桜の蕾 9 特別な存在 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

宝先生の、がっしりした体つきと優しい声と、あったかい雰囲気。


静かに隣にいてくれるだけで、気持ちが落ち着いてくるから不思議だ。


泣きながら少しずつ話す間、宝先生は相槌を打つ以外特に何も言わなかった。


条くんと自分の関係を特別だと感じた勘違いや、醜い嫉妬心は、恥ずかしいけど、宝先生になら正直に話せた。


先生は人を否定しないから。



「勘違いかどうかは、わからないよ?」



と先生は言った。



「条くんも、そう思ってるかもしれない」



「え⁇」



「ああ…ごめん。余計期待しちゃうか。…うーん…」



考えながら言葉を探す先生の誠実な態度が、言葉そのものより嬉しい。そう思うのは、よっぽど私が寂しかったからだろうか。


宝先生の真剣な横顔。長い睫毛。前屈みになって膝に肘をつき、両手を顔の前で合わせて、言葉を探している。



「なんて言うか…」



今度は身を起こしてソファにもたれ、腕を組む。私をチラッと見て、片手を前に出し、


「俺は男だからね…?」


ってその手を胸に当てて片眉を上げる。



「これは男のわがままかもしれないけど…上野さんの存在は、俺だったらね?やっぱりちょっと特別だと思うよ。彼女がいても」



「え⁇」



と、そのとき、


「あーら、大胆発言」


って声がして、振り向くと、聡美さんがドアを開けてリビングに入って来た。



相変わらずのナイスボディー。フレアスカートを揺らせて颯爽と歩いて来ると、


「ごめんね。おまたせして」


と私に微笑み、腕を組んで宝先生を見下ろした。


「先に始めててって言ったけど、何を始めちゃってるのかなぁ?宝センセイは」


聡美さんが首をかしげる。カールした毛先がくるんと揺れる。


「な、何も始めてないよ?」


宝先生は少し距離を取って座り直した。



「あら。聞いたわよ。なんだか深刻そうだからドアの向こうで様子伺ってたら、『彼女がいても、上野さんは特別』って何それ?どういう意味?」


「だから!俺が条くんだったらって話だろ⁇条くんにとって上野さんは特別って意味だよ」


「だったらそう言いなさいよっ」


「言ったよ!…言ったよね?」



「は、はい」


でも、私も一瞬ドキッとした事実は隠しておこう。