『慰安旅行』・2。 | 趣味部屋

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~ファンタシースターポータブル2(PSPo2)~

前回はこちら↓
『慰安旅行』・1。



そして、頭上のテンゴウグに狙いを定め、放つ。
攻撃に気が付いたテンゴウグはふわりと軽く矢を避け、攻撃をしてきたキゼを見る。

「大きいのは私が相手をする。皆は他のを頼む。」

キゼの指示に元気良く返事する生徒達。
狙いをキゼに定めた突然変異体は彼女に向かって急降下してきた。

「単純だったのが唯一の救いね。」

弓を仕舞い、再び大鎌になる杖を取り出した。
キゼを足で押し潰そうと着地したテンゴウグから離れ、武器を構えて対峙する。

「…やはり、突然変異で間違い無い。」

牙を向けてくる突然変異体。
それは鋭く、武器さえも噛み砕いてしまうかもしれない。

「粋がっていたのに負けたりしたら格好悪いわね。尤も、Keizを負かすまで負けるつもりも無いのだけれど。」

デューマンの力を解放させる。
そして、一瞬にしてテンゴウグの背後に回り、大鎌を振り上げた。





座り込んでいるキゼの回復を続けるマナ。
彼女の家族である少女達が二人を護るように戦っている。

「手間かけさせちゃってごめんね?」
「いえ、クェジさんが頑張ってくださったおかげでここで食い止めていられるんですから。」
「キゼと比べたらまだまだなんだけどね。でも、やっぱり大人しくしてるのは性に合わない。回復ありがと。もう大丈夫だから。」

勢い良く立ち上がり、大きく背伸びをする。

「大丈夫ですか?」
「これでもワーンさんの弟子!ちょっとはいいところ見せないとね!」

クェジが取り出したロッドはEPD・Mark:Ⅵ。
EPD…エターナルサイコドライブの派生型の試作品である。
言い換えれば、彼女自身も被験体となっている。

「危ないからちょっと離れてて!…ラ・バータ!」

ロッドを振るう。
ラ・バータは氷属性範囲テクニックであり、対象を凍り付けにさせるもの。
しかし、彼女が放ったテクニックは数十体のテンゴウグを凍らせ、氷山を出現させた。

「凄い…!」
「その分、消費が激しいんだよね。」

ロッドを消し、再びその場に座り込むクェジ。
一度しかテクニックを発動していないものの、その消費した力は莫大なのだろう。

「恐ろしい武器ですね。」
「恐ろしいのはこんな狂った武器を開発した研究者達。被験体なんて消耗品扱いなんだろうし。ほら、来たよ。」

凍り付けを免れた数体がクェジに襲い掛かってくる。

「させない!」

クェジを庇うように立ち塞がり、紫水晶が飾られたロッドを取り出した。

「眠り逝く世界へ…マナノラ・メギド!」

ロッドを真上と掲げ、テクニックを発動させる。
襲い掛かってきたテンゴウグ達の中心に巨大な闇の塊が出現し、触れたテンゴウグを巻き込んで消滅させる。

「おちびちゃんなのに凄いんだね?」
「ちびは余計です!」

続け様に背後に向かってメギド。
二人の背後に迫っていたテンゴウグを闇の球体が飲み込んだ。

「これで大方片付いた…?」

辺りを見回すクェジ。
まだ戦いは続いているものの、戦闘が可能なテンゴウグは殆ど残っていない。

「後は…。」

最後に突然変異体と戦っているキゼを見る。

「わ、私にはあれを援護出来るとは思えません!」
「しなくていいよ。キゼもきっと嫌がるだろうし。」

白熱とした戦いがそこには繰り広げられていた。





森の中でテンゴウグの群れを一掃したKeizとmomo。
連戦だったとは言え大したことはなかったのか、傷一つ負っている様子は無い。

「報酬が増えた!」
「良かったですね。」

テンゴウグの群れを撃破したことが報酬に加算された。
最近テンゴウグの数が増えたことが問題になっていたようで、元々仕事内容に含めるか悩んでいたらしい。

「何か奢ろっか?」
「いえ、私は仕事中ですので。」
「そうだった。じゃあ、私も観光しちゃおうっと。」
「…御自由に。」

旅館へと向かう二人。
しかし、Keizの歩きにはどことなく焦りが見えた。





テンゴウグの突然変異体の攻撃を華麗に回避しつつ攻撃を与えるキゼ。
しかし、テクニックが殆ど通じていないように見える。

「…ギ・メギド!」

ロッドを振り下ろし、キゼを中心に闇が広がる。
闇は突然変異体を飲み込むが、その闇を突っ切ってキゼに迫ってきた。
彼女もそれを狙っていたのか、すかさず大鎌を振るう。
突然変異体は反応することも出来ず、鋭い一撃による刃が首に直撃した。
しかし、斬り落とすどころか皮膚に傷が付いた様子も無い。

