健ちゃんの、胸から上への愛撫が止むことはなくて…
あたしが健ちゃんを感じることのできる貴重な場所に、ずっと触れてくれている…。
そうして、あたしを高めておいて、今度はあたしの手首を掴んで、健ちゃんの腹筋あたりに導いていく。
触って…って言う少し掠れた健ちゃんの声。熱い息が耳にかかる。
手首を掴まれたまま後ろに回した手が、健ちゃんの高まりを示すそれに触れた。
健ちゃんは、そうやって、健ちゃん自身の興奮を、あたしに手で感じさせてくれる。
なぜなら、その位置でヒップに押し付けられても、あたしにはわからないから。
あたしは手で健ちゃんがあたしを埋めてくれるのを確かめると、その手を前に回して、シーツを掴んだ。
あたしを後ろからギュッと抱きしめて、健ちゃんが、あたしの肩に顎を載せて、はぁーって熱い息を吐き、繋がった…って呟く。
普通のカップルなら、こんなとき、言葉はいらないんだろうな…。
黙って肌を重ねるだけで、きっとたくさんのことを感じ合って伝え合えるんだろう。
でも、あたしが、たとえ裸で抱き合っても多くを感じることができない体だから、健ちゃんは、細やかに言葉で伝えてくれる。
できるだけ、たくさん、あたしが健ちゃんを感じられるように。
時には目で、時には耳で…そして、さっきみたいに、時には手で…。
ただ、中に入ってしまえば、健ちゃんを感じることのできる場所があって、そこに触れると、体が跳ね上がるくらいに感じてしまって…
そんなときは言葉はいらない。
むしろ、言葉にならない。
感じたら、素直に反応すること。
それは、はじめに、健ちゃんに教えられたことだった。
『恥ずかしがらないで、俺に全部見せてくんなきゃ。ゆかりの感覚は、ゆかりにしかわかんないんだから。正直に感じるままに、ちゃんと伝えて』
恥ずかしがるあたしに、
『俺がゆかりをより深く愛するために必要なことなんだから…約束して』
って約束させられた。
だから、あたしは、いつも、思い切って恥ずかしさを手放して、約束通り、素直に健ちゃんの愛に溺れる。
まるで、愛は絶対じゃないなんて言ったあたしをやり込めるかのように、
痛いほど健ちゃんを感じさせられて
こんなにも深く健ちゃんに愛を刻み込まれて…
体と一緒に、心も震えた。
愛だけじゃない。
水泳も、勉強も、そして一生懸命に生きることも…あたしの人生にとって大事なことは、全部健ちゃんが教えてくれた。
いつも、あたしを導いてくれる人。
あたしに、新しい景色を見せてくれる人。
夫婦になっても、あたしにとって、健ちゃんは永遠に先生なんだ…。
健ちゃんを受け入れながら、そんなふうに思っていたら、つい、
「…せんせぇ…ッ」
って呼んでしまった。
「ばか…っ」
健ちゃんが、息を荒げながら、
「いま…先生って…呼ぶんじゃねーよ…」
って後ろからあたしの顎をグッと掴んで、唇であたしの口を塞いだ。
健ちゃんの落ちかかった前髪が、あたしの頬にサラサラと触れた。