小説『少女と光妖心』。 | 趣味部屋

趣味部屋

日常のことやホームページ(携帯サイト)の更新状況などをちらほらと…。

~ファイナルファンタジーⅩⅣ(FFⅩⅣ)~

キャラの紹介はこちら↓
『小説-FFⅩⅣ(ナルシャ編)』・設定。

こちらの続きとなります↓
小説『少女と妖魔心』。



ナルシャ視点

ヴォイドの中にある光り輝く異質な場所…アーファが作り出した光の国。
地獄のようなヴォイドと違って、草木が生い茂り、花が咲き誇る…そう、まるで天国のような場所だった。
妖異が光に弱いなら、敵が来ないだろうこの場所はまさしくアーファの聖域なんだろうね。
帝国の一般兵には念の為入り口に残ってもらい、帰り道の確保。
光の国に入ったのは私とお姉ちゃん、メルナ、ゼンといういつものメンバーとエオルゼアの英雄であるピピメアとシュリラ、帝国兵であるイーテナとミーンの計八人。

「メルナ、大丈夫?」
「問題無いのじゃ。実験を兼ねていたとはいえ、人間の肉体を利用したのは成功じゃのう。光に対する負担が殆ど無いのじゃから。石の効力もある。」

メルナから貰った光を喰らう黒い石。
名は特に無かったから安直に光喰石と命名。
…本当に安直過ぎる…。

「…いたわ。」

お姉ちゃんがそう呟き、立ち止まったのを見て皆も足を止めて先を見る。
お姉ちゃんの視線の先には一人の幼い少女。
私が先日見た子だった。

「うむ、この魔力…間違い無くアーファじゃ。」

メルナが名を呼ぶと少女はこちらを見た。

「あぁ、メルナ…!その力、漸く私の手に…。」

歪んだ笑みを浮かべるアーファ。

「何か…変?妖異だから?」
「うむ…ナルシャも変じゃと思うか?彼女の周囲には異様な雰囲気が漂っておる。ヴォイドではない何かの。」
「…まさか…!?」
「妾は気のせいじゃと思っておったが…違和感は間違っていなかったとナルシャの言葉で自覚したのじゃ。そして、こうやって改めて対峙し、注意深く見ると確信に等しい。そう、彼女は操られているか精神を狂わされておるようじゃ。」

アーファは妖異十二位の第二位に値する強大な力を持つ者。
そんな者を操るなんて…。

「…とにかく、倒せばいいんだよね?」

ピピメアの言葉に頷くゼン。

「いえ、アーファ…高位妖異を操るのであれば一つ危険性が出て来るのよ。」

そう言ってお姉ちゃんはメルナを見た。

「妾、か。」
「そう。第一位の妖異と言えども弱体化した今では操られる可能性があるわ。」
「じゃあ、どうするの?」
「答えは簡単よ。黒幕を討つ。」

黒幕を討つ、か…。
それはそうなんだろうけど…。

「これは推測だけれどもアーファを操るには一度術にかけただけで完了となるとは思えない。常に何かしら作用しているのではないかしら?であれば…ナルシャ。」
「えっ!?」
「あなたの科学で力の流れを辿れないかしら?」

私の科学で…。

「わかった!やってみる!」
「ありがとう。…では…。」
「!?下がって!」

アーファから光が放たれた。
ピピメアが戦闘に立ち、同時にシュリラの魔法がピピメアを包み込む。
盾で光を受け止めて防いだピピメアは平然としていた。
流石は光の戦士…神殺したるエオルゼアの英雄。