「今ので二十七回目。これだけ行えば確定ね。」

すぐに退き、牙を避ける。

「クェジ。」
「えっ?」
「私には倒せないわ。」
「えぇっ!?」

突然変異体を上手くあしらいながらも言葉を続けるキゼ。

「属性無し…いえ、恐らくは全属性。攻撃で怯む様子も無い上、射撃、魔法共に耐性あり。更には近接攻撃は無効に等しいわ。何かに護られているようにね。全ての属性の耐性があるのもその効果によるものなのかもしれない。」

冷静に解説をする。
彼女の表情に焦りは全く無い。

「…そのまま魔法で攻めればいいんじゃないの?」
「そうね。その前にこちらの体力が尽きそうなのだけれど。」

突然変異体が放ったメギドをメギドで相殺する。

「…私達に任せてください!」

マナの一声に、手の空いた魔導部の生徒達が一斉に魔法を発動した。
乱れ飛ぶ魔法の嵐が突然変異体を襲う。

「…囮をしろ、ということかしら?」

仲間の攻撃を避けながら、生徒達の方へ気を散らした突然変異体にすかさず近距離からブラストによる強力な一撃をお見舞いする。
キゼの方へ意識を向ければ魔導部の生徒達から集中砲火を受け、生徒達に意識を向ければキゼの一撃。
一見、完璧のような連携だが、それでも突然変異体は倒れない。

「危ない!」

跳ね起き、生徒達の前まで駆けたクェジ。
咄嗟に防御壁を張り巡らし、ラ・メギドを防ぐ。

「っ…何これ…!?こいつの法撃力、滅茶苦茶じゃん!」
「そうね。恐らく他の生物の何かが入っているのかもしれない。例えば…カガジバリやカマトウズ。」

魔法の発動を感知し、ギ・ゾンデを回避する。
それと同時に魔法を直撃させる。

「頑丈な上に当たれば致命傷…キゼ、逃げる算段もしといた方がいいんじゃない?」
「その役目はクェジに任せる。私は被害が拡散しないよう、引き付けておく必要があるから。」
「キゼを置いて行けないよ!」
「…街か生徒、どちらかしか護れないとする。クェジ、あなたならどうするかしら?」

ブラストを発動し、地面を滑るように、そして素早く移動し、テンゴウグの魔法を回避していく。

「そ、それは…。」
「Keizならきっとこう言うわ。『自らの命を犠牲にしてでもどちらも護り抜く』、と。二択を迫られたとしても自らの力で三択目を生み出すでしょうね。」

ブラスト技を発動させる。
突然変異体の頭上から降り注がれた光が爆発を起こし、飲み込む。

「キゼ、死ぬつもりなの…?」
「最悪の結果の場合はそうなるだろうね。それでも道連れにはしてみせる。」
「っ…私は…。」

このまま戦っていれば生徒達に被害が及ぶ可能性がある。
しかし、先導して生徒達を避難させてキゼを残せば彼女は更に苦戦を強いられることとなる。

「わ、私達だってまだ戦えます!」
「いえ、あなた達を護るのも私の義務。代理とは言え、顧問だから。」
「でも…!」
「皆さん!」

マナの言葉を遮り、生徒達に声をかけるクェジ。

「残るテンゴウグはその突然変異のみ。私達の役目は終えたから避難するよ!」

生徒達に訴えかける。
彼らも何かを言いたそうにするが、大人しく離れていく。

「私が戻ってくるまで粘っててよね!」
「その頃には終わっているかもしれないわ。」

余裕を見せるかのように手を振って見送る。
しかし、この間にテンゴウグの攻撃が収まる訳も無い。
突然変異体の攻撃を回避する時にだけブラストを発動させ、攻撃に転じる時には解除してテクニックを放つ。

「っ…。」

しかし一瞬、体勢を崩したキゼ。
任意で発動と解除が出来る彼女とは言え、ブラストはそもそも強力な能力。
身体には相応の負荷がかかっている。
常人であれば既に気を失っていてもおかしくはないのかもしれない。
それでも彼女は強靱な精神力だけで無理矢理立っており、戦い続けている。

「…でも、何故…?」

疑問を口にする。
この突然変異体は今までかなりの攻撃を受けていた。
いくら耐性が高いとは言っても全く通じていなかったわけでもなく、全身に傷があるのが確認出来る。
そして、答えを見付けた。

「自然治癒…。」

回復力が異常に高かった。
ゆっくりと、しかし通常と比べれば異様とも言える速さで傷が癒えている。

「どうしたら…。…っ!?」

テクニックを防御しようとしたがタイミングが合わなく、弾き飛ばされた武器と共にキゼの身体は大きく後方へと吹き飛ばされた。
受け身を取れず、地面に叩き付けられた後に数回転がる。
急いで立ち上がろうとするが…動かなかった。

