天の羽衣 20 離れてても | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

赤い薄布の衣をまとい、天女に混じって軽やかに舞を舞う兄を見ながら、新王はやはり娘のことを思い出していました。


すると、


「あの娘のことが、忘れられない?」


と、今度は橙の衣を翻し、すぐ上の兄がやって来て、新王の隣に座りました。



「…うん」



「ほら…」


というと、兄は足元の雲を見ました。


「雲の下には、何がある?」


と、眉を上げて弟を見ました。


「兄さん…」



「天と地は繋がってる…。離れてても、会えなくても、ひとつだと思ってさ…」



と言って、ふう…っと雲に向かって息を吹きかけました。


するとどうでしょう。

雲がすーっと開けて、切れ間から地上の様子が見えたのです。

新王は思わず立ち上がって、下を覗きました。


緑の森や山や、朝陽を受けてキラキラと流れる川や小さな家々…。

新王はつい先程までいた地上の景色がすでにあまりに懐かしく、目頭を熱くしました。


「あのどこかに、お前の愛しい娘がいるんだ。そして、お前が立派に天を治めることを望んでいる。お前は、ここから、愛しい娘の幸せを願えばいい」


兄は静かにそう言いました。


そして、地上から吹き上げる風にその綺麗な髪をサラサラとなびかせ、弟を振り向きました。


「ずっとそばにいることだけが、愛じゃないと俺は思うけどね」