GUILTY 38 井ノ原の推理 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

三宅の行方がわからない。

それは、岡田のミスだった。


バーで井ノ原と岡田が三宅に当たった後、6係は交代で三宅に張り付いていた。


が、岡田が張り込んでいた夜に、姉から電話が入った。


「あ、准?あの…駿作まさかそっちに行ったり…してないよね?」


「は?来るわけないだろ。なに?いないの?」


「…うん。ごめん」


「……」


どう考えても駿作がひとりで東京に来れるわけはなく、とにかく近所を探して、警察にも届けてくれるよう頼んだ。


三宅が傘をさしてバーから出てくるのを見て、尾行している途中で、また姉から電話が入った。


駅にいるのを警察に保護されて見つかったという知らせだった。ほっとしたが、電話に出た駿作を叱った。


「バカッ!いい子にしてなきゃ迎えに行かないぞ!」


「だって…いい子にしてるのに…パパ、ちっとも迎えに来てくれないんだもん…っ!」


だから自分から岡田に会いに行こうと思ったらしい。いつ迎えに来てくれるのか、会いたい会いたいと、駿作は泣いた。


駿作をなだめすかしているうちに、気がつけば、岡田は、三宅を見失っていた。




そして、その晩、第四の殺人事件が起こったのだ。被害者は、例の顧客リストに載っている人物だった。



6係で、ミーティングが開かれた。ふらりと立ち寄った2係の長野も、壁にもたれて聞いていた。



「ガイシャはIT企業サイバーBの社長。木下信一。59歳。例の顧客リストに名前があった人物だ」


井ノ原が被害者の写真を指し示し、さらに詳しい説明を加えた。それから、テーブルに両手をついて、仮説を話し出した。



「仮説1。ガイシャを含む顧客リストに載ってる何人かが、既に元オーナーにゆすられていた。それで、その何人かは結託して元オーナーを殺した。今回、ガイシャがやられたのは、その顧客どうしの内輪揉めによる」


井ノ原が6係のみんなを見渡し、それから指を二本立てた。


「仮説2。犯人は三宅。元オーナーはゆすりの話を森田より先に、三宅にも持ちかけていた」


井ノ原のこの仮説に、みんなは顔を見合わせた。


「三宅は、脅し取った金の配分で元オーナーと揉めて、殺した。公園の変質者はゆすりの仲間か、あるいは三宅の犯行を目撃したために殺された。三宅は、金を独り占めしようとして、その後もひとりで客をゆすり続けた。ところが、今回のガイシャは三宅のゆすりに応じなかった」


「それで殺されたと?」


井ノ原は頷いた。


「根拠は?」


と長野が聞いた。


「三宅は3年前、勤め先のバーの金を盗み取って借金を抱えてる。それでバーをクビになって、借金返済のためにホストをしていた。その時からすでに客に対してゆすりをしていた可能性がある。たった3年で多額の借金を返しているからだ」


「その時に、ゆすりを覚えて、味をしめたと?」


「かもしれない」


「ひょっとしたら、ゆすりの話は元オーナーからじゃなく、三宅から持ちかけた話かもしれないな。三宅が取ってきた顧客リストなのに、元オーナーが欲を出したもんで、三宅が怒って殺した」


長野がそう言うと、井ノ原はさらに説明を付け加えた。


「元オーナーは三宅の母親の恋人だった。三宅は幼い頃、母親と元オーナーと三人で暮らしたことがある。三宅に血縁はいないし、金を貸してくれるような友達もいない。15歳から18歳まで入っていた施設の職員とも、関係は希薄だ。金に困って頼れそうなのは、元オーナーぐらいしかいない」


「接触は?」


「ふたりが接触した事実はまだ掴めてない」


「現時点では、あくまで主任の推測の域を出ないってことですね?」


と、誰かが念を押した。


「もちろん、そうだ」


井ノ原は頷いた。


「が、最大の根拠は、社長殺しの夜から、三宅が姿をくらましているという事実だ。ただの偶然とは考えにくい。とにかく、一刻も早く、三宅の居場所を突き止めるんだ。でないと…」



井ノ原はみんなを見回した。



「…次の犠牲者が、出るかもしれない」



井ノ原と長野の目が合った。長野は、やれやれといった風情で組んでいた腕をほどいて、天井を見上げた。


岡田はやりきれない思いで、テーブルの上で組んでいた手を見つめていた。


確かに、今の状況から見て、井ノ原の仮説はかなり筋が通っている。

だが、井ノ原の推理する三宅という犯人像と、岡田が実際に会った三宅の印象とは、どうもちぐはぐな気がした。


しかし、岡田は井ノ原にそれを言い出せないでいた。


三宅が犯人だとしたら…岡田が三宅を見失ったことは、致命的なミスだったからだ。


そしてもし、また次の殺人が起こったとしたら…?


自分のせいだ。


岡田はテーブルの上で拳をぐっと握りしめた。


「三宅を…探してきます」


岡田はガタッと席を立ち、長野の前を横切り、小走りに部屋を出て行った。