天の羽衣 23 王の条件 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日二話目の更新です。





「ゆうべ、宴のあとで突然現れたんだ」


「そんなことってあるの?」


「あるみたいだな」


「俺は、てっきり…自分の子供にその印が現れるものだと…」


「…どうする?」


「どうするって?」


「俺が次の王になるなら…お前は無理に世継ぎを残さなくてもいいわけだ」


「…そうか…」


婚儀は今日です。しかし、世継ぎを残さなくてよいのなら…?


王は腕を組み、指先で唇を触りながら思案しました。


そして、


「急に取りやめることなんかできるだろうか?」


と、上目遣いで兄を見ました。


「さあ…。父上が何と言うか」




しかし、世継ぎを残すことに大変な抵抗を感じていた王は、兄に次期王の印が現れた今、妃を迎える意味は無いと思いました。



「婚儀は中止だ」


王はキッパリとそう言って、立ち上がりました。



「本当にいいのか?妃は天上一の美しい天女だぞ?」


王は少し首を傾げて、兄を見ました。

それから、片眉を上げて、


「天上の一番なんであって、俺の一番じゃない」


と言いました。



兄は、思わずヒューと口笛を鳴らしました。


「父上には?」


王は上着に腕を通し、出かける準備をしました。


「いや、まだ。兄弟には言ったが」


「じゃ、父上に報告に行って、婚儀の中止を願い出て来る」


「待て」


兄は行きかけた弟の肩をパシッと掴みました。


「お前の気持ちは、きのうあいつから聞いた」


あいつと言うのは、2番目の兄のことです。


「俺が父上より先にお前に話したのには、わけがある」


「…というと?」


弟は眉をひそめて兄を見ました。


「この胸の印は、次期王の印であって、王の印ではない」


「確かに」


「この胸の鳥が羽ばたくまでは、お前が王だ。仮に父上に願い出て、婚儀は中止になったとしても、お前はまだ王位を降りるわけにはいかない」


「もちろん、そんなことをしたら災いが…」


「で、いつまでお前は王を務めるつもりだ?」


「え?だから、それは兄さんの鳥の痣が消えるまで…」


「いつ消える?俺の胸の鳥はいつ羽ばたく?」


「そんなことは…」


わからないと言おうとした弟の言葉を遮って、

「1年後か?3年後か?それとも10年後か?いつになるかわからないものを…お前は待てるのか?それまで自分を偽り続けるのか?本当は王位を捨ててあの娘のもとへ行きたいのに?」


と兄は畳み掛けました。


「お前の胸の鳥が羽ばたいたのは、お前が王になるのに欠けていた物が揃ったからだと父上は言ったそうだな」


「うん。確かにそう言った。二つ上の兄さんも、あの娘が俺に欠けていたものを埋めてくれたんだって言ってた」


「じゃあ、今の俺に欠けてる物は何だ?」


兄に欠けているもの…?


弟は、目の前のすらりとした美しい兄を見上げました。

いくら考えても、容姿はもとより、知性、性格、何を取ってもこの一番上の兄に欠けているものなど見つかりません。

むしろ、自分より王に相応しく思えるほどでした。


「わからない…。何も…欠けている物などないように思える…」