数学の神様 6 思考の足跡 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「ほんとはさぁ…ココをあげられるといいんだけどな。最強」


って先生が自分の頭を人差し指でつつく。


え?


「欲しいです!先生の脳みそ!絶対合格できますよね?無敵ですよね?ください!」


「ばあか」


って笑って、


「あげなぁ〜い」


って背中を揺らせながら、まだ引き出しの中を漁っている。


「ちょっとは分けてやったんだからさぁ…あとは自分でなんとかしろ」


「あ、先生!」


「ん?」


私は、過去問の横に置きっ放しになってる鉛筆を指差して、


「これがいいです!御守りに、これください」


って言った。


実は、さっき先生が使ってたときおしゃれだなって思ってた。

持つところは丸や六角形じゃなくて三角形で、色はオレンジ。木軸の先と後ろの消しゴムが黒。


「ああ…」


「ダメですか?」


「いいけど。…いいの?そんなんで」


「はい!」


この鉛筆と、先生が問題を書いてくれた私のノート。これを御守りにしよう。


「先生、ありがとうございました!私、がんばります」


「おう」


鞄に筆記用具をしまう私を先生が見下ろしている。


鞄を持って、立ち上がった。


「ちょっと…自信つきました」


「そっか」


ドアの方に向かって歩く私の後を先生がついてくる。


振り向いて、もう一度頭を下げた。


それから、顔を上げると、先生がドアに手をやって、足をクロスさせて、あたしを見ていた。



「あのさ…いつも言ってるけど…」


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「たとえ、たどり着いた答えが正解じゃなくても、そこまでの思考の足跡をちゃんと紙の上に残せよ。答案用紙に」


「はい」


「部分点を確実に取って来い」


「はい。『思考の足跡を答案用紙に残す』」


「そう。それが大事」


正解にたどり着くだけじゃなく、そこまでの道のりが、大事。


たとえ、正解にたどり着かなかったとしても、方向性が間違ってなければ、評価される。


「…なんか…数学って人生みたいですね」


テヘッて肩をすくめてそう言うと、先生が


「生意気言ってんじゃねーよ」


って横を向いて笑った。