天の羽衣 29 新しい婿 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「あぁ…嘘よ…。どうして…」


娘はまだ信じられずに、首を横に振りました。


男は、天の羽衣をさっと脱ぐと、娘の前に跪き、その羽衣を娘の方へ差し出しました。


「この羽衣を…預かってくれないか」


娘は両手を口に当て、ただ黙って男を見下ろしていました。



「この羽衣は…あなたのものだ。そして、この私も…」


男は呆然とする娘の手を取り、羽衣を握らせました。


そして、



「お嬢さん…私のお嫁になってください」



と言いました。



娘は羽衣を胸に抱きしめ、天を仰いで、


「ああ…っ!」


と言うと、目を閉じました。

娘の目尻から涙がこぼれ落ちました。



と、そのときです。


草陰から、娘の名を呼ぶ男の声がしました。


「おい、いつまで洗濯しておるのだ。母上が待っているぞ」



男は、それを聞いて、ハッとしました。



なんということでしょう。


男は、娘に新しい婿がいることなど全く想像していなかったのです。