剛健版 星の王子さま 2 羊の絵 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

コンコン!


コックピットの窓ガラスを叩く音がして、目を開けると、ひとりの男が中を覗いていた。


上目遣いで俺を見ている。


「わっ⁇…だ、だれっ⁇」


人が住んでる場所からは千マイルも離れたサハラ砂漠のど真ん中。まさかこんなとこに人がいるなんて思いもしないから、ビックリした。


信じられないけど、助けに来てくれたのかな?

夢でも見てんじゃねーのか?俺。


可愛らしい顔をしてるけど、俺よりちょっと若いぐらいか。


「ねぇ…」


って、そいつが窓越しに話しかける。


「ちょっと…開けて欲しいんだけど」


マジかっ。


砂漠の強盗とかじゃないよね?


そいつがブルブルと寒そうに肩を抱いたのを見て、俺は内側からコックピットのドアを開けた。


「ありがとうッ」


男は中に入ってドサッと副操縦席に腰掛けると、顔をこっちに向けてニコッと笑った。人懐っこい笑顔。


「はじめまして」


お辞儀をすると、髪をかきあげた。


「あ…どうも…はじめまして」


男は白地に金の刺繍を施した服を着ていた。ところどころ赤い布地も見える。


なんか…王子さまみたいな格好してんな。



「あのね、お願いがあるんだけど」


「はぁ…。あ。金は無いよ!」


俺は慌てて顔の前で手を振った。


「金?僕が欲しいのは羊なんだけど」


「羊⁇」


「羊の絵、描ける?」


「は⁇」


「描けるよね?描いてくれない?ほら、ここに。描いてよ。羊の絵」


ってコックピットに置いてあったメモとペンを手に取って俺に差し出した。


「羊の…絵?」


「うん」


「か、描けねーよ」



俺はプイとそっぽを向いた。


だって、俺はウワバミの絵を認めてもらえなかったあの時から、絵はやめて勉強ばっかしてきたんだ。


それに、飛行機が故障して、こんな砂漠の真ん中で生きるか死ぬかってときに、羊の絵を描くなんてどうかしてる。

意味わかんねーだろ。


だけど、男は真剣な顔で頼んでくる。


「いいから、描いて」


「……」


「お願いッ」



なんか…諦めてくれなさそう。



「描けないっつってんのにさ…」



仕方なく俺はメモとペンを受け取り、俺に描けるウワバミの絵を描いてみた。外側バージョン。みんなに帽子と思われたやつ。


すると、俺が描き終わるや否や、


「ウワバミの絵じゃないって!しかもゾウを飲み込んでるとか最悪」


ってさも嫌そうな顔をした。

「僕んとこにはムリムリ。デカすぎるよ。僕が欲しいのは、もっと小さい羊!ひ、つ、じ!」


わかる?って感じで眉を上げて俺を見る。


人に頼んでるくせに、なんでちょっと上からなの。


羊くらい知ってますよ。