天の羽衣 19 即位 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「ただいま戻りました」


金色の鳥に導かれ、天に戻って来た男は、父王の前に跪きました。


黄色い羽衣から透ける男の体は驚くほどたくましく立派で、天女たちは頬を染めながら、男に天の衣を着せました。


「うむ」


「父上がご健在なのに、どうして私が今…王に…?」


「ふむ。天を治めるにふさわしいものがすべてお前に揃ったからであろう」


「と申しますと?」


父王はそれには答えず、即位の儀式を整えよと周りの者に伝えました。



やがて即位の儀式が執り行われ、男は正式に新たな天王となりました。



続いて、新王を祝う宴が催されました。


兄たちに祝われ、笑顔を見せるものの、新王の頭の中は地上に置いてきた娘のことでいっぱいでした。



「やあ、立派になったな。どんな天女もよりどりみどり、妃選びが楽しみだな」


と、三番目の兄が言いました。


「兄さん、今、王になったばかりだよ?妃選びはまだ先でいいよ」


「いや俺はね?お前がこのまま帰って来なかったら俺たち兄弟のうちの誰かが王にならなくちゃいけないのかと思ってさ…

したら実は何日か前、ふと見たらさ、俺の胸にね、痣が出来てたの。やべっ!俺にお鉢が回って来た!って、どうしよう?ってこいつに見せたらさ」


と橙の衣を着た五番目の兄を見ました。


天女と見紛うほどの美しい兄は、

「ただのキスマークだったの。天女と戯れた跡。だいたい、その歳になって今更王の印が現れるわけないでしょ?遊び過ぎなんだよまったく」


と、呆れ顔で三番目の兄をにらみました。


「いや、それがその夜のことは全然覚えてないんだって」


「飲み過ぎ飲み過ぎ!」


「今日はほどほどにしとけよ!」


兄弟たちは声を上げて笑いました。



新王が玉座に座り、天女たちの舞を見ながら盃を傾けていると、


「浮かない顔してんな」


と、四番目の兄が静かに話しかけました。



「そう?」


「王になったお前の背負ってるもんは…俺にはわかんねーけど、俺たちといるときはさ、無邪気に笑ってて欲しいと思うよ」


「背負ってるものというか…」


新王は盃を置いて、遠くを見つめました。


「もう少し…あの娘のそばにいてやりたかった…。なんでこのタイミングなのかなって」


別れの辛さが新王の胸を締め付けました。

苦しみに歪む弟の顔を見て、兄はこう言いました。




「王になるには、お前に欠けてたもの、あの娘が埋めてくれたからじゃないの?」




そして、すっと立ち上がると、天女の舞に加わりました。