「こんな時に…。」

ブラストを酷使した末の結果。
指先を動かすのですら満足にいかない。

「…最期の最期で…死ぬことよりもKeizに怒られることが恐いと思うなんて…案外呑気ね、私も…。」

迫り来るテンゴウグの突然変異体を見ながら苦笑する。

「…助けて…Keiz…。」

呟き、牙が迫ってくるのを見て目を瞑った。
その瞬間…空が割れるような轟音が響き渡った。

「えっ…?」

目を開け、状況を確認する。
近くまで迫っていたテンゴウグは…少し離れている場所で倒れていた。

「にゃにゃ~ん♪あなたの愛しの『魔女』じゃなくってごめんね~?」

声をした方を見る。
そこにいたのは一人の女性。
クェジの師…ワーン。

「ワーンさん…?」
「どうやら『魔女』の教育はちゃんと身に付いているみたいだね?自らの命を犠牲にしてでも全てを護るなんて馬鹿な考えを。」
「っ…ワーンさんと言えど、その発動は取り消して!Keizを貶すことは私が許さ…。」
「うん、ちゃんと慕ってるんじゃん。このツンデレっ娘め。…その馬鹿な考えはね、私も持ってるんだよ。」

一瞬、ワーンの周囲が燃え上がる。

「好敵手の大切な弟子を護る為ならこの命、捧げるのも惜しくはない!」

ゆっくりと起き上がる突然変異体を見ながら宣言するワーン。

「…ワーンさん…。」
「な~んて言ってみたけど、ちょっと嘘。」
「えっ?」

次の標的をワーンへと定め、襲い掛かってくる。

「だって、こんな雑魚なんかには負けないもんにゃ。」

炎を放つ。
その炎が直撃した瞬間、突然変異体の全身が炎に包まれた。
そして、数秒も経たない内に炎は消え去り、残ったのは原形が無い灰だけだった。

「いくら耐性があってもそれ以上の力を加えてあげればいいだけ。いくら再生力が強かったとしても全て灰になってしまえば意味が無い…でしょう?」
「…言いたいことはよくわかりますが、それが出来るワーンさんが異端なのです。」

キゼは再び起き上がろうとするが、やはりそれは叶わない。

「強力な力だと思うけど…そんな使い方してると二十代で死んじゃうよ?まだまだ謎が多い力なんだから。…でも、『魔女』はきっと怒らないと思う。あなたも馬鹿じゃないだろうし、あなた自身が一番その危険性がわかってるんだよね?わかってて実行した。…護る為に。」
「買い被り過ぎです。私自身の為に使ったまでです。」
「…じゃあ、そういうことにしておくね?」

笑いながらキゼの前にしゃがみ込み、両手で動けない彼女の両頬を弄くる。

「や、やめてください…。…一つ疑問があります。」
「なぁに?」
「いつから見ていたのですか?」

ワーンはキゼがクェジと交わした言葉を知っていた。
少なくとも、その時には既にいたこととなる。

「突然変異が現れた時から、だよ。」
「それなら…。」
「何でもかんでも手伝ってたら修行にならないっしょう?一生懸命頑張ってる姿見て水を差すような真似は出来なかったんだよね。いい体験になったんじゃない?」
「…そうですね…。」

そう呟き、キゼを目を瞑る。
余程身体に負担が来ていたのか、そのまま意識を失ってしまった。

「さて、後始末は他の人に任せちゃって…と。」

ワーンはキゼを背負い、クェジ達が避難した先へと歩いていく。
その途中で会ったクェジに小言を言いながら。





その日の夜、大浴場にて。

「えっ、本当に本物なの!?」
「うん、あのワーンさんなんだって!サイン貰えるか後が聞いてみなくっちゃ!」
「スタイルもいいけど、裸も凄く綺麗…。」

ワーンは絶大な支持を受けている有名人。
そんな有名人が同じ浴場にいるため、興奮して騒いでいる女子生徒達。

「そんなに離れてなくても大丈夫だよ。ちょっとばかし名が有名でも同じ人間なんだから。」
「有名人だからこそ前を隠しなさい。はしたないですよ。」
「女同士なんだし、減るもんじゃないじゃん。」
「これだからあなたと言う御方は…。」

言い合う『魔女』と『幼火』。
そして、その光景を物珍しそうに見ている生徒達。

「私の生徒の中にもあなたに憧れを抱いている者は多いのです。幻滅させないで欲しいのですよ。」
「そんな堅苦しい有名人なんかごめんだよ。『魔女』みたいに気品がいいわけでもないんだから。…それとも、羨ましいわけ?主に胸が。」
「そんなことだから子供だと馬鹿にされるのですよ、『幼火』。」
「『魔女』みたいなのが大人だって言うなら大人なんて真っ平ごめんだもんね!」

