(抜粋)
経済社会全体の中で、資金の縦方向の流れのメカニズムが第一のコアを、そして横方向の流れが第二のコアをそれぞれ形成していたのであり、そしていずれの場合も「金利」というものがそれぞれ別の形でその動きに影響を及ぼしていたということになる。要するに縦と横の二次元を同時に考えることで、初めて経済の中枢を支配するものの姿が表現できるわけで、実にそれこそが、経済世界の中でこれら二つが「コア」としてペアをなすことの最大の理由だったわけである。
二つのコアの話を眺めると、そこにはまさしくケインズ経済学そのものの姿が浮かび上がってくるという、驚愕の事実が明らかになるのである。要するにケインズ経済学の場合も、やはり投資資金の「縦方向」の流れを扱うI S曲線だけでは完結せず、「横方向」の流れを扱うL M 曲線と組み合わせることで縦横二次元を同時に視野に入れ、それによって初めて経済現象全体の真髄を表現することが可能となっていたというわけである。
(コメント)
金利は経済を説明すつた目には大きなパラメータで、2つを大きく影響する。
もう一度引用して整理してみた。
○借りる側の汲み上げポンプ
1つは人々の所得が増えれば当然ながら貯蓄も増えることになるが、それを無邪気に増えたと言って喜んでいられないのが資本主義社会というもので、その増えた分を企業が残らず吸収できるかどうかの方が問題で、実際それができないと資金の完全還流状態を保てず、経済は不調に陥り始めるわけだが、そうなるとこの場合、企業が前と同じペースで設備投資を行っているだけでは駄目ということになる。
つまりそれでは以前と同じ量の資金しか必要ではないことになって、増えた貯蓄の全部を吸収できないからであり、そのためここは企業に頑張ってもらって、設備投資などを前より増やしてもらい、それらを残らず吸収してもらわねばならないだろう。
そうなると次のステップとして、企業にそういう気を起こさせるには、金利を低くして資金を楽に借りられるようにしておかねばならないことになり、結局最初の話は、三つほどの連鎖を経てそのように関連してくるのである。
要するに「社会の中で所得が上昇するほど、それに反比例して金利を低くせねばならない」という理屈になるわけである。
○貸し側の資金提供ポンプ
いくつかの路線を比較すると、それらの中にはそこに乗った資金がそのまま企業の投資に向かうものと、そこに向かわず手近のループ線路上を無意味に周回し始めてしまうもの( 例えば狭い世界の中で過熱しているマネーゲームの投機などがそれに相当する) の二種類があることである。
この場合、もし資金が後者のルートに流れ込んでしまうと、せっかく資金量自体が豊富でも、その大半が遠くの企業まで投資に向かわずに近くを無意味に周回し始めてしまう。
そういう場合、資金が遠くまで届く割合が1 / 1 0 ぐらいに減ってしまうなどは日常茶飯事で、そうなれば勢いの側が2 倍3 倍あってもそれを相殺できない理屈になる。つまりこういう場合には先ほどのイメージと違って、それらがどの路線に乗るかという「横方向の路線選択」の重要性が資金量の勢いの力を上回ってしまい、経済全体に及ぼす影響も想像以上に甚大なものとなるのである。