2月は初めて読む作家さんの作品にも触れ、
新しく知った世界もありました。
1月に比べると読書量も読むスピードも落ち、
読了は26冊と少なめでしたが、良い本に沢山出会えました。
かがみの孤城 辻村深月
中学1年に進級した安西こころは、ある出来事をきっかけに不登校になり、
母親と一緒に行った「心の教室」という名前のフリースクールにも行けず、
家に閉じこもっていた。
ある日、光り出した部屋の姿見に手を伸ばしたこころは、
鏡の向こうに引きずりこまれてしまった。
呼びかけられて目を覚ますと、
目の前にはオオカミと名乗る狼のお面を付けた小さな女の子と立派な城があり、
城には同年代のリオン、アキ、スバル、マサムネ、フウカ、ウレシノと名乗る
少年少女も集められていたのだった。
謎解きというほどではありませんが、正解を探りながら読むのが楽しかったです。
またラストがとっても良かったです。
お勧め度:★★★★★ 5.0
世界のかわいい村と街 パイインターナショナル
世界各地にあるカラフルで可愛らしい街並みが紹介されている写真集。
ヨーロッパ、特にフランスが多かったですが、
東欧や中国なども載っていました。
童話や宮崎駿監督作品に出てくるような素敵な街並みばかりなので、
見ているだけで楽しくなりました。
お勧め度:★★★★★ 5.0
京都寺町三条のホームズ19 拝み屋さんと鑑定士 望月麻衣
京都寺町三条のホームズシリーズ20作目。
小松探偵事務所にいる家頭清貴の元へ賀茂澪人が2つの依頼をもって来た。
1つは異変を感じる茶碗の鑑定、
もう1つはお化け屋敷と呼ばれる屋敷の調査だった。
今回は望月さんの「わが家は祇園の拝み屋さん」シリーズの完結を記念し、
クロスオーバー作品となっています。
なので葵の出番は少なく、
鑑定の前にドライブするという作品に関係ないシーンで
登場シーンが増やされている感じです。
ドライブで訪れた志明院は、著者が実際に取材で訪れた場所だそうで、
そこを無理やり盛り込みたかったのでしょう。
だとしても、ご住職から聞いた話をそのまま作品に使うのであれば、
フィクションの小説ではなく、
紀行文を書かれた方が良いのではないかと思いました。
今回の間違い探しは、
205ページの「目の前に大きな布人形が棚に並んでいたる」と
225ページの太秦空襲(右京区)の太秦のふりがなの「うずきさ」でしょう。
うん? 太秦は昔、もしくは地元では「うずきさ」なのかしら?
お勧め度:★★★☆☆ 3.0
図説 英国メイドの日常 村上リコ
19世紀から20世紀にかけて、
イギリスの上流階級の家庭に雇われていたメイドについて書かれた本です。
メイドの服装、職種と給与、求人と就活、仕事と生活、楽しみや遊び、
そして恋愛についてなど、色々な項目に分けて細かく書かれています。
メイドを雇う側の事情なども書かれていて、
昔のイギリス人の生活を垣間見ることができた面白い本でした。
お勧め度:★★★★☆ 4.0
白鳥とコウモリ 東野圭吾
2017年11月1日、
竹芝桟橋近くの路上に停められていたセダンの後部座席から
男性の刺殺体が発見された。
被害者は弁護士の白石健介で、
清洲橋近くの遊歩道で刺されたことが判明した。
事件前の白石の足取りを追う刑事の五代は、事件前、
白石の法律事務所に電話をかけて来た倉木達郎の存在を突き止める。
過去と現在、被害者家族と加害者家族。
様々なものが交錯し、事件は意外な方向へと転がり始める。
一時期、東野圭吾作品ばかりを読んで飽きてしまい、
全て処分して遠ざかっていたため、しばらくぶりに読みました。
飽きた当時感じたマンネリ感はなく、500ページを超える長編でしたが、
ページをめくる手が止まりませんでした。
ところでタイトルになっている「白鳥とコウモリ」。
作中で、あり得ないことの例えとして
「まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」と出てきますが、
白鳥は夜間でも普通に飛行するので、コウモリが冬眠していない季節であれば、
一緒に飛ぶこともあり得ます。
私は春先の夕方、
コウモリが飛ぶ上を白鳥の群れが飛んでいるところを見たことがあるので、
このタイトルだけは納得できず(笑)
比喩的表現なので構わないのですけど、
もっと決定的に対立する物があるだろうに…と思ってしまいました。
お勧め度:★★★★★ 5.0
ふしぎ駄菓子屋銭天堂3 廣嶋玲子
不思議な駄菓子を売っている銭天堂の第3弾。
悪夢に悩む娘の父・信孝には獏ばくもなか。
頻繁に来る友達のメールや電話から逃れたい智美には留守電でんシール。
クラス替えであかりと同じクラスになりたい勝には絵馬せんべい。
孫に顔の皺を指摘されてショックを受けた雪江にはしわとり梅干し。
兄として損ばかりしているため、末っ子になりたいと思っている明には兄弟だんご。
ダイエットにハマっている悠里にはミイラムネ。
今回は6編のお話に、プロローグとエピローグが収録されていて、
たたりめ堂のよどみがお菓子の材料になる不幸虫を捕まえています。
この作品で、たたりめ堂のお菓子のことも出てきますが、
今後も関わってくるようなので、続きが楽しみです。
お勧め度:★★★★★ 5.0
スープの国のお姫様 樋口直哉
尊敬していたシェフが亡くなり、
経営陣が変わったことで思い通りの料理が作れなくなってしまい、
店を辞めた僕。
