剛健版 星の王子さま 6 夕焼け | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

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V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

それは、4日目の昼のことだった。

俺がコックピットで昼寝をしていると、王子さまが、俺を揺り起こして、

「ねぇ、夕焼けが見たいんだけど」


と、唐突に言った。


また始まった。王子さまは子供みたいな人なんだ。


「…ん?…夕焼け…?」


俺は眠い目をこすりながら、王子さまをチラッと見て、また目を閉じた。

ふぅ…。


「夕焼けが見たくなっちゃった。見に行こうよ。僕、一番好きなんだよね。日暮れの空が。ピンクグレープフルーツみたいなの」


「へーぇ」


「ねぇ、一緒に見に行こうぜ。日が沈むとこ」


「…ん…いいけど…」


俺は目を半分だけ開けて王子さまを見た。


「待たなくちゃ」


「なにを?」


「日が暮れるのを」


すると、王子さまがハッとして、それから照れ臭そうに頭をかいて笑った。


「そっか。そうだった。うちじゃないんだもんね。なぁんかさー、いっつもつい、うちにいるような気になっちゃうんだよなぁ」


王子さまの星はうんと小さいから、座っている椅子をほんの少し動かすだけで、見たいと思う夕焼けの空が見えるんだって。


地球みたいにデカくないから、こっちが昼なら裏側は夜、ってことにならないらしい。



やがて王子さまは、ふっと遠い目をして、


「悲しいときってさ…夕焼けを見たくならない?」


と言った。


「さぁ…?」


俺はもうすっかり目を覚ましていた。


「いつだっけなぁ…僕、日の入りを66回も見たことあるんだよね」


「1日に?」


「うん。1日に」


「マジで?…それって…めちゃくちゃ悲しかったって…こと?」



だけど、王子さまは何とも言わなかった。



突然夕焼けが見たいと言い出したってことは、今、王子さまは悲しいんだろうか?

だとしたら、どうして?


俺は王子さまの悲しげな横顔を見て、慰めてあげたいと思った。


「夕焼けは…まだ見れないけどさ…」


俺は俯いてボソッと言った。


ひとりで夕焼けを眺めるのと、
ふたりでおしゃべりをするのと、

どちらが慰めになるだろう?



「…日が落ちるまで、またあんたの星の話、聞かせてよ」