天の羽衣 10 疑い | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


天の話をしたからでしょうか。


「あぁ…久しぶりにあの羽衣が見たくなったなぁ」


と男は懐かしそうに言いました。



「お出ししましょう」


と娘は押入れを開けました。


そして、隠し棚を開けて、羽衣の入った箱を取り出そうとしたのですが…




「…無い…!」



娘は慌てて隠し棚や押入れの中を探しました。



「どうした?」


「確かにここに隠したはずなのです!それなのに…」


「無いのか?」


「おかしいわ…」


娘が必死になって探しているのを男は呆然と眺めていました。


男の顔はだんだん青白くなってきました。


「おい…」


男の低い声が静かに響きます。



「本当に、そこに隠したのか?」



「本当です!確かにここに…っ」


「じゃあ、なぜ無いのだ⁈」


「わかりません」


男の鋭い目つきに娘はたじろぎました。


「本当です!確かにここに…!信じてください!」


娘は男にすがりつきました。


さっきまで笑っていた穏やかな男とはまるで人が変わったように、男は冷ややかな眼差しを娘に向けました。



「本当は…もうとうに捨ててしまっていたのではないのか?…俺を天に帰したくないばっかりに」



「違います!ああ…どうか…っ!」



娘にとって、男に自分の愛を疑われることほど辛い事はありません。



けれども、男が娘を疑うのも無理はありません。


一体羽衣はどこへ行ってしまったのでしょう。