「他の者はアーファを弱らせ、時間を稼ぐこと。…いざ…。」

お姉ちゃんが発砲する。
銃弾はアーファの頭部を貫通した。

「私が前に行くよ!」

そう言ったのはピピメア。
あっと言う間にアーファの目の前まで移動し、怯んでいるアーファの身体を剣で貫いた。

「あれ?何これ…。」

その直後、アーファが破裂した。
眩しい。
煌めく光に思わず目を瞑る。
そして、光が弱まり…。

「…これがアーファ…!?」

硝子や結晶のように透明で妖精のような姿をしている存在がそこにいた。

「行くぞ!」

ゼンとイーテナも接近する。
前衛は三人。
私とお姉ちゃん、メルナ、シュリラ、ミーンの五人が後衛。
ミーンは巨大な盾を持っていて、私達を護るように前にいてくれた。

「力を…全てを平伏させる力を…!」

アーファは叫び、同時に光を放った。
一直線に飛んできた光をゼンとイーテナは左右に分かれて避ける。
でも、アーファの攻撃の先にいるのは私達だった。

「御安心を!ブレイド様とあなた様はこの私が絶対に御守り致します!」

メルナとシュリラの魔法…多分、防御魔法がミーンを包み込んだ。
そして、ミーンの盾に光が直撃する。

「ミーン!」
「大丈夫よ。彼女も優秀な帝国兵なのだから。」

お姉ちゃんの言う通り、ミーンは何事も無く光を受け切った。

「敵はこっちだっての!」

ピピメアがアーファを斬りつける。
でも、アーファはこっちを見ているようだった。
…そっか、彼女の狙いはメルナだけ…。

「仕方あるまい。ナルシャ、分析頼んだのじゃよ。」
「う、うん!任せて!」

メルナも前に。
やっぱり、アーファの視線はメルナに向いているように見える。
この隙に…。

「ライブラシステム、起動!」

電子ゴーグルを装着し、手元の機械を操作しながらアーファを見る。
彼女の身体から溢れ出る魔力が目視出来る。
この魔力は彼女自身の物だろうから不要なもの。
除外するために魔力解析を始める。
でも、アーファの魔力は今まで何度か見ていた。
過去のサンプルと比較し…うん、マッチした。
適合確率99.7%からして間違い無いと判断。
表情から彼女の魔力を外すと…周りには何も見えなかった。

「お姉ちゃん、何も見えないんだけど…。」
「…人の目では、かしら?」

人の目…肉眼…。
倍率を上げてみる。
…ダメ。
見えない。
ううん、そもそもそう簡単に目に見える物なの?
解析する。
目に見えない何かを。

「っ…。」

たまに飛んでくる流れ弾をミーンは受け止めていく。
戦いはメルナとアーファを中心に闇と光が幾度となく衝突していた。
ピピメア達の剣はアーファの身を削っていく。
皆頑張ってる。
私も頑張らないと…!

「ナルシャ。」
「えっ!?」

お姉ちゃんに突然声をかけられた。

「落ち着いて。」
「あ、うん…。」
「大丈夫よ。メルナは強いし、他の者達は戦闘狂が多い。戦いが長引いたところで問題は無いわ。」
「えぇ、この程度であれば命をかける必要も無くあなた様を御守り出来ます!だから、集中して大丈夫です!」

ミーンも微笑んでそう言ってくれた。

「うん!」

落ち着け、私。
私はナルシャ。
技術力なら負けないし、お姉ちゃんが私の力を望んでいるなら!

「全要素を確認。」

見落としは無い?
アーファに纏わり付いている物は本当に全て洗い出せた?
…ううん、まだあった。
微量ながら反応があったエネルギーらしきものがある。
何だろう、これ?
他の要素を全排除して確認。
…ダメ。
見えない。
あるはずなのに見えない。
どうして見えないの?

「…お姉ちゃん。」
「うん?」
「アーファの近くに行ってみたい。近くで見れば見えるかもしれない。」
「わかったわ。…ミーン。」
「承知!」

ミーンが歩き出す。
その後ろにお姉ちゃんと私、シュリラが続く。
アーファに近付く度に流れ弾も増える。
でも、ミーンの盾がとても頼もしかった。
私は落ち着いて謎の反応の正体を探す。
波…多分、信号のようなものだと思う。
この波が命令、もしくは精神を狂わせているものだとしたらこの反応の先に…。

「光よ…光よ…。」

アーファの身体に光属性の魔力が集中する。

「ホリエストホーリー!?皆、私の後ろへ。」

ピピメアがミーンの前まで来て盾を構える。
そして、彼女から蒼い魔力が放出され、それは翼へと形を変えて私達を包み込んだ。
そして、アーファの光が全てを飲み込み、私は咄嗟に目を瞑った。





清き光。
妖異が使うにしては本当に澄み切った光だった。
全ての闇を浄化する光。
聖なる光は時として生物の害となる。

「全く、無茶をするわね。」

光が消える。
目を開けるとピピメアを支えているお姉ちゃんが。
まさか、あの光を一人で受け切ったの…?

