赤い薄布の衣をまとい、天女に混じって軽やかに舞を舞う兄を見ながら、新王はやはり娘のことを思い出していました。
すると、
と、今度は橙の衣を翻し、すぐ上の兄がやって来て、新王の隣に座りました。
「…うん」
「ほら…」
というと、兄は足元の雲を見ました。
「雲の下には、何がある?」
と、眉を上げて弟を見ました。
「兄さん…」
「天と地は繋がってる…。離れてても、会えなくても、ひとつだと思ってさ…」
と言って、ふう…っと雲に向かって息を吹きかけました。
するとどうでしょう。
雲がすーっと開けて、切れ間から地上の様子が見えたのです。
新王は思わず立ち上がって、下を覗きました。
緑の森や山や、朝陽を受けてキラキラと流れる川や小さな家々…。
新王はつい先程までいた地上の景色がすでにあまりに懐かしく、目頭を熱くしました。
「あのどこかに、お前の愛しい娘がいるんだ。そして、お前が立派に天を治めることを望んでいる。お前は、ここから、愛しい娘の幸せを願えばいい」
兄は静かにそう言いました。
そして、地上から吹き上げる風にその綺麗な髪をサラサラとなびかせ、弟を振り向きました。
「ずっとそばにいることだけが、愛じゃないと俺は思うけどね」