個人レッスン 3 数学の神様 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「えっと…はい。…2番です」


「証明問題?」


条先生が首を傾げ、見にくそうにしてる。これ以上近づき過ぎないように遠慮してるんだ。だから、私は過去問をズズッと先生の方に押しやった。


「ああ…。ちょっといい?」


「はい」


条先生は過去問を右手で持ち上げて、机に肘をついた。


「一応できるにはできたんですけど、めちゃくちゃ時間がかかってしまって…。他の問題解く時間なくなっちゃったんで、絶対他に解き方あるんだろうなって思って…」


先生は眉間に皺を寄せて、少し顎を上げ、左手で下唇に触れながら過去問を見ている。


「…ふ…ん」


「はあ…///」


「ん?」


「あ、何でもないです」


思わず見惚れてため息が出ちゃった。


トン、と先生が過去問を私の前に置いた。


え?もう解けたのかな?


「お前はどう考えたの?」


「あ、私は…あの…」


私は自分の証明を書いたルーズリーフを先生に見せた。


一目見て、先生がフッと笑った。


「こりゃ時間かかるわ」



「ですよね?」


「発想変えてみ?」


どうやって?


先生がキラキラした目で私を見る。少し口角が上がっている。


「点A、B、Cが一直線上にあることを証明すんだろ?下敷き貸して」


「は、はい」


下敷きを渡すと、先生が中点がBの直線ACと下敷きの一辺がぴったり重なるようにして、下敷きを立てた。


私の表情を見ながら、垂直に立てた下敷きを傾けていく。


「平面と平面は必ず直線で交わる」


先生が低い声ではっきりと言った。


確かに、平面である下敷きと、これまた平面である問題集の紙面は、直線A BC上で交わっている。



「あ!」


私が声を上げると、先生があたりを見て、


「シッ!」


と人差し指を立てた。


「わかった?」


「はい」



先生が、傾けた下敷きの面を下から指で突いて、


「点P、Q、Rがこの下敷きの面にあるとすると…?」


と私を上目遣いで見て、後を促す。


「A、B、CはP、Q、Rを通る平面との交線になるから、直線だって証明できます」


「そう」


先生は下敷きをポンと投げ置いた。



「すごい。あっというま」


点と線しか示されていない図。条先生はそこに隠された平面を見つけて、下敷きで見せてくれた。



「やっぱ先生すごい!」


「声がでかい!」


「天才!」


私のリアクションが想像以上だったのか、先生が面白いやつだなって感じで私を見て笑っている。


目尻の皺とか、キラキラした目とか八重歯とか…先生の笑顔って最高。


「はい、じゃ、応用問題」


って先生が身を乗り出してさっきのルーズリーフを裏返した。


「書くもん貸して」


「あ、はい」


先生が私から鉛筆を受け取ろうとして、腰を浮かした。その時、先生の脚が丸椅子に当たって、丸椅子が少し私の方へずれた。


そのまま腰を下ろした拍子に、先生の右膝が私の太腿に当たった。


「あ、ごめん」


「いえ…///」


先生が脚を開いて膝を離す。


さっきより近くなった…。先生のパーソナルスペースにすっぽり入っちゃった感じ。


先生が真面目な顔でルーズリーフに問題を書き出す。私の鉛筆で。





伏せた目の長い睫毛。くっきりした二重瞼。紙の上にきれいに引かれた直線。三角形。


先生の綺麗な顔立ちと、白い紙にたちどころに現れる整った図形。


それらを見ていると、比喩的な意味じゃなく、ほんとに目の前にいるのは、数学の神様なんじゃないかって思った。