腕まくりをして、説明書を見ながら組み立ててくれた、さっきまでの大人の昌はどこへやら…
昌は身を屈めてテントに入ると、中を見回して「おお…」って少年のように目を輝かせた。
テントもワクワクするけど、そんな昌の表情に私はもっとワクワクした。
生成りのトレーナーにネイビーのパンツ。もちろん、裸足。それが、雑誌の衣装に似てて、
「雑誌から抜け出たみたいよ」
って言うと、え?って自分の格好を見て照れ臭そうに笑った。
それから昌はごろんと仰向けに寝転んで、頭の後ろで手を組んだ。
「キャンプに行こうか。今度」
私は昌の隣に寝転んだ。
「いいわね」
虫嫌いの昌。実現することは無さそうだけど。
フローリングが硬い。枕が欲しいな。
昌がムクッと起き上がって、私を見下ろす。優しい瞳。
「ちょっと待って」
って言うと、私を置いてテントを出て行った。
それから、クッションをふたつとブランケットを持って来て、テントの中に投げ入れた。
「ありがとう」
ってクッションを枕にすると、昌も中に入って来て、同じようにクッションを枕にして目を閉じた。
「眠いの?」
「…ん?」
眠そうな目で私を見て、それから寝返りをうって、甘えるように抱きついてきた。
「うん…」
足の間に私の体を挟んで、抱き枕みたいにすると、私の首筋に鼻を埋めた。
「こうしてると…落ち着く」
低い声でそう言われて、私は昌のワックスも何もつけてない、柔らかな髪を撫でる。
「…ごめん。今度、ちゃんとデートしよう」
「いいわよ…。こういうの…好き」
「こういうのって?」
「何もしないでいるの」
「…ほんとに?せっかくの休みなのに」
「休みだからよ」
「え?」
「他の人となら、間が持たないし退屈だけど、昌となら、いくらだってこうしていられる」
「……」
「お休みなんだもん。…ゆっくりしましょうよ」
すると、昌が顔を上げて私を見た。
あら…?
眠そうだった目に生気が宿って…さっきの雑誌の表紙みたいに少し挑発的な瞳になってるのは、どうして?
やだ。ドキドキするじゃない。
「眠かったんじゃ…ないの?」