距離を置いて座っている私たちの真ん中で、私の左手は条くんの右手に捕まっていた。
条くんは、
指を絡めて私の手をギュッと握り締め、
それから
じっと私の手を見つめながら、撫でるように指を動かした。
条くんがゆっくりと視線を上げる。
目が合うと、条くんは、フイと向こうを向いて、窓の外を見た。
素っ気ない態度で、でも、条くんから手を繋いできて…
しかも…まだ握ってくれている。
条くんが目を閉じる。
下になった条くんの手が微かに持ち上がったかと思うと、またシートについた。
ポン、ポン…
と、歌のリズムを取るように繋いだ手を微かに動かす条くん。
だぁいじょうぶ。
ふいに、条くんの声が聞こえたような気がした。
だけど、条くんは向こうを向いたまま、目を閉じて、黙っている。
知らん振りをして…でも条くんは気づいてくれてる。私に何かがあったこと。
そして、慰めようとして、手を繋いでくれている。まるで背中をトントン叩いてなだめるように、繋いだ手をポンポンさせて…。
ああ…条くんだ。
条くんだ。
条くんだ。
条くんは、人の傷みを自分のことのように感じ取れる人。
でも、相手の気持ちを理解することには限界があり、当事者じゃない自分にできることにも限界がある。
そのことをよくわかってる人だから…
いつだって、条くんの優しさは、私を甘えさせるだけじゃなく、私を強くする。
条くんの優しさは、気持ちに寄り添いながらも、でも、俺はお前じゃない、と言う。
だから、どんなことも乗り越えるのは、お前自身なんだと、条くんは教えてくれる。
俺がそばにいるから、見守ってるから…
ずっとそんなスタンスで、私を支えてくれた人…。
そして、きっと今は…そんなふうにして、千帆さんを支えているんだろうな。
条くんがどれだけ深い愛情を千帆さんに注いでいるか…私には、わかる。
だって別れた彼女にすら、こんなに愛を感じさせてくれるんだもん。