(抜粋)
貯蓄などの資金の流れがどちらの路線を選んで回っていくかはしばしば経済の動向を大きく左右し、さらにその選択の鍵を握るのがやはり「金利」なのであり、これが先ほどのものと並んでもう一つ、資本主義社会のコア付近で第二の支配的メカニズムとなっているのである。

ただし第3 章で述べた鉄道とトラックの話はいわば競合関係の一例に過ぎず、具体的にどんな路線が競合関係を構成しているかは、国の置かれた状況や時代などによって千差万別で、そのパターンは一通りではない。

むしろここで重要なのは、貯金や投資資金が通る路線が複数本あって、その競合関係がいずれの場合も周囲に何らかの影響を及ぼすということそれ自体にあり、第3 章の具体的な株と金利の関係などはそれに比べればどうでもよいので、そちらは忘れてとりあえずそのことだけを覚えておけばよい。

ところがこの話が今度はケインズ経済学の後半のL M 曲線の話題にかなり似ているのである。実はこのL M 曲線の話も極限まで単純化して言えば、やはり経済社会の内部に投資資金が流れるルートが2 本あって、それらの資金がどちらに向かうかの競合関係が経済全体に大きな影響をもたらす、ということを主張しているのであり、まさしくそれは上の話と本質的に同じものなのである。

「投資資金が向かう2 本のルートがある」ということ、そしてその際に「金利がその選択を支配している」ということが話のポイントとなっていることがわかる。

(コメント)
貯金や投資資金が通る路線が複数本あって、その競合関係がいずれの場合も周囲に何らかの影響を及ぼすことをとりあえず覚えておくことにする。
(抜粋)
資金がそのように遠くまで移動する際には、貨車に乗った資金は低金利の時の方が動きやすく、線路の上を遠くまで運ばれていくということであり、言葉を換えれば、金利が低いことが貨車や積荷を動かす推進力を生み出しているということである。

(コメント)
資金が線路に乗って企業まで遠距離を移動する際に「金利」というものがどう影響するかについてのこと。
(抜粋)
人々の所得が増えれば当然ながら貯蓄も増えることになるが、それを無邪気に増えたと言って喜んでいられないのが資本主義社会というものである。

むしろこの場合、その増えた分を企業が残らず吸収できるかどうかの方が問題で、実際それができないと資金の完全還流状態を保てず、経済は不調に陥り始めるわけだが、そうなるとこの場合、企業が前と同じペースで設備投資を行っているだけでは駄目ということになる( 第2 ステップ)。

つまりそれでは以前と同じ量の資金しか必要ではないことになって、増えた貯蓄の全部を吸収できないからであり、そのためここは企業に頑張ってもらって、設備投資などを前より増やしてもらい、それらを残らず吸収してもらわねばならないだろう。

そうなると次のステップとして、企業にそういう気を起こさせるには、金利を低くして資金を楽に借りられるようにしておかねばならないことになり( 第3 ステップ)、結局最初の話は、三つほどの連鎖を経てそのように関連してくるのである。要するにその3つのステップの最初と最後をつないで整理すると「社会の中で所得が上昇するほど、それに反比例して金利を低くせねばならない」という理屈になるわけで、その両者の間の右下がりの関係をグラフにしたのがこのIS曲線である。

(コメント)
完全還流状態を作り出すのが資本主義経済の目的のようだ。
完全還流を実現するためには貯蓄が高血圧のもとになるようだ。