが岬の胸にこみ上げて来た。
空白の3年間が一気に埋められたような、岡田との別れの傷が一瞬ふわっと軽くなったような、そんな気がして…
三宅のことを忘れられずにいた3年間。
抑えていた岡田に対する思い。
いろんな感情がどっと押し寄せて来て、岬は突然泣き出した。
「わっ⁈どしたの?岬」
三宅がバッと立ち上がって駆け寄った。
「岬…?」
三宅は岬の顔を覗き込んで、それから、
「どした?心配させてごめん」
と岬の頭を優しく撫でた。
「健ちゃん…っ…なんで今頃、戻って来たのよ…ぅ…っ…私…私…っ…」
岬は三宅の胸に飛び込んだ。
「好きな人がいたの…っ…!でもダメになっちゃった…。っ…うまくいきっこないのは最初からわかってたけど…っ…」
岡田にぶつけたかった思いが、言葉が、溢れ出した。
「じゃあ、どうして…っ…抱いたの?…どうして抱いたのよう…っ‼︎」
岬は三宅のシャツをつかんで揺さぶった。
「私、よかったのに…!奥さんがいてもよかったのに…っ…!意気地なし!バカ!バカバカバカ!」
岬は三宅の硬い胸を叩いた。
三宅は黙って岬に好きなだけ叩かせておいて、力が弱まってくると、岬が泣き崩れる寸前に岬の両手を掴んだ。
「岬…っ」
手を持って、岬の体を引っ張り上げるようにすると、ガバッと体ごと力強く岬を抱きしめた。
「健…ちゃ…ぁん…っ!」
岬は三宅の胸でわあわあ泣いた。三宅はギュッと岬を抱く手に力を込めた。
「…悪い男に、引っかかってんじゃねーよ」
岬の耳元で、三宅の怒ったような低い声が聞こえた。
「俺も…人のことは言えないけど…」
岬は涙に濡れた顔を上げて、三宅を見た。
「3年前、黙っていなくなって…ごめん」
三宅は眉を八の字にして、岬を見つめていた。