V6版ってか剛健版『星の王子さま』スタート!
剛くん(操縦士)のモノローグで始まります。あの声で、脳内再生して下さい
俺は子供のときに、ウワバミの話を本で読んでさ、すげーって思って絵を描いたんだ。
題して『像を溶かしてるウワバミ』
「これ、怖くない?」
って大人に見せたらさ、
「なんで帽子が怖いの?」
って言われてさ、マジかよっほんと大人っていちいち説明しなきゃわかんねーんだなって呆れちゃったよ。
だから、内側を描いてやったんだ。
そしたら、やっとわかってもらえたけど、
今度はなんて言ったと思う?
内側だろうが外側だろうが、ウワバミの絵なんて描くのはよして、勉強しろってさ。
そんなわけで、俺は絵描きになるのを諦めて、飛行機の操縦士になったんだ。ちゃんと勉強してね。
だけど、大人になったって、俺は俺の描いたウワバミの絵を帽子だなんて言う奴とは友達にはなれなかった。
そんなわけで、俺はずっとひとりだった。
6年前、飛行機が故障して、サハラ砂漠に不時着したあの時までは。
「マジかよ…っ」
コックピットから砂漠に降り立った操縦士は、煙を上げる機体を眺めて呆然とした。
慌てて工具を取り出し、故障箇所と思しきモーターの修理に取り掛かった。
乗客はいない。夕日の沈みかけた砂漠の真ん中で、操縦士はひとり、汗を流して働いた。
ヘルメットを脱ぎ捨て、マフラーをほどくと、額の汗を拭った。
人が住んでいる場所からは、千マイルも離れている。水筒には一週間分の水しかない。
「ちきしょう…!…頼むから…直ってくれよぉ…クソッ!」
なかなか直らないのにイライラして、とうとう操縦士は工具を投げ出し、機体を蹴りつけた。
ガンッ…‼︎
「…いってぇ!」
片足を両手で持ってピョンピョン跳ねる。
と、砂に足を取られて、ドサッと尻餅をついた。カーキ色の繋ぎの操縦服が、砂を被った。
口に砂が入ったとみえて、ぺっぺっ!と吐き出し、眉間にしわを寄せて口元を拭う。
どうやら、飛行機はしばらく砂漠にとどまっていたいようである。うんともすんとも言わないのだ。
そのうち日が暮れて、手元が見えなくなった。操縦士は諦めて、コックピットに戻ると、小さな灯りをともした。
操縦桿の上に両足を投げ出し、操縦席にもたれて腕を組む。
「さ…っみぃ…」
マフラーをぐるぐる巻きにして顎を埋めた。
空にはおびただしい数の星が瞬いている。
操縦士が瞼を閉じて、眠ろうとした、その時だった。