雑誌でレストランを紹介する記事を書く仕事などをしていたが、
以前のような満足感は得られなくなっていた頃、
元恋人から湘南地方にある古い洋館で働く料理人の仕事を紹介された。
洋館には熟練の執事のキサキ、マダム、マダムの孫娘の千和がいるが、
作る料理はマダムの夕食のためのスープのみ。
時折訪れる客にスープや料理を作ることがあり、
客がリクエストする思い出のスープの味を再現するために苦労する。
僕自身が客から当時のことを聞きだしたり、
親が遺した料理関連の本を沢山読み、
古今東西の料理の知識を持つ千和がヒントを与えてくれたりして、
人が求めるスープを作り出していく。
僕自身も千和も探しているスープがあり、
スープと思い出の味がテーマになっています。
またエスコフィエなど実際にある料理に関連する本も登場するほか、
著者が本物の料理人なので、食材や料理の表現がとても上手です。
ただ、答えを知っているかのように見えるキサキやマダムが
僕に何のアドバイスをせず、自分で答えを探させるようなシーンが多く、
僕の視点で読んでいる私は、かなりフラストレーションが溜まってしまいました。
お勧め度:★★★★☆ 3.5
密室の鍵貸します 東川篤哉
流平は自宅アパートの白波荘の一室を完全防音に改造した
ホームシアターを持つ茂呂の元へ行き、
茂呂と一緒に「殺戮の館」のビデオ鑑賞をする。
しかし、その夜、流平がある事件に巻き込まれる。
進退窮まった流平は、姉の元夫で探偵をしている鵜飼杜夫に助けを求める。
東川さんのデビュー作で、烏賊川市シリーズの第1作です。
昨年11月にシリーズ8作目の
「探偵さえいなければ」を先に読んでしまっていたので、
原点に戻って1作目を読んでみましたが、
密室トリックも犯行動機も微妙でした。
ただ説明のために作者が作中に登場する点が変わっていると思いました。
お勧め度:★★★☆☆ 3.0
李王家の縁談 林真理子
長女・方子女王が皇太子妃に選ばれないと知った梨本宮伊都子妃が、
朝鮮王朝第26代王・純宗の弟の李垠を婿がねとして定め、
縁談をまとめるべく奔走する様子や、
次女・規子女王の縁談に奮闘する姿が描かれています。
伊都子妃が書かれた日記を元に書かれ、
また歴史的資料なども参考にされたようで、
庶民には伺い知ることができない皇族方の結婚や生活を垣間見ることができました。
先月、「大正天皇婚約解消事件」を読んでいたので、
伊都子妃と大正天皇の皇后・節子妃との確執、
更には最初に皇太子候補だった禎子女王などのことは、
作中で背景の説明があまりなくても理解できたので良かったです。
お勧め度:★★★★☆ 4.0
絶対に住めない世界のゴーストタウン クリス・マクナブ
世界中にあるゴーストタウンを紹介する本。
ゴーストタウンになった理由は、
産業の衰退や鉱山の閉山、過酷な気象環境など様々。
チェルノブイリ原発の影響で一夜にして廃村になった
ウクライナのピリピャチ(表紙の写真の場所)やコパチの幼稚園などは
見ているだけで胸が痛くなりました。
また中国のニュータウンの開発失敗など、
信じられないような理由のゴーストタウンがあるほか、
遺跡もゴーストタウントして紹介されているのが面白かったです。
ただ、もう少し写真が多ければ良かったと思いました。
お勧め度:★★★★★ 5.0
ふしぎ駄菓子屋銭天堂4 廣嶋玲子
不思議な駄菓子を売っている銭天堂の第4弾。
努力せずにテストでいい点が取りたい雄太には
ヤマ缶詰とたたりめ堂のずるずるあげもち。
気が弱い雄介にはウルフまんじゅう。
仕事が忙しくて睡眠がとれなく、眠り貯金箱が欲しい健司には
たたりめ堂の眠れませんべい。
なんでもいうことをきいてくれる家来が欲しい真美にはゴブリンチョコエッグ。
歯磨きナッツが再び欲しい誠一にはたたりめ堂の虫歯あられ。
デッサンが上手に出来なくなってしまったまどかには虹色水あめ。
今回は7編のお話に、プロローグとエピローグが収録されています。
たたりめ堂のよどみがちょこちょこ邪魔をしてくるので、少し鬱陶しく感じました。
作中に書かれているように、銭天堂のお菓子を買って掴んだ運を、
人が良く使うのか悪い方に使ってしまうのか、そこが面白いので、
よどみが一方的に挑んでくる回数は減って欲しいと思いました。
お勧め度:★★★★★ 4.5
京都魔界地図 綾辻行人
作家・綾辻行人さんが京都の各地に残る魔力封じの仕掛けやパワースポット、
忌み地などを紹介しています。
現在人気の観光スポットの意外な歴史や謂れを知ることが出来て面白かったです。
謎のまちを舞台とした書下ろしの短篇奇談「深泥丘三地蔵」も収録されていました。
お勧め度:★★★★☆ 4.0
スイート・ホーム 原田マハ
赤い屋根、クリーム色の壁、チョコレート色のドアのそばに
大きなキンモクセイの木がある「スイート・ホーム」という名前の
洋菓子店の長女・香田陽皆の恋のお話から始まり、
スイート・ホームの常連でスーパーに併設されている
オアシスキッチンで講師をしている未来の恋のお話など、
スイート・ホームを中心とした人々のお話の短編が連作になっています。
最後には、スイート・ホームを取り巻く人の視点で書かれた掌編が
いくつか収録されていて、読んだ後に心が温かくなる一冊でした。
お勧め度:★★★★★ 4.5
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