剛健版 星の王子さま 5 バオバブ | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

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V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

日ごとに、王子さまのことがわかって来た。

どうやら王子さまは地球ではない、どこか別の星からやって来たということ。

そして、その星は家くらいのちっぽけな星だということ、など。




3日目の昼間、俺がモーターを修理していると、王子さまは砂の上に三角座りをして、ポケットから俺の描いた羊の絵(箱の絵)を大事そうに取り出した。


「羊ってさぁ、小さい木を食べてくれるよね?」


絵を眺めながらそう言った。


「ああ」


俺はちょうどそろそろ休憩しようと思っていたので、工具を工具箱に放り投げると、額の汗を腕で拭いながら、王子さまの隣に座った。


俺は邪魔な髪を耳にかけて、絵を眺める王子さまの横顔を見た。



「じゃあ、バオバブも食べてくれるよね?」



「バオバブ⁇」


思わず声がひっくり返った。


「バオバブはちっちゃくないだろ!デカい木だよ。ゾウがよってたかって食ったって食べきれないよ」


「でもさ、バオバブだって最初はちっちゃかったじゃん」


「そりゃそうだけど。なんでバオバブなんて食べさせたいの?」


「え?知らない?マジでヤバいんだって。バオバブ。根の勢いがすごくて、バーッて張っちゃうから。うちなんかちっちゃい星でしょ?あの根がはびこったら、星が壊れちゃうよ。だからまだ小さいうちに引っこ抜かないとダメなんだって」


「へーぇ。そうなんだ。全然知らなかった」


「小さいうちはバラの木とよく似てるんだけど、見分けがつくようになったら、一本残らず引っこ抜かなきゃ。面倒くさいけど、それをサボったがために、星をダメにしちゃった人がいるの、僕知ってるからさ」


「ふぅん」



これでまたひとつ王子さまとその星のことがわかった。


「あ。そうだ!そのバオバブに壊されちゃった星の絵描いてよ」


「は⁇」


また無茶振り…。


「ムリムリ。だって俺その星知らねーし」


「今話したじゃん」


「いや、そうだけど、そうじゃなくてっ」


「啓発ポスター作ろうよ!」


「聞けよっ。人の話」


「絶対役に立つよ」


「どこに貼るんだよっ」


俺は両手を広げて砂漠を見渡した。



「いいから描いてよ!」






『バオバブの木に気をつけよう!』




↑結局描かされた。王子さまって、ほんとしつこいの。言い出したら聞かないんだから。