「うわぁ…すごい盛り上がり…」
生徒たちの黄色い歓声が凄くて…それもそのはず、コートでは条先生と宝先生が生徒に混じってドッジボールに興じていた。
条チームvs宝チーム。
条先生は黒の長袖Tシャツに白い七分丈のパンツ。素足に白のスニーカー。
宝先生は白いTシャツにデニムパンツ。
確か、条先生のクラスは理系クラスで、宝先生のクラスは音楽コースの子が多い文系クラスだっけ。
どちらもあまり運動は得意そうではなく、積極的にボールを取る子は限られている。
宝先生がコートの一番後ろで、みんなが避けたボールをキャッチすると、宝チームからは歓声が、条チームからは悲鳴が上がった。
宝先生がボールを持って駆け出すと、「下がれ下がれ!」という条先生の指示に従って、生徒たちは一斉にコートの後方に下がった。
条先生も宝先生を振り返りながら下がり、生徒たちを庇うように宝先生に向かって構え、
「来いよほらぁっ!」
と言った瞬間、宝先生の投げたボールを見事にキャッチした。
キャーッ!とギャラリーから歓声が上がる。
宝チームはほぼほぼ宝先生に頼りきりで逃げ惑っている。一方、条チームは先生があちこちに声を飛ばして指図している。
宝先生は条先生ばかり狙うけど、条先生は逃げるのも上手い。条先生は生徒に敵チームの生徒を狙わせる。
宝先生は条先生しか狙わないから、必然的に宝チームが減って行き、ついに宝先生はひとりになった。
「観念しろっ!」
そう言って投げられた条先生のボールをキャッチして、ゆっくりとバウンドしながら宝先生が歩み出る。
逃げ惑う条チームの生徒たち。
「当てていい?」
宝先生が条チームの生徒たちに聞くと、
「ダメーッ!」「イヤーッ!」
ってみんなが地団駄を踏んで叫ぶ。
一方「当てていいよー!」「先生、当ててー!」という宝先生のクラスの生徒たち。
先生は苦笑しながら周りを見回して、「いい?ほんとに?」って片眉上げてボールを構える。
「イヤーッ!」
「先生に当てられたら死んじゃう!」
「絶対痛い!」
「フフッ…。痛くないようにするから」
「ムリー!ダメダメやめてー!」
女の子たちが肩を寄せ合って悲鳴をあげる。
「みんな当たんじゃねーぞ!受けろよ!」