小説『魔法の欠片』。 | 趣味部屋

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~ファイナルファンタジーⅩⅣ(FFⅩⅣ)~

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『小説-FFⅩⅣ』・設定

2018/7/7
修正、設定変更。



ゼーケ視点

二人のリテイナーを連れてエオルゼアのグリダニアに滞在してから早いもので数ヶ月。

「お茶をお持ちいたしました。」
「ありがとう。」

お茶を持ってきてくれた一人の少女。
私の旅の仲間の一人、リユ。
リュエルレンナ。
普段は何故かメイド服を着ている。
このグリダニアの生活も長くなったものね。
家も買い、今はこうして寛ぐことも。
そして…。

「おっ!ねえっ!さま~!」

家の扉が開かれ、勢い良く入ってくる少女。
ヒマワリ。
彼女も私の旅の仲間。

「誉めて!そして御褒美を!賞金首のSランクモンスターを倒してきました!」

勢いのまま私に飛びかかってくるヒマワリ。
お茶を持ったまま軽く避け、ソファーにダイブしたヒマワリの上に座る。

「相変わらず座り心地は悪いわね。」
「私は最高です!御姉様~!」

ただの変態でもある。

「倒したと言っても他の冒険者に協力してもらって、だよね?」
「その辺りは勘弁してよ、レンナ。報酬もたんまり貰ってきたから。」

私に踏まれたまま報酬が入った袋をリユに手渡すヒマワリ。
袋は結構大きかった。

「勝手に出回って仕舞いには昼食に間に合わないなんて。すっかり冷めてしまった。」

家事全般もこなしているリユは特に料理のことは煩い。

「それは…本当にごめん…。」

一度、普段殆ど愚痴も言わないリユが本気で怒ったことがある。
それが料理のことだった。
ヒマワリの中でもトラウマになっているのかもしれない。

「ヒマワリも危険なモンスターを放置したくなかったのでしょう。大きな犠牲が出る前に退治出来て良かったわ。」
「そうやって甘やかすからヒマワリは…。」
「無事で何より。さぁ、早くご飯を食べなさい。午後は…。」

と、扉が強くノックされた。

「だ、誰かいないか!?」

慌ただしい。
何かあったのだろうか?

「どうかしましたか?」

リユが扉を開ける。
外にいたのは数人の男女。
見た感じ地元の人のようね。

「ま、街にモンスターが!」
「モンスターですか…?」

リユがこちらを見る。

「行くわ。二人とも準備して。」

立ち上がる。
街にモンスターなんて珍しい。
街には多くの兵士がいる。
熟練の兵士も。
突撃してくるにはリスクが大き過ぎる。
モンスターがそんなリスクを考えるかどうかは不明だけれどもね。





三人ですぐに現場に向かった。
そこにいたのは巨大な浮遊眼種。
そして既に一人、小さな女性のララフェルの騎士が戦っていた。
素早い動きで翻弄しているけれど、相当苦戦しているようね。
彼女の剣では大して傷を付けることが出来ず、彼女自身は既に傷だらけだった。
盾を駆使し、敵の魔法を紙一重で回避しているものの後一撃直撃を受ければ…。

「あっ!さっきのSランク!それと、さっきの冒険者!」
「回復を。」
「う、うん!」

ヒマワリがララフェルに回復魔法を施す。
これで暫くは大丈夫なはず。

「討伐されたモンスターの番が怒って復讐にでも来たのかしら?何にしても…野放しにしておくわけにはいかない。」

壁役はあのララフェルに任せるとして、私は討伐するだけ。

「あなたに相応しい召喚獣は決まったわ。」

右手を上に掲げて、掌を天へと向ける。

「…出でよ、ラグナロック。」

その右手を振り下ろす。
同時に浮遊眼種の頭上から巨大な大剣が落ちた。
浮遊眼種の巨体を簡単に貫いたその剣は到底人が扱える大きさではない。
そして、大剣は消滅と同時に輝き、光の中に消えた浮遊眼種。
一つの大きな結晶だけが残った。

