剛健版 星の王子さま 4 ぬくもり | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「ね、この羊いっぱい草食べる?あんまりいっぱい食べるんじゃまずいんだよなぁ。僕んとこ、そんなに広くないからさ」


「大丈夫だよ。そう思ってちっぽけな羊にしといたからさ」


俺は頭の後ろで手を組んで、適当に答えた。


「そう?よかった。だよね。可愛いなぁ」


ってまだ絵をじっと見ている。


サラサラの髪。キラキラした金の刺繍。膝を揃えてコンパクトに座ってるお上品な佇まい。


「あのさぁ…さっきから『僕んとこ』って言ってるけど、それ、宮殿とかのこと?君、どっかの王子さまなの?」


「え?」


「いや、そんな格好してるからさ」


「あ…うん」


男は頭をかいて照れくさそうに目を伏せた。


「マジか。王子さまなんだ」


「君は?」


「え?俺?」


「うん」


「俺は…どっからどう見ても、飛行機の操縦士でしょ」


「飛行機って?」


「え?」


「飛行機って何?」


「いや…。今、君、飛行機の副操縦席に座ってるんだけど…」


「え?」


王子さまは飛び上がって、コックピットの中を見回した。


「飛行機って言うんだ…」


「そう。初めて?空飛ぶんだぜ?鳥みたいに。王子さまなら自家用飛行機くらい持ってそうだけど」


「ないない!初めて見たよ。ほんとに飛ぶの?」


「飛ぶよ」


「じゃあ飛ばして」


「……」


「飛ぶんでしょ?」


「今は…ムリ」


俺は顔をしかめてそっぽを向いた。


「なんで?」



「故障しちゃったの。…あ。何?その疑いの目。…ほんとに飛ぶんだって!明日もっかい修理するから。したら直るかもしれないし。ってか、直ってくれなきゃ俺も困るから」



「どうして?」


「どうしてって…うちに帰れないから」


「うちかぁ…」


王子さまはそう言って窓の向こうに広がる星屑をばら撒いたような夜空を見つめた。



「君…いったいどこから来たの?うちはどこにあるの?」


王子さまはその質問には答えなかった。


ただ、寂しげな顔をして寒そうに身震いして体を縮こまらせた。


「マフラー…いる?」


俺は自分のマフラーをほどいて、王子さまに差し出した。


王子さまは、


「じゃあ…半分こ」


ってマフラーを自分の首に一巻きしてから、残りの分を俺の首にも巻いた。


「なんか、寝てる間に首締まりそう…」


「くっついてたら大丈夫じゃない?」


「そうかなぁ」


「じゃあこうしよう」


王子さまはマフラーをほどいて俺にくっつくと、それをふわりと俺たちの肩にかけた。


大人なのに、子供のような人懐っこさ。


…不思議な人だ。


俺は王子さまについてもっと知りたくなった。色々聞きたいことはあるけど…

ふと見ると、もう王子さまは静かな寝息を立てていた。


「なんだよ…あっという間じゃん」


王子さまの寝顔を見ながら、俺はふぁっと欠伸をした。

俺も寝よう。今日は疲れた。

腕を組んで、瞼をとじた。


「あったけぇ…」


王子さまのいる左側があったかかった。