すげー可愛いんだけど。ヤバイ。
最近、千帆さんのことでナーバスになってたから、条がこんなに無邪気に照れたり笑ったりしてるのがすごく嬉しかった。
上野さんに偶然出会ってしまったあの日。
俺はふたりが後部座席で手を繋いでるのに気づかない振りをしていた。
そっぽを向いて、でも手を離せないでいる条の気持ちが痛かった。
いっそ条には内緒で、上野さんに千帆さんの余命がわずかなことを話してしまおうかと思ったりもした。
でも、それは条と千帆さんに対してすまない気がした。
誰もが、真剣に一生懸命に愛して生きてるから。
条のこと、ずっと好きでいてやってくれ。他の男のものになってしまわないでくれ。
やがて訪れる千帆さんとの永遠の別れを思うと…俺は心の中で、上野さんにそう頼むしかなかった。
「リラックスして。条」
条が、観念して目を閉じる。
「口には絶対すんなよ」
「わかってるって」
綺麗な条の顔を見下ろす。
唇と肌の接触だけで、チュッていい音を出すには…
くっきりした二重瞼。長い睫毛。
まずは瞼にキスをした。
やっぱり音は出なくて、
「瞼は吸いにくいわ」
って俺は髪をかきあげて笑う。
「もっと強く吸わなきゃ」
腕を組んで見ていた宝が、片手を前に出して言う。お前、自分が解放されたとたん余裕だな。
条は笑いを堪えて、目を閉じたまま震えている。
もっと強く吸いやすいところか…
「さっさとしろよッ」
「焦れんなよ」
「焦れるかバカ!さっさと終わらせろっつってんだよッ」
って言ってから、条がパチッと目を開けた。
「ちょっと待って。やっぱおかしいでしょ?おじさんどうしでさぁ」
ってキョロキョロ宝と俺を交互に見る。
「おかしくねーよっ!俺とお前の仲だろっ」
「おかしいって!」
「ほんっと往生際の悪い男だな。つべこべうるせーんだよっ」
「なっ…⁈…ン…ッ‼︎」
俺はうるさい唇をキスで封じ込めた。
「……ッ…‼︎」
もちろん舌は使ってない。
触れ合った唇をちょっと吸って、それからパッと唇を離した。
チュッ…
って想像以上に可愛らしいリップ音がした。
「お前〜〜っ!やりやがったな〜⁇」
唇を手で抑えて俺を睨む条の顔がにやけている。
はんっ。満更でもなさそうな顔してんじゃん。
「ちょっと音が弱かったな。もっかいする?」
「しねーよっ!アウトだお前!アウトーッ!」
※今度こそ、リボンシリーズ最終章