「リユ、鑑定を。」
「はい。」

ラグナロックは対象を別物体へと変化させる幻獣。
強力な力を持つ幻獣だけれども契約の制約上、頻繁に呼ぶことは出来ない。

「ヒマワリ、そのララフェルは?」
「大丈夫です、御姉様!致命傷は無かったので!」
「それなら良かった。」

一件落着のようね。

「な、ななな…っ!?」

驚いた表情で私を見ているララフェル。
よく見るとまだ少女と呼ぶぐらいの幼さかもしれない。
ララフェル族は大体幼い見た目だから違いがわからないのだけれど。

「驚いた?御姉様は強いでしょ?」
「つ、強いも何も、な、何なの!?今の何!?」

この少女は…光の戦士ね。
ハイデリンに祝福されたエオルゼアを救う光の戦士。

「…召喚獣よ。」
「しょ、召喚獣…!?」

混乱しているララフェルの少女。
このエオルゼアにも召喚魔法は存在する。
蛮神を模した小型召喚獣の使役。
消費が少なく、一度召喚さえしてしまえば長時間存在させ続けることが可能である為、非常に効率がいいのかもしれない。

「遠い世界から来たから。エオルゼアの民から見たら珍しいでしょうね。」
「…あなたみたいな実力者が一緒に戦ってくれたら楽なのに。」
「私達は部外者だから。これはエオルゼアに生きる民とハイデリンに祝福されたあなた達光の戦士の物語。アシエンはあなた達にお任せするわ。」

そう、私がどうこうしていい話ではない。
制約上出来ないとも言える。

「どうしてアシエンのことを…?」
「さて、どうしてかしらね?」

深く知っているわけではない。
戒律の主たるゾディアークを復活させようとしているのを知っているぐらい。
ゾディアーク…確かにあれは顕現してはならない存在。
私が知るゾディアークとは別なのでしょうけれど、戒律王と称されるその力は実に恐ろしいもの。
エオルゼアでの顕現が起こらないことを祈るばかり。

「…私はピピメア。あなたは?」

名乗るナイト。

「ゼーケ。そこの変態がヒマワリでメイド服はリュエルレンナ。」
「ゼーケ…覚えとく。」

何かを察したのかしら?
悪い意味で覚えられたのかもしれない。

「覚えなくていいわ。じゃあね。」

軽く手を振り、背を向けてこの場を去る。
目的が達成した以上、ここにいる理由も無い。
午後には午後で予定があるのだから。





ヒマワリとリユを連れて双蛇党の本部へ。
双蛇党とはグリダニアのグランドカンパニー。
グリダニアを護る騎士達である。
今日は依頼を受けに来た。
ここには日々グリダニアの住人から依頼が集まってくる。
モンスター討伐もあればどうでもいいような内容まで。
戦闘であれば光の戦士が依頼を受けると思う。
彼等ならほぼ確実に成功させるから。

「…これにするわ。」

漁っていてふと目に付いた依頼。
内容は森で無くしたぬいぐるみを探すというもの。
探し物を見付けるのは案外骨が折れるもの。
でも、報酬が少ない為人気が無い。

「どうして?」
「何となくよ。」
「それぐらいでしたら私達が…。」
「いえ、私がするわ。あなた達は別のをお願い。」

それだけ言い、依頼を持って歩き出す。
身勝手だけれど、これは私が選んだものだから。





早速、依頼者が住む家へ。

「お姉さんが探してくれるの?」
「えぇ。」

幼い少女。
傍らには母親がいる。

「申し訳ございません。高々ぬいぐるみ一つの為に…。」
「お気になさらず。でも、一つだけ確認させて。そのぬいぐるみは大切なもの?」
「うん!お母さんが買ってくれたの!初めてのぬいぐるみ!モーグリの可愛いの!」

母親から貰った初めてのぬいぐるみ、か…。

「ですが、無理はなさらないでください。ぬいぐるみはまた買えば…。」
「それではダメだと思うから。この子にとっては。では、また。」

手を軽く振り、足早にその場を去った。
家族…いいものね。
私には両親がいなかったから。
そして、ヒマワリとリユにも今はもう両親はいない。
彼女達の町が襲撃された時に二人以外はもう…。
あの日私が偶然町に訪れていなければ二人もその時に亡くなっていたと思う。
両親を失った二人。
果たして私は家族代わりになってあげられているのだろうか。
家族がいないこの私が。





黒衣森に着き、魔法を発動させる。
探索魔法。
周辺で落ちているモーグリのぬいぐるみを探し出す。

「…見付けた。」

時間はかからなかった。
兵士でない一般住民が移動出来る範囲なんて限られているから。
すぐに魔法が示す場所へ行くと…そこにあったのはモンスターの住処だった。
ウルフ種の住処。
巨大な洞穴の中に彼等はいた。
ぬいぐるみの反応はこの奥。
持っていかれたみたいね。
それだけわかればぬいぐるみがどうなってしまったかなんて容易に想像が付く。
でも、だからこそ行かなければならないと思った。

