数学の神様 5 御守り | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

ちょうど問題が解けて一区切りしたとき、先生がチラッと時計を見た。


あ。


夢中になってやってるうちに、気がつけばあっという間に1時間半も経っていた。


「すみません。先生、お忙しいのに…」


って私は慌てて片付け始めた。


「もういいの?」


もういいの?って…1時間半も付き合ってくれたのに。

休日出勤してまでやらなきゃいけないお仕事があるんでしょう?


「はい。大丈夫です。図形さえクリアできれば。本番も…閃けばいいですけど」



「そうだな」


カップを持って立ち上がろうとすると、


「ああ、いいよ」


って私の手からカップを受け取った。


「ごちそうさまでした。すっごく美味しかったです。あ!」


「なに?」


「あの…これ…」


って私は鞄からチョコを取り出した。


「ほんとは手作りしたかったんですけど、時間なくて」


先生に渡すと、


「おお。なんだ。気使わなくていいのに」


いや、気使ってんじゃないです。


「まあ、結構面倒見てやったもんな」


って笑う。


だから感謝の気持ちじゃなくて、いや、もちろんそれもあるけど…。


「サンキュ」


って立ち上がって、チョコの箱をそのまま先生の机の上に置いた。



好きです。本命チョコです。


喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。


整然とした先生の机。数学の教科書と問題集。いくつかのファイル。


ペン立てから覗く銀のチョークホルダー。あれ、いつも胸ポケットにさしてたな…。




先生の授業は、無駄が無くて、テンポがよくて、わかりやすい授業だった。


時々、生徒の珍答がツボにハマって、教壇でひとりウケてた先生。


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厳しい先生のそんな笑顔に、私たちは癒された。


「バカかお前はっ」って丸めた教科書で頭をポンと叩かれて、みんな内心喜んでた。



好きです。


厳しくて
優しくて
かっこよくて
めちゃくちゃ頭がいい…

私たちの、数学の神様。


「先生…」


先生の背中に話しかける。



「なに?」



「…緊張します」


あと二日で入試本番を迎える…。


先生が振り向いた。


とびきり優しい笑顔に、胸がキュンとなった。


先生がまた背中を向け、机の引き出しを開けた。




「なんか、御守り持ってく?」



って引き出しの中を物色する。



「え?」


な、何か先生の物をくれるってこと⁇


「何がいい?」


って向こう向いたまま、引き出しの中をガサガサと手で触っている。


「え?え?」


ちょっと待って。ほんとに?


「い、いいんですかっ⁇」