カミセンの修学旅行引率 19 条と山田 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

宝先生との打ち合わせを終え、続いてラウンジでホテルの人と諸連絡を交わした。そのまま少しコーヒーを飲んで一息ついた。


今、先生たちは巡回に回っている。


中庭で家族づれがハロウィンの仮装をした従業員と写真を撮っているのが見えた。

まだ気を緩めるわけには行かないけど、点呼が済めば、無事初日が終わりそうだと少しホッとした。


すると、


「門地さん」


と男性の声がして、振り向くと体育の山田先生がこっちに向かって歩いて来ていた。


若い男性教師で、よく荷物を持ってくれたり力仕事を手伝ってくれる。


一度、学年主任の条先生に、助かってますとお礼を言うと、

「荷物持つくらいしか役に立たないんで。使ってやってください」

とクールに言われたことを思い出した。そういえば、ふたりが話してるところは見たことがない。


「山田先生。巡回ご苦労さまです。何か?」


「いや、何も。今点呼中なんでね、みんな部屋に戻ってるでしょう」


山田先生は私の隣のソファに腰を下ろした。


「この学年の子たちは、条先生によく手なづけられてるんで。今頃この辺うろついてたりしませんよ」


手なづけられてる…?
だから巡回は必要ないってこと?


「なんだかんだ副担は気楽ですよ。あ、だから門地さんも遠慮なく色々言って下さいね。俺、なんでもしますよ」


「ありがとうございます」


「門地さんのためなら」


え?


山田先生って下手したら10歳ぐらい歳下なんじゃないかしら。リップサービス?


「いや、門地さんみたいに仕事できて気配りできる大人の女性って憧れるんですよね」


「そ…そんな…」


「あ。彼氏にお土産とか買いました?」


「……はは…や、山田先生は?」


「僕、今フリーなんで。門地さん…」


って意味深に笑いながら体をこちらに傾けてくる。


「巡回、いいんですか?」


と言ったとき、


「おい!」


って声が聞こえて、見ると、条先生が立ってこっちを見ていた。




ツカツカと歩いて来て、山田先生の前で立ち止まった。


先生が現れたとたん、空気がピンと張り詰める。条先生は、小柄なのに威圧感がある。


条先生は山田先生を見下ろして、


「今の時間、渡り廊下だろ」


って顎をしゃくった。


「あ…はい…でも」


「でも、じゃねー。当番だろ。持ち場に戻れ」


「あ、でも今点呼だから…」


「だから?」


「どうせみんな部屋に戻ってるから」


「だから?」


「だから、その辺ウロウロしてるわけないし…」


「だ、か、ら?」


山田先生は条先生に睨まれて、


「も、戻ります。すみません」


ってあたふたと戻ろうとすると、


「今さらだ。お前、いつからここにいる?」


「ほんのつい、さっきですよ。ねぇ?門地さん」


「あ、はい」


「ここに来る前は、どこにいた?」


「え?…そりゃ…渡り廊下…」


「嘘つけ」


「え⁇う、嘘なんか…」


「門地さん」


「は、はい!」


急に名前を呼ばれて思わずピシッとなった。


「東棟に泊まってる男子校と連絡取りたいんだけど」


「え?な、何かあったんですか⁇」