天の話をしたからでしょうか。
「あぁ…久しぶりにあの羽衣が見たくなったなぁ」
と男は懐かしそうに言いました。
「お出ししましょう」
と娘は押入れを開けました。
そして、隠し棚を開けて、羽衣の入った箱を取り出そうとしたのですが…
「…無い…!」
娘は慌てて隠し棚や押入れの中を探しました。
「どうした?」
「確かにここに隠したはずなのです!それなのに…」
「無いのか?」
「おかしいわ…」
娘が必死になって探しているのを男は呆然と眺めていました。
男の顔はだんだん青白くなってきました。
「おい…」
男の低い声が静かに響きます。
「本当に、そこに隠したのか?」
「本当です!確かにここに…っ」
「じゃあ、なぜ無いのだ⁈」
「わかりません」
男の鋭い目つきに娘はたじろぎました。
「本当です!確かにここに…!信じてください!」
娘は男にすがりつきました。
さっきまで笑っていた穏やかな男とはまるで人が変わったように、男は冷ややかな眼差しを娘に向けました。
「本当は…もうとうに捨ててしまっていたのではないのか?…俺を天に帰したくないばっかりに」
「違います!ああ…どうか…っ!」
娘にとって、男に自分の愛を疑われることほど辛い事はありません。
けれども、男が娘を疑うのも無理はありません。
一体羽衣はどこへ行ってしまったのでしょう。