急いで先生の車の後部座席に乗り込んで、ハンカチを取り出し、一応その上に座りなおした。
「車、濡れちゃいます。先生」
「平気だよ」
ってチラッと私を見てから、アクセルを踏んだ。
「タイミングよかったな」
「…ありがとうございます。先生、今から学校ですか?」
「そ。午前中休み取ってたの」
「よかった。午後にして」
「朝で生徒がいっぱいいたら、お前だけ乗せるわけいかねーしな」
うん。確かに。色々タイミングよかったな。
先生が緩やかにハンドルを切る。
しばらくして、
「結果出たの?」
って聞かれて、
「は、はい。今日発表で、それで、先生に報告とお礼を言いに来たんです」
「…ってことは?」
指先で唇に触れる。
「合格しました。先生のおかげです」
「おお〜っ!やったじゃん!」
ルームミラーの中で目が合った。先生が嬉しそうに笑って、
「おめでとう」
って言ってくれた。
「ありがとうございます!」
私は、先生に教えてもらったのと同じような問題が出たことを話した。
合格の報告とお礼が済むと、もう車は学校の正門をくぐっていた。
先生が駐車場じゃなく、生徒の下足室前に車を止めてくれた。
「ありがとうございました」
ほんとはすぐ車を降りなきゃいけないんだけど、まだ…先生に聞いてほしいことが残ってるから…。
条先生が振り向いて、眉を上げる。
降りないの?って顔をしてる。
先生が視線を落として、
「…濡れてんなぁ」
「あ。すみません」
「いや、シートじゃなくて、スカート。着替えとか…ないよな?」
「だ、大丈夫です」
先生が視線を上げる。
「髪も…」
先生のキラキラした目で、制服や髪をじっと見られて…
ふたりきりの車内で、雨音だけが響いて…
だ…ダメだ。
すごくドキドキしてきた…。
どうしよう。告白するタイミング…って…今…だよね?