ざっと問題に目を通す。
肝心の大問3を見た瞬間、ドクン…ッと心臓が跳ねた。
嘘…⁈
ドキドキが止まらない。
先生…!
驚いたことに、大問3は、先生が私のノートに書いてくれた図形の問題に酷似していた。
解ける…!
私は震える手で先生にもらったオレンジの鉛筆を握りしめ、思考の足跡を答案用紙に書き残した。
条がオレンジの鉛筆をクルクル回しながら、ソファに寝そべって数学雑誌の問題を解いている。
「違うな…」
って鉛筆をひっくり返して、後ろについてる黒い消しゴムで消す。
「あ!ちょっと…!」
「あ?」
「後ろの消しゴムはさ、あんま使うなって言ってるだろ?」
って俺は机の上の消しゴムを取って、条に投げた。
パシッと受け取って、
「細かい男だな」
って呟きつつ、言うことを聞いて投げてやった消しゴムで消し始める。
「じゃ、何のためについてんだよ。この消しゴムは。飾り?」
「いざって時のためだよ。他に消しゴムがないときに、使うの」
そう言って俺は再び自分の机に向かう。学年末考査の問題を考えてる最中だった。
「あ。間違えちゃった。条、消しゴム!」
「めんどくせーな。いちいち」
って条がさっきの消しゴムを投げ返す。
俺の机のペン立てには、このオレンジの鉛筆が何本か刺さっている。オシャレで機能的な俺のお気に入りの鉛筆。
条も気に入ってよく勝手に使ってる。それは全然構わない。いや、むしろ、条が俺の物を好んで使うと、へっへーそうだろ?いいだろ?って得意になっちゃう。
「あ。そういえばさぁ…」
って問題が解けたのか、条が雑誌をポンとテーブルに投げ出して、
「お前の鉛筆さぁ…こないだ三年の子にあげちゃったの」
ってソファの背に腕を載せてこっちを見た。