俺はムッとして、羊の絵を描いてやった。
「え?羊?これ」
描いてるそばから熱心に覗き込む。
ちょっと…。頭が邪魔で、手元が見えないんだけど。
「うん」
「え?なんで角生えてんの?」
「生えてなかったっけ?」
「生えてるけど、こんなんじゃないでしょ。ヤギだよこれ」
「そっか」
「描き直して。ぐるぐる巻きの立派な角とかいらないからさ。仔羊が欲しいんだ」
「……」
俺はメモをちぎって丸めると、新しいのに描き直した。
「は?犬じゃんこれ。クレヨンしんちゃんに出てくる…」
シロか…。たしかにそう見える。俺、ウワバミだけじゃなくて犬の絵も描けたんだ。
またちぎって丸めて、新しいのに描き直した。
何度もダメ出しされて、コックピットの床に丸めた紙が増えていく。
いいかげんめんどくさくなってきた。
ってか、そろそろ寝かしてくれ。飛行機の修理で疲れてんだ俺は。
「は?何これ?おじさん?」
「執事」
「ダジャレ言ってる場合じゃないでしょ?ちゃんと描いてよ!」
「はいはい、わかりましたよ!」
俺はヤケになって、ササッと四角い箱を描いた。
「はい!この箱ん中にあんたの欲しい羊が入ってるよ」
ってポンとメモを投げ出すと、男は慌ててキャッチして、しげしげとその絵を眺めた。
俺はドサッと操縦席にもたれ、操縦桿に足を投げ出した。
ダメ出しされたってもう描かないからな。俺は寝る。
腕組みして目を閉じた。
すると、驚いたことに、男は
「…こんな羊が欲しかったんだよ…」
って目を輝かせて満足そうに笑った。
マジかっ…。