剛健版 星の王子さま 7 喧嘩 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

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V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

5日目。さすがに、もうそろそろ飛行機が直ってくれなきゃまずい。もうすぐ水も底をつくし。


「ちっきしょう…かてーなっ!」


モーターのボルトが締まり過ぎてるのを緩めようと、俺は懸命になっていた。


すると、後ろで砂漠に腰を下ろしていた王子さまが、出し抜けに、こう聞いてきた。


「羊ってさぁ、小さい木を食べるんなら、花も食べるよね?」



「食うだろ。あるもんみんな。手当たりしだい」



俺はボルトとにらめっこしてる。工具を変えてみるか。



「トゲのある花も食べるかなぁ」


「食うよ」


「じゃ、トゲは何のためにあるの?」



一向に緩まない。誰だ?こんなに固く締めたヤツは。…俺か。



「ねぇ、食べられるんならさぁ、トゲは意味ないじゃん。なんでトゲがあると思う?トゲの存在意義って何?」


また始まった。知りたがり屋の聞きたがり屋。ボルトの存在意義ならわかるけど…。



「ないない。トゲの存在意義なんてないよ。花は意地悪したいだけだろ」


「へーぇ!」


王子さまはしばらく黙ってから、


「ねぇ?それ本気で言ってる?」


「ああ、本気本気」


「マジで?…花はね、弱いんだよ。弱いから、トゲを武器にして自分を守ってるんだって!花は案外無邪気なんだぜ?」


俺は何も言い返さなかった。だって、とにかくボルトを緩めないことには前に進めない。


…いっそ金槌でぶっ飛ばしちまうか?


「ねぇ、ほんとにそう思ってるの?花は意地悪だって…」



ああ…もう!くだらない質問で邪魔しないでくれ。


俺は金槌を掴むと、王子さまを振り向いた。


「ちょっと黙れよ!」


王子さまがビクッとして金槌を見たので、俺は慌てて、語気を緩めた。


「いや…これは…」



殴ったりしねーって。



「別に本気じゃないって。…ってか、花の存在意義とか」



「トゲの存在意義だよ」



「トゲの存在意義とか、どうでもいいよ。俺は今、それより大事なこと考えてんだよ」



すると、王子さまが挑むように、




「何?大事なことって」



と言って眉をひそめた。



俺はため息をついて天を仰いだ。


それから格闘してるモーターのボルトに目をやり、次に自分の格好を見た。


機械油の飛んだ操縦服。真っ黒になった指。手には金槌。



汗と機械油にまみれた俺の顔を、王子さまは、悲しそうな目をして見つめていた。




風が吹いて、王子さまの足元の砂が舞い上がった。綺麗な髪がサラサラと揺れて顔にかかった。





「まるで、大人みたいな口のきき方するんだね」




「いや、大人だし。ってかあんたも」


とっさにそう返したが、王子さまに言われると、なんだか大人であることが急に恥ずかしくなった。


俺は目を伏せて、落ちかかった髪を耳にかけた。