「先生、カフェじゃ踊れません」
「いいから。何食う?甘いもの好きだろ?」
ってメニューを佐久間の方に向ける。
「先生の奢りですか?」
「当たり前でしょ」
「じゃ、遠慮なく」
って喜んでパフェを頼んだ。
「食えるの?そんなに」
「半分こします?」
「いらねーよ」
俺はチラッと腕時計を見る。
早く帰んなきゃ。ゆかりが待ってる。
「先生、すっっごいエロかっこよかったです!ランバダ!」
「あ、そう」
パフェがくるのを待つ間、利発そうな目をクルクルさせて、佐久間がランバダの感想を語る。
「もう、見てたら踊りたくてムラムラ…あ!じゃなくて、ムズムズしちゃって」
「うずうずだろ」
「ここ出たら、踊りに行きますか?」
「行かないよ」
「え?」
ポカンとした佐久間の前に、おまたせしましたって、タワーみたいなパフェが置かれた。
2段重ねのバニラアイス。ウェハースにプリン。ちょんと乗ったさくらんぼ。
ワクワクするような賑やかなパフェと、金髪の佐久間の綺麗な顔。
「食えば?」
って言って俺はコーヒーに口をつけた。
「…あの…さっきは…後でふたりで踊ろうって言いましたよね?」
「言ったね。ごめん。でも、ああでも言わなきゃお前、舞台から降りなかっただろ?」
「嘘だったんですか?」
「ごめん」
佐久間が悲しそうに眉を寄せて、俯いた。
「お前さ、あんとき若い連中がお前のことどんな目で見てたか知ってる?」
「…知りません」
「ああいうのはやめた方がいい」
「ああいうのって?」
「いつも言ってるだろ?何か喋ったり行動したりする前に、一回考えろって」
「…はい」
「お前は衝動的に動いちゃう性格なんだから。自覚してんだろ?」
「はい。先生に言われてからは…」
「後先考えずに行動するな。若い娘がそんな格好してみんなの前でランバダ踊ってどうすんだよ?俺はあそこでお前を若い連中のスケベな目に晒したくなかったんだって」
しょんぼりしていた佐久間の顔がパッと明るくなる。
あ、しまった。喜ばせちゃった。
佐久間が潤んだ瞳で俺を見つめる。
「食えよ。アイス溶けるぞ」