ピンクのハンカチ 3 教育と恋愛 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「スケべなのに、先生なんて硬い仕事してるとこもエロいのよっ」


「言いがかりだっ!」


准は笑いながらも、赤い顔して声を大きくする。

ふふ…かぁわいい♡


「私が生徒なら…誘惑してる」


頬杖をついて、准をジッ…と見つめる。


准はフンと鼻で笑って腕を組み、ちょっと私から視線を外して、椅子の背にもたれた。


「でも…もし仮に…」


と私を見据えて指を指す。



「聡美が生徒でも、俺は落ちない」



「へーぇ!」


私は大げさに驚いてみせる。



「たいした自信じゃないのよ」



「確かに、宝先生宝先生ってキャーキャー言ってくる子はいるし、中にはけっこう本気な感じの子もいるけど、彼女らの人生にとって、所詮俺は通過点に過ぎない。卒業したら、みんな彼氏ができて、結婚する」


「みんながそうとは限らない」


「でも、卒業後も俺に惚れてるから結婚しない、なんて子は、まず、いない」


「どうかしら?」


「女の子は現実的だ」


「まあ…ね」


「俺たちは、彼女らの青春の一部に過ぎない。学校っていう同じ場所で同じ時を有意義に過ごして、いい思い出を作ってやればいいんだって思ってる。だから、だよ」


「何が?」


「たまにはサービスだってする」


「へーぇ…」


私はポカンとして准を見た。


「生徒に色気のあるサービスを故意にするってこと?条件コンビならまだしも…、あなたが?」



「色気のある、なんて言ってない」


准が首を振って、私を指差す。


「誤解するなよ?とっかかりは俺への興味関心でもいいって話だ。だって、生徒が俺の方を向くってことは、学校や音楽の方を向くってことだろ?」


准は真面目な顔で、手振りを交えて語り出す。


「俺は、生徒たちに学校や勉強や音楽の方を向いて、ちゃんと今やるべきことやって成果を出したり、自信をつけたりして、今が将来に繋がるんだって手応えを掴んで欲しいんだ。もちろん、上手くいくことばかりじゃないけど、失敗だって何だって、ヴィクトリー校で得たものがその先に繋がる。彼女らの人生は、これからだ」


真剣な准の目。


「だから、教師ってのは、なんていうか…やっぱり生徒がその上を通り過ぎて行くもんだって感覚があるんだよ。彼女たちはここには留まらない」



「多くの女が俺を通り過ぎていく」


「茶化すなよ」


「ごめんなさい」


「だから、恋愛感情を持つことはない」


「どうして?」


「巣立ちを見送るべき対象だからだよ。離れていくことが前提だ。俺の元に留めておくべき相手じゃない」


「それでも留めておきたいと思うような魅力的な子もいるんじゃない?」


「そう思うのはエゴだろ」


「恋愛なんてみんなエゴよ」


「教師が生徒に対してエゴを持つと、教育が成り立たなくなる」


「なるほど。でも、あなたと恋愛することで学ぶことはあるでしょう?親密な関係だからこそ教えられることもあるんじゃない?」


「ないな」


「即答?」


「聡美…」


准が片眉上げてじっと私を見る。



「恋愛ってのは、冷静さを奪うもんだろ?」


突然そんなことを言われて、ドキッとする。



「男は特に、惚れた女の前では冷静じゃいられなくなる」



准に見つめられて、准の口からそんな言葉を聞かされたら…


「女だって…冷静じゃいられなくなるわよ」



「彼女を心から愛し、尊重したいっていうのは基本だけど、そんなきれいな感情ばかりじゃない」



目を細め、低い声でゆっくり、


「嫉妬、肉欲、独占欲、支配欲…」


と、心持ち顎を上げて、指折り数え上げる。



ああ…。その表情で、その声で、エゴの塊みたいな、サディスティックな単語を並べるなんて…ゾクゾクするわ。



「振り払いたくても、そんな感情が暴れ出すことだってある」



しかも、暴れ出しちゃうんだ。



「そう…。宝先生に惚れられると…怖いわね」



「そう」


准はしばらく溜めてから、


「俺の愛は…聡美じゃなきゃ耐えられないだろうな」


って私の顎に手を伸ばした。


チュッと触れるだけのキスをして、私を見つめる。


「…役者ねぇ」


って感心したら、とたんに赤い顔して横向きに座り直し、ハハハッと笑った。


一芝居打って、盛大に照れ笑いしてる准。目尻の皺。赤くなってる耳。照れ隠しにコーヒーを一口飲む横顔。



「そりゃあ…10代の女の子があなたと本気で恋愛なんかしたら、3年間沼にはまりっぱなしで何も手につかなくなるわね。全く教育的じゃない」


「褒められてるのかな…?」


まだ顔が赤い。


「もちろん、褒めてるわ」


准がチラッとテーブルに置いたスマホを見て、時間を確認した。


そろそろ出かける時間ね。

ちょっと…意地悪してやろうかしら。


「ねぇ…准」


私はすっと立ち上がって、テーブルを回り込んだ。


横向きに座ってる准の前に立つと、その膝にまたがってすとんと腰を下ろした。


准は私の腰に手を添えて、ん?って首を傾げて甘く微笑んだ。