宝が俺を振り向く。
俺はソファにもたれて、唇を尖らせ、チュッって舌を鳴らす。
「舌だよ。舌。チューしながら、舌でチュッて鳴らすんだよ」
って人差し指で唇をツンツンってして、もっかいチュッて鳴らしてやった。
「ああ、確かにいい音するなぁ」
条が腕を組んでソファにもたれた。
「あ。でも、キスってそういうもんじゃねーか?」
宝だけもたれてないから、俺と条を遮るものがなくて、俺たちの目が合った。
「やってるかもね。自然に。だってさ、唇と肌であの音出そうと思ったら、相当吸わなきゃ出ないよ。チュウ〜って吸わなきゃ。それこそ掃除機みたいに」
「そうかなぁ」
って宝が首をかしげる。
俺はガバッと体を起こし、
「そうだって!やってやろうか?」
って肩を掴んだ。
「いいよっ!」
宝が笑って肩を避ける。
「やってみてよ」
条がソファにもたれて腕組んだまま俺たちを見る。
「やってやるよ」
「いいって!///」
「何照れてんだよ!ガチ照れ?」
「条くんにやったらいいだろ?ふたりでやんなよ。いつもイチャイチャしてんだからさ」
「でも納得してないのお前だから。お前が俺のー、舌で音出してる説に納得してないんだろ?だからわからせてやるって言ってんだよ」
「いいよ。もう。はいはい。わかったわかった。舌だよ舌。舌使ったキスだろ?」
すると、条がバッと弾かれたように後ろ向いて笑った。
「お前、それ話違ってくるから!」
俺も笑って突っ込んだ。
条が腹抱えて宝を指差した。
「やらしいよッ!お前!なんの話してんの?」
条が赤い顔して嬉しそうに笑う。
俺は条をもっと喜ばせたくなった。
「はい、宝、行くよ?」
って宝の顔を両手で挟んだ。
「行くよ、じゃねーわっ!」
かまわず俺は立ち上がって宝を見下ろす。
「舌使ったキスな」
って条が口を出す。
「舌で音出すキスだろ?」
って笑いながら宝が条に突っ込む。
「こっち向けって!」
条の方を向いた宝の顔をグイッとこっちに向ける。
「こういうことだよ」