綺麗な顔…。
どちらからともなく唇を重ねる。
「あなたさっき、惚れた女の前では冷静でいられなくなるって言ったわよね?」
「時と場合による」
またチラッとスマホを見る。
ふふ…時間を気にしてる。これから出勤するんだから、今は冷静でいたいわよね?
「…そうなんだ」
私はかまわず、またくちづける。
今度はディープキス。
准も舌を絡ませてくるけど、どこかで切り上げようとはしてる、そんなキス。
唇が離れるたびに、逃げようとする准を追いかけて、さらにキスを重ねる。
「ああ…准、好きよ。愛してる」
さも興奮したように、激しく准の唇を求めると、
「あ…ちょ…っと…さとみ…っ」
って軽く私の体を押しやりながら、スマホに目を落とす。
そろそろ出ないと遅刻しちゃうわね。
大丈夫。キスだけで切り上げて、またバイク飛ばしてあげるわよ。
とは、もちろん言ってあげない。
キスを繰り返しながら、准がスマホを手に取る。
そろそろタイムリミットかしら…?
と、思ったら、片手でスマホを操作して、耳にあてた。
私は反対側の耳にキスをする。
「ああ…もしもし。音楽の宝です」
あら。学校?
「…えっと…1時間遅れていきます。はい、時間休。…いえ、大丈夫です。…はい。…すみません。…よろしく」
准が通話を切る。
「…大丈夫なの?」
「緊急性の高い仕事はない」
「何か突発事項があったら?」
「呼び出されたら駆けつけるけど…夏休みだし、たった1時間だ。まずないだろう」
「まあ。冷静な判断だこと」
「たまには、いいだろ。…一番、えこ贔屓しないとね」
「えこ贔屓?久しぶりに聞いたわその単語。私は生徒じゃないわよ」
「ふふ…。こんなエロい女子高生いないよ」
准が私を見て微笑む。
それから、仕切り直しとばかりに私を抱き寄せ、キスをした。
さっきより、うんと熱くて甘いキス…。
「准…またバイクで送ってく?」
「うん。ありがとう。たぶん…そうなる」
fin.