「…歓迎されているわね。」

ウルフ達が出て来て私を囲んだ。

「安心して。あなた達に害を与えるつもりは無いわ。」

私は丸腰。
しかし、彼等は警戒し、唸る。
隙あらばいつでも飛びかかってくるだろう。
しかし、この警戒…普通ではないように思える。

「この奥に探し物がある。あなた達が持って行ったところ悪いのだけれど、返してもらえないかしら?こちらの用件はそれだけよ。」

言葉が通じているのかも怪しい。
それから数分、私達は動かなかった。
彼等が通す意志が無いのがよくわかった。
けれどもこちらも退く意志なんて無かった。
仕方が無い。

「その意志、調べさせてもらうわ。」

自分を中心に足元で魔法陣を展開させる。
読心魔法。
覚り魔法とも言われる。
相手が獣であっても心が読める。
非常に便利な魔法。

「…そう。」

心を読んだ。
奥にはまだ幼い子がたくさんいるらしい。
でも、中に一匹酷く弱っている子がいた。
その子を心配している大人のウルフ達。
ならば、私が取るべき道はただ一つ。

「私が治療するわ。」

専門家というわけではない。
しかし、私が出来ることがあるのであればしないわけにはいかなかった。
彼等に言葉は通じない。
だから、答えを待たずに歩き出す。
ウルフ達に一斉に吠えられるが気にはしない。
目の前のウルフの横を抜け、洞穴に急ぐ。
しかし、当然のことながら背後から襲ってくるウルフ達。
我が子を守ろうとするのは当然のこと。

「バニシュ。」

姿を消す魔法。
急に消えた私を探し、あたふたするウルフ達を横目に洞穴の奥へと進んだ。





バニシュや読心魔法を解除し、ひたすら奥へ。
洞穴とは言ったものの中は長く、広く、様々な道に分かれていた。
知らぬ者が奥まで行けば戻ってこれないだろう。
目的のぬいぐるみの位置がわかっているので、今回迷うことは無いと思う。
戻る時はテレポでいい。
問題は弱った子供をどうやって見付けるか。

「…声…?」

ウルフの鳴き声。
吠えている。
方角的にはぬいぐるみと同じ方向。
…なる程、一緒である可能性もあるわね。
ぬいぐるみは玩具なのだから。





鳴き声がする場所に辿り着くとそこには大人ウルフが数匹と子供が数十匹いた。
大人ウルフは母親だろうか、私の姿を見付けると同時に警戒する。
子供はそれでも無邪気に遊んでいる。
しかし、片隅で動かなくなっている子供がいた。

「あの子ね。」

瞬間移動の魔法…ダテレポを使用し、子供の傍へ。
同時に結界魔法を施す。
結界に遮られ、私に吠える母親には悪いけれど、邪魔されるわけにはいかない。

「…酷く衰弱している…。」

子供は呼吸するだけで精一杯で酷く苦しそうだった。
私は医療の専門家ではない。
しかし、出来ることをするつもり。
分析魔法…ライブラの亜種魔法を使用し、問題を特定する。
…どうやら、毒の粉を受けたらしい。
肉眼ではわからないぐらい少量の粉がこの子の毛に付いているみたい。
量と毒の種類にもよるだろうけれど、大人が平気な量だとしても子供が受ければ事情が違う。

「ポイゾガ。」

毒特効魔法の上位。
これで治るはず。
魔法を照射し続けていると段々苦しみが和らいでいく。
もしかしたら命を害する程の量や毒ではなかったのかもしれない。
それでも一刻も早く苦痛から解放してあげたかったから。

「…これで完了ね。」

分析魔法で完全に毒が抜けたのを確認した。
毒が身体の内臓の一部を傷付けしまっており、回復魔法で癒やす。
専門家ではない私には限界があるが、多少は効果があるはず。
この子からも苦痛の表情が無くなり、安らかに眠っていた。
もう大丈夫だと判断し、結界を解いて離れる。
子供に駆け寄る大人達。

「お大事に。」

私は近くにあったボロボロのモーグリのぬいぐるみを手に取る。
子供達の遊び道具になっていたのだと思う。
適当に買っておいたよくわからないぬいぐるみを代わりに置き、テレポを発動して帰還した。