「シュリラ!」

と私が言う前に彼女は既に動いていた。
お姉ちゃんは気絶したピピメアをシュリラに渡す。

「…ナルシャ、自分の役目を忘れないで。」
「でも、お姉ちゃん…。」
「ピピメアは大丈夫だから。」
「そうじゃ。なればこそ、妾等は妾等の成すべきことを遂げるのじゃよ。」

メルナに頭を撫でられる。

「…うん!」

解析を再開する。
アーファは多大な魔力を消費したからか、分析画面上の光が弱くなっていた。
でも、急速に回復してる。
急がないと第二波が来るかもしれない。

「…あれ?」

今まで気付かなかったけど、アーファの身体から一本の糸が出ているのが見える。
糸が続く先を追うと頭上に繋がっているのがわかった。
そして、そこにあったのは…。

「穴がある!」

頭上の高い位置の空間にある小さな小さな穴。

「…どこじゃ?」

メルナは見えていないみたい。

「そこね。」

お姉ちゃんが発砲する。
銃弾は穴に直撃…したと思ったら消えた。
穴に飲み込まれた。

「妾も確認したのじゃ。見たところ…ヴォイドゲートじゃのう。…いや、正確には似せたもののようじゃ。」
「アーファから糸が出てて、あの先に繋がってるの。…やっぱり。糸は信号のようなものが流れてるみたい。」
「…糸は見えぬのじゃが、恐らく正解であろう。」

メルナが闇の球体を放つ。
その闇が穴に触れると空間に魔法陣が展開された。
そして、魔法陣が砕け散り、魔法陣と同じ大きさの穴が空間に開いた。

「…さて、妾はここでアーファと戯れておこう。」
「では、私とナルシャ、ゼンで行くわ。回復役も欲しいところだけれど、仕方が無いわね。」
「ならば、妾の欠片を連れて行くがよい。元よりこれに案内させるつもりだったのじゃから。」

メルナは闇を凝縮し、闇はやがて大きな鳥の姿となった。

「ありがとう。すぐに終わらせるわ。」
「うむ。」

お姉ちゃんとゼンが乗り、私も慌てて後に続く。
三人乗ったところで鳥は羽ばたいて離陸。
凄まじい速度で上昇してヴォイドゲートに突撃した。





糸が続く闇の門を抜けると…そこは機械に包まれた閉鎖的な空間だった。
その中心には浮かぶ球体。
それ以外は無かった。

「アラグの技術…。」
「お姉ちゃん、糸があの球体から出てる!」
「なら、間違い無いわね。」
「私がぶった斬る!」

ゼンはメルナの鳥から飛び降りた。
落下しながら大剣に雷を纏わせ、勢いをそのままに武器を振り落ろす。
大剣と球体が接触する…けど、球体は傷一つ負っていない。

「ゼンの攻撃が効かないなんて…!」

私達も鳥から降りる。
メルナの黒い鳥は姿を変え、小鳥になって私の肩に乗っかった。

「まだまだ!」

次は炎。
でも、やっぱり通じてない。

「…ナルシャ、あの球体が張っている防御障壁の属性はわかる?」
「属性…?」

球体を調べる。
確かに防御障壁に包まれていて…。

「あ、炎属性!」
「くっ…やはりそうか…。ならばっ!」

ゼンが再び武器を振るう。
次は風属性。
しかし、大剣が球体に直撃した時には防御障壁は風属性に切り替わっていた。
処理と反映が速い。
でも、試したこともある。
短銃を取り出す。
これは一発しか銃弾を詰められない為、連射は出来ない。
でも、魔法弾を撃つことが出来る。
私が取り出した銃弾は地属性。
銃弾を込めて銃口を球体に向けた。

「ゼン、もう一回お願い!」
「わかった!」

ゼンが風を帯びた大剣を振るい、球体と衝突。
防御障壁は間違い無く風属性だった。
そこに地属性の弾丸を撃ち込んだ。

「…嘘でしょ…!?」

銃弾が弾かれた。
防御障壁を確認すると銃弾が当たった箇所付近だけ地属性に変わっていた。
何て器用なことを…!

「これはどうかしら?」

お姉ちゃんも発砲。
属性を付与していない銃弾。
でも、その銃弾は弾かれた。

「なかなか高度な防御障壁のようね。」
「お姉ちゃんは何でそんなに落ち着いてるの?攻撃が通じない相手なんだよ。このままじゃ…。」
「何を言っているのよ。私達の勝利は確定しているわ。」

確定…?

「どうして…?」
「ナルシャがいるからよ。」
「…えっ?」
「アラグの機械であれ、ナルシャの技術力であれば問題は無いと私は思っている。…悪い言い方をすれば、ナルシャがこの状況を打破出来なければ全滅するわ。」
「…お姉ちゃんってば狡い人。」
「…無論、ナルシャの解読前に私とゼンのどちらかがやられても厳しいでしょうね。」

突然、警告音が鳴り響く。

「侵入者ヲ排除。侵入者ヲ排除。」

この閉ざされた空間の頭上の一部が開き、そこから無数の虫みたいな四足で機械が溢れ出てきた。
また、球体の周囲に光属性の魔力が集まり、形を成す。
その姿はアーファと一緒だった。
長期間に渡りアーファの情報を得ていたのなら再現することぐらい簡単なことなのかもしれない。

