天の羽衣 11 羽衣のゆくえ | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日2話目の更新です。







「ひょっとして…」


ちょうどそのとき、家の戸が開く音がしました。母が外から帰って来たのです。


「お母さん!羽衣を…っ…押入れの隠し棚にあった羽衣を知りませんか?」


母はハッとして、それからすぐに目をそらせました。


「お母さんっ!」


娘は裸足のまま土間に下りて、母の肩を掴んで揺さぶりました。


母は、顔を上げて、娘の向こうに立っている婿を見ました。


そして、きっぱりとこう言いました。





「捨ててしまいましたよ」





男の顔がサッと青くなりました。


娘は、


「そんな…⁉︎どこへ捨てたんですかっ⁇お母さんっ‼︎」


と言ってから男の方を向き、


「取ってきます!探してきますから!」


と言いました。





「無駄ですよ。川へ流してしまいました」





母の声は男と娘を凍りつかせました。




「ああ…お母さん…なんてこと…」


娘はヘナヘナとその場にへたり込みました。


母はすっと男の正面に立つと、土間に膝をつき、正座しました。それから、膝の前に指をついて、男を見上げました。


母の目には涙が溜まっていました。



母は突然ガバッと額を地面につけました。


「どうか…後生ですから…っ…天に帰らないでくださいっ!」



娘は驚いて土下座する母を見ました。



「約束をしたからといって…この娘を置いて、天に帰るなど…子まで為した仲ではございませんか!

子供が生まれるまでと言わず…どうか、ずっとここにいてください!

この娘と…この娘と…添い遂げてやってください!お願いですから…天に帰らないでやって下さいまし!」