テレポの先は私達の家。
つまりは居住区。
家の中には戻らず、そのまま依頼者の家へ。





家の扉をノックする。
出て来たのは母親だった。
その方が都合がよかった。

「見付けてきたわ。」

無惨な姿となったモーグリのぬいぐるみを見せる。

「ちょっと見せて頂戴。」

ぬいぐるみの足の裏を見る女性。
私も見てみると両足の裏に一文字ずつ文字が縫われていた。
あの子のイニシャルなのかもしれない。

「確かに娘のものです。このぬいぐるみはどこに?」
「ウルフの巣の中よ。」

子供達が遊んだとは言え、あの牙と爪の餌食となったら当然なのかもしれない。

「このまま渡すわけにもいかない。」
「そうですね。やっぱり、処分して新しいものを…。」
「いえ、これでなければダメだと思うわ。あの子にとってこれが特別なのよ。」

このぬいぐるみは彼女にとって数十万ギルのぬいぐるみよりも価値がある物だと思う。

「良ければ一日お借りしたい。繕い、洗濯して返そうと思う。」
「…本当に娘のことを思ってくださっているのですね。あなたの優しさがよくわかりました。ですが、その作業は私が行います。母であるこの私が。御安心ください。これでも昔、少しだけではありますが裁縫師として働いていたこともあるのです。」
「そう…わかったわ。」

ぬいぐるみを渡す。
裁縫師…なる程、あの足の裏の文字も…。

「では、私はこれで。」

一礼し、家を後にする。
後は双蛇党へ報告するだけ。





双蛇党本部へ。

「依頼、完了したわ。」

依頼書を受け付けへ渡す。

「かしこまりました。確認し、後日報酬をお渡しいたします。」
「お願いね。」

これで今回の仕事はお仕舞い。

「あ、ゼーケ殿。最近、冒険者狩りをしている悪党がいるのは御存知ですか?」
「初耳よ。」
「気を付けてください。名のある冒険者も命を落としていることからなかなかの手練れだと思われます。」
「わかった。出会ったら捕獲しておく。」

冒険者には大金を持っている者がいる。
ちまちま稼ぐぐらいならその者を殺めて奪った方がいい…ある意味効率的と言える。
人道とかけ離れていることさえ除けば。
しかし、なかなかの実力者、ね…。
…冒険者かもしれない。
はたまた光の戦士である可能性も…。

「考えるだけ無駄ね。」

誰が来たとしても返り討ちにしてあげればいいだけの話。
私にはそれだけの力があるのだから。





家に帰ると…ヒマワリがソファーの上でうなだれていた。

「お帰りなさい。」
「ただいま。ヒマワリはどうしたの?」

夕飯の準備をしているリユに問う。
美味しそうな匂い。
今日は焼き魚なのね。

「任務の途中に何者かに集団で襲われたのです。ヒマワリも決して弱くはないと思いますが、ヒマワリと同格の相手が数名いました。乱暴されかけていた女性冒険者を数名助けることが出来ましたが、何とか逃げられたような形となってしまいました。敗走です。それがショックだったようです。」
「そう。あなた達は何ともないのね?」
「はい。問題ありません。逃げることに関しては誰にも負けません。」

リユはアサシン。
影に生きる暗殺者。
故に人から姿を眩ますのは得意。

「ヒマワリ、素晴らしいわ。被害者を助けたのよね?」
「…慰めはいらないですよ、御姉様。勝てなければ意味が無い。あの悪党どもはまた悪事を働く。…新たな犠牲者が出ちゃう…。」

かつて自分の故郷を滅ぼされた彼女にとって理不尽な襲撃者ほど許せないものはないのかもしれない。

「…今度同じことがあったら私を呼んで。わかった?」
「でも、御姉様に頼ってばかりで…。」
「自分のプライドと他人の幸せ、どちらが大切?」
「…わかりました。」

起き上がるヒマワリ。
目が真っ赤に充血し、泣いていたのがわかる。

「まさか、身内まで被害が及んでいるとはね。」

今日聞いたばかりの話なのに。

「…ゼーケ様…?」
「どう復讐して差し上げようかしら?」

許さない。
絶対に。
だからこそ見付けた後の復讐が少し楽しみだった。

「御姉様、顔怖い。」
「酷いわね。」

少し笑っていたのは事実だけれども。
しかし、集団か。
一つのフリーカンパニーによる犯行…?
であれば大した組織ね。
端から悪の為の組織だなんて。
それに所属する冒険者も冒険者だけれども。
…何にしても、困っている者を助けないと。





『魔法の欠片』・終わり




後書き

と言うわけで、第一弾。
第三話ぐらいまでの展開は決まっているようで…決まっていないという感じに。
ゲーム本編のメインストーリーには一切絡まないキャラですからね。

※追記
2018/7/7
そう言えば、第一弾はこんな感じでしたね。
なお、元々ゼーケはある人物を探していた、という設定があったのですけれどもそれを全部消しました。
他の話もそうする予定です。