「ゼンは球体を。私が雑魚を殲滅するから。」
「了解!」

お姉ちゃんは四本のガンブレードを取り出し、交換しながら発砲していく。
…凄い…。
一発の銃弾で一体の機械兵器を確実に破壊していく。
それとゼンは偽アーファと互角の戦いをしていた。
…よく見ると、ゼンの身体には黒い模様のようなものが浮かび上がっていた。
その魔力は妖異のもの。
うん、メルナのものだった。

「半妖、ね…。」
「五割も無く三割。」

お姉ちゃんとゼンの会話。
余裕そう。
もしかしたら、余裕を装ってるだけかもしれない。
私に心配かけない為に。

「…よし!」

球体の解析に入る。
アラグの機械は私も漁ったことがある。
最近では帝国でも他の国でもアラグの技術の解析はかなり進んでいて私もかじったことはあった。

「…妖異捕獲システム、だったのかも。」

アラグはバハムートや三闘神等、蛮神を捕らえていた過去がある。
であれば、妖異を捕獲するシステムを開発していたとしてもおかしくはない。
確か、アラグの皇帝は妖異十二階の第一位の暗闇の雲と契約し、力を得たはず。
より強き力を欲していたアラグ帝国ならその暗闇の雲自体を支配し、利用しようと考えてもおかしくはないと思う。

「っ…光属性だけではないのが厄介だ…。」

ゼンの攻撃は通らない。
球体が模した偽アーファはゼンの攻撃属性に合わせて属性を変化させる。
アーファは光属性のみだったからかなり厄介なことになってるんだと思う。
…でも…。

「見えた。」

セキュリティーを発見。
多分、この先が入り口。
…プログラムは…古い。
確かセキュリティーに穴があったはずだからデータベースと照合して…あった。
帝国が培ってきたアラグの技術研究が凄く役立ってる。
セキュリティーを無効化して…。

「えっ…?」

四足の機械が一斉に私を向いた。
気付かれた…!?

「続けて。」

迫ってきた機械達が一掃された。
目の前にはお姉ちゃん。

「ナルシャは私が護るから。」
「お姉ちゃん…。」
「…本気を出すわ。長時間は戦えないかもしれない。」

お姉ちゃんが動く。
一瞬にして数十の四足機械が破壊された。
お姉ちゃんと四本のガンブレードがまるで宙を舞うように動き、その度に敵がスクラップになっていく。
…これが『ブレードダンサー』…。
って、見取れてる場合じゃない!
かっこいいけどそれどころじゃない!
…でも、私の恋人って凄くかっこいい…。

「ナルシャ、手が止まっている!」
「あ、ごめん!」

ゼンに怒られた。
作業を再開する。
でも、ここまで来たらもう少しだった。
まずは…これ。
アーファを乱す信号を止める。
偽アーファを確認してみると糸が消えた。
これで本物のアーファを救えたはず。
次は防御障壁の設定。
色々と細かな設定が入ってるけど…これで…。

「ゼン、闇属性で攻撃して!」
「了解。」

ゼンは闇属性…ダーク系の魔法を大剣に付与し、振るう。
その一閃は偽アーファを鋭く斬り裂いた。

「大成功!今、相手は光属性にしてあるから!」
「わかった。闇で攻める。」

一気に攻勢に出るゼン。
次は…周囲の四足機械をどうにかしないと…。

「ナルシャ。」
「えっ!?ど、どうしたの、お姉ちゃん?」
「私のことは後回しでいいわ。」
「…でも…。」
「問題無い。」

と、一瞬私を見たお姉ちゃんは無表情で…恐怖で鳥肌が立った。
何か…普段のお姉ちゃんとは全く違っていて凄みがあった。

「…うん…。」

あれが本気のお姉ちゃん…。
知らなかったけど、お姉ちゃんはもっと幼い頃に蛮神を撃破したりと幾つもの死線を潜り抜けてきた猛者。
その証拠に…。

「ふぅ…。」

立ち止まって溜め息を吐くお姉ちゃん。
四足機械は全て駆逐されていた。
でも、頭上ではまだ足音のようなものが聞こえる。

「お姉ちゃん、球体の機能は多分掌握出来たよ。どうすればいい?」
「機能停止を試して。」
「わかった!」

すぐさま試す…けど、ダメ。
多分、もっと上位の権限が必要。
一応パスワード解析出来ないか試しておこう。

「表情からして無理だったかしら?であれば、戦闘に関する機能を全て停止して。」
「わかった。…!?」

突然警告音が鳴り響く。

「ごめん、私が何かやらかした?」

ゼンが私に聞く。
球体は兵器とは言え機械。
ログ等は確認出来るはず。
…あった。
解読してみると…って、嘘…!?

