桜の蕾 2 ご褒美 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「どうする?」


リビングのテーブルの上で、車のキーを弄びながら、頬杖ついて千帆を見る。


千帆は困った顔で俺を見る。



「もっかいやってみる?」



「条くんは、そうした方がいいと思ってるんでしょ?」



俺はキーに視線を落とす。


「どうなるかわかんないけど、体力も回復したし、俺はやってみてもいいと思う。でも…」


視線を上げて、千帆を見る。



「千帆が、桃の合格見届けたいってどれだけ思ってるか、だろ」



主治医から延命のための投薬を再開してはどうかと言われていた。


今日、病院に行って返事をすることになってるけど、千帆はギリギリまで迷っていた。きつい薬だから、また体力が落ちて入院したり、生活が不自由になるのを恐れていた。



桃の公募推薦入試の結果が今月末に発表される。


余命宣告を受けている千帆は、もう、いつどうなってもおかしくない時期に来ていた。


ただ、とても今日明日の命の人には見えなくて、合格発表まであと20日ぐらい、なんとかもつんじゃないかと本人も俺たちも思っていた。


が、先日の検査の結果はやはり深刻だった。


俺としては、せめて発表までは持ちこたえて欲しいと思っていた。



桃は、ほんとは一般入試しか受けないつもりだったけど、一般まで千帆は持たないだろうからと、俺と桃で相談して公募推薦を受けることにしたんだ。


千帆に合格を報告したい。それが桃の望みだったし、俺としては、それを目標にすれば少しでも長く生きられるんじゃないかと思ったから。




「わかった。もう一度、やってみる」



「よっし。決まり。じゃ、行くか」


俺は車のキーを持って立ち上がった。




『ご褒美は色々取り混ぜていかないとさ』


ふと、健の言葉を思い出して、千帆を振り返った。


千帆は椅子から立ち上がったところだった。


「…なに?」


と、首をかしげる。


俺はキーを持っている方の手で自分の唇に触れると、キョトンとしてる千帆の唇を見つめた。


それから両手をポケットに突っ込み、顔だけ前に出して、素早く唇を重ねた。


チュッ…。



「よく決心したな」


そう言うと、くるりと背を向けて、玄関に向かった。