桜の蕾 4 深まる愛 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

10月の末、桃が大学に合格した。

そのお祝いに3人で旅行に行った。行き先は、私と条くんが幼い頃過ごした町。


いつかまた来てみたかった。


外から見ただけだけど、中学校は変わってなくて、懐かしかった。


20年以上前と変わらない風景。隣には、眩しそうに校舎を見上げる条くん。


「なっつかしいなぁ」


条くんが片手をポケットに入れて、もう片方の手でフェンスを掴む。


カシャ…ン…。


グランドを走る生徒たちを目を細めて見る。髪が風になびく。


条くんがいる。
条くんといる。


あの頃から今まで、まるでずっと一緒にいたみたいな錯覚に陥る。



「変わらないね。条くん」



「え?」


そんなわけないだろって少し照れて笑う。


「ううん。変わらないよ。そういう表情。あ、でも、昔より柔らかくなったかな」


「…まあ、おじさんになっちゃったからね」


そう言って微笑む顔が柔らかくてあったかくて…愛おしかった。










千帆と懐かしい思い出の場所を巡って、あの頃に戻ったような気持ちになった。



それが刺激になったのかもしれない。


帰ってきてから、千帆と頻繁に抱き合うようになった。


肌を重ねるごとに、愛しさが募った。




俺の下で波打つ千帆の汗ばんだ体。


「…ア…ッ…条く…ぅん…っ」


千帆の表情、声、体温。

生きてる。千帆は生きてる。


「ちぃ…っ…」


熱い千帆の中に潜り込む。

差し出された手をギュッと握りこんでシーツに押し付ける。

千帆が涙を溜めて俺を見上げる。


そして俺は、千帆の中に愛を放つ。






秋までと言われていた千帆は、冬になってもまだ俺のそばにいてくれた。千帆と桃と3人で新しい年を迎えた。


薬が一定の効果を上げているとはいえ、年が越せるなんて奇跡的だと医者は驚いた。


「先生のおかげです」


と言って頭を下げると、医者は、


「いやいや、愛の力ですよ」


と俺たちを見て微笑んだ。


「我々にできることは限られてます。ご本人の生きる力と、ご家族の愛に勝るものはありません」





『条くんが一番のお薬になるね』


ほんとに、お前の言う通りになってんのかもしれないな。桜。



ここまで来たら、桃の卒業まで見届けさせてやりたい。


いや、卒業までと言わず、ひょっとすると奇跡が起こるかもしれない。


そんなことを期待してしまうほど、千帆の体調は良かった。