「本体に深刻なダメージを受けた為自爆機能が起動…!?」

よくよく見てみると確かに球体にはゼンが付けたであろう深い傷が。

「恐らく、防御障壁が突破されることを想定されていないのかもしれないわ。だからこそ、突破した強敵が現れた場合は自爆するように設定されていたでしょうね。敵を道連れ…いえ、仮に無理だったとしてもこの兵器を敵に渡すことなく処分出来るのだから。」
「お姉ちゃん、そんな解析はいいから!」
「…私達が助かる道は一つよ。ナルシャの支配下におけないのであれば、この空間から逃げ出すこと。爆発を防げたとしても…生き埋めになって終わりね。」

そんな…!?
…でも…。

「お姉ちゃんと一緒ならそういう最期でもいいかもね。」

お姉ちゃんに近付き、正面から抱き付く。

「あなた達みたいな恋人同士ならそれでいいかもしれないが、私は嫌。見捨ててでも生きて帰るから。」
「…手が無いとは言っていないわ。」

えっ?
えぇっ!?

「メルナ、聞こえるかしら?」

私の肩にいる鳥に話し掛けるお姉ちゃん。
そっか、この鳥は…。

「こちらは終わったわ。ただ、急いで脱出しないと爆発に巻き込まれそうなのよ。…助けてくれないかしら?」
「…アーファが大人しくなり、そちらのエネルギーが増幅していくのを確認したのじゃ。少々お待ちを。」

闇の鳥は私の肩から飛び立ち、宙で姿を変えていく。
やがて、私の倍ぐらいの高さをを誇る人間の女性のような姿に。
でも、身体は真っ黒な上、もやもやっとした闇を纏ってるし…何より顔が印象的だった。
目しか無い。
その目も右目は普通だけど左目は…目なの?
どこを見ているのかわからない、描かれたような目が五つ縦に並んでいる。
…メルナを見ているだけで気が狂いそうな気分になった。

「それが妖異メルナ、かしら?」
「いかにも。…すぐに終わる。」

メルナの姿がまた崩れて闇と化し、私達を飲み込んだ。





気が付くと…布団の中にいた。
えっ、何で?

「あら、目を覚ましたようね。」

私の顔を覗き込んだのはお姉ちゃん。
外は…もう日が落ちていて、時計を見ると夕飯時だった。

「私、一体…?」

身体を起き上がらせる。
問題は特に無さそう。

「相当疲れていたようね。メルナが助けに来た時に緊張が解けたのでしょう。」

何か…ださい。
一人だけ気絶って…。
一般人だから仕方が無い、なんて言われそう。

「あの後どうなったの?」
「何事も無いわ。元凶のアラグ兵器の洗脳が解けた後、アーファは正常に戻っているから。メルナやダガドがケアしているようね。双蛇党と帝国軍は既に帰還済みよ。怪我人は出たようだけれども死者数は零。素晴らしい戦果ね。」

死者数は零…そっか…。

「死者が出てもおかしくはない戦いだったんだよね…?」

人間と妖異との戦争だったんだから。

「…えぇ、そうよ。尤も、死の危険性の無い戦争なんて無いもの。競技ならともかく、これは…間違い無くアーファとの戦争だったのだから。元凶は違っていたとしてもね。」

今回は無事に戻ってこれた。
でも、それはただただ幸運だっただけかもしれない。

「さて、夕飯は用意してあるわ。冷めない内に…。」
「ねぇ、お姉ちゃん。」
「うん?」
「今晩抱いて、って言ったら…してくれる?」
「…えぇ、勿論よ。」

お姉ちゃんの顔が私の顔に近付き、そして…。





『少女と光妖心』・終わり





ナルシャ編・完






後書き

と言うことで、駆け足気味ではありましたがナルシャ編は終わりです。
おまけの話はありますけれども。



メルナ

本来の姿は人に似た何か。
化け物慣れしていない者が見れば発狂する可能性がある。
闇属性の魔法と回復を得意とする。

アーファ

アラグの機械によって狂わされていた。
本来戦いを好む性格ではなく、強い力を持ちながらもこっそりと暮らしていた。
妖精やエレメンタルに近い存在。

妖異捕獲システム

アラグ帝国時代に作られたものだったが上手く制御出来ず、失敗作として隔離及び放置されていた。
長い時を経てエラーが発生し、バグった人工知能が勝手に動き出した結果アーファを操ることとなってしまった。