舌を出すワーンとそれを見て溜め息を吐くKeiz。
それぞれの弟子であるキゼとクェジは全く気にしていない。

「止めなくていいんですか?」

弟子二人に問うマナ。

「いつものことだから。」
「うんうん。会えばいつもあんな感じ。じゃれ合ってるようなもんだよ。主に師匠が構って欲しいだけ…あいたっ!?」

ワーンが投げた桶がクェジの後頭部に直撃した。

「弟子に暴力を振るうなんて酷い師匠ですね。」
「ビースト流の愛情表現なの!」

クェジは倒れ、目を回していた。





入浴後、生徒達はワーンに群がっていた。
しかし、生徒達だけではなく噂を聞きつけた地元の人達も混ざっていた。
その頃、旅館の外に出ていたKeizとキゼ。
外にある長椅子に二人で座っていた。

「…私を避けているように見えますよ。」

率直に言う。
対してキゼは俯く。

「…怒られると…思ったから…。」

絞り出すように言葉を発した。

「どうしてですか?」
「…私、負けちゃったから…。…あの『魔女』の弟子なのに…Keizの顔に泥を塗ってしまうことを…したから…。」

泣きそうな弟子の頭を師は優しく撫でる。

「私がそんな誇り高い人間に見えますか?」
「…わからない…。」
「それに、謝らなくてはいけないのは私の方です。弟子が危険な目に遭っていたのに助けに行けなかった。ワーンがいなければ…。」

彼女が到着したのは決着してから暫く経った後だった。
ワーンから全てを聞き、頭を下げた。

「何にしても、あなたが生きてくれてよかったです。」
「こんな不出来な弟子なのに…?」
「最初から完璧な弟子など弟子にする必要はありません。そして、あなたは私の想いを引き継いでくれていました。今のあなたには少々酷だったのかもしれませんが…それでも嬉しかったのです。」
「…うん…。」

キゼは立ち上がり、真っ直ぐKeizを見る。

「私、絶対に強くなるから。『魔女』を超えるような大魔法使いに。」
「それは楽しみですね。あなたならなれますよ…必ず。」

Keizも立ち上がり、旅館の方へと歩き出す。

「なので、ちゃんと付いてきてください。」
「…わかってる。」

キゼもその後を追うように歩き出した。





翌日、旅行最終日。

「先生、ワーンさんと寝たんですか!?」
「同じ部屋でしたからね。」
「いつからそんな関係だったんですか!?」

生徒達に囲まれ、困った表情を浮かべる二人。

「元気だね~。」
「その言葉は昨日も聞いた。」

キゼはしおりを開き、予定を確認する。
しかし最終日ともあって殆ど書かれてはいない。

「Keiz、今日は何するの?」
「そうですね…。いえ、旅行なので予定を決めるのはあまり良くないでしょう?皆さんの要望があれば、出来る範囲で行いますけれど…折角『幼火』が来てくれましたし、何かして頂きましょうか?」
「えぇっ!?何も用意してないけど!?」
「講義なんていかがでしょう?もしくは、ワーンと御手合わせしてみたいとか…。」

Keizの提案に生徒達の目が輝く。

「にゃにゃにゃ…わかったよ。ただし、『魔女』も一緒にね!」
「私はいつものことですから構いませんよ。では、どこか広い場所に行きましょうか?」
「は~い!」

生徒達が元気良く返事をし、Keizとワーンの後に続く。

「最近、あの二人が羨ましいと思うことがある。」
「…うん。だから、私は頑張るよ!キゼが私が一番の好敵手だと認めてくれるように!」

力強く笑みを見せるクェジ。

「…精々頑張って。」
「キゼもあっさり負けないように頑張ってよね?」
「はいはい。」

二人も後に続く。





旅行から数日後…魔法協会本部のある一室。

「つまり、誰かが意図的に突然変異…いえ、合成生物を作っている可能性がある、と申すのですね?」

部屋にはKeizとワーン、それと老人の男性…サーノード。
彼は魔法協会の一員でありながら彼女達の上司であるサンティナ専属の執事であり、サンティナへの連絡係の役目も負っている。

「情報は先日送った通りです。度々突然変異は発見されてきましたが、それらとは全く違う性質を持つ個体であると推測されます。」
「それも、あの近辺だけで似たような変異が二体現れたなんて人為的にしか見えないもんね。理由だって簡単に思い付くもん。強い兵器が作りたい…科学者の中ではよくあることじゃない?」
「非道徳的ではありますが、機械を埋め込むことさえ有り得るのかもしれませんね。」

現段階ではそういう話は一切無い。
しかし、残酷な好奇心を持った科学者がいないとも限らない。

「サンティナ様に報告しておきます。ただし、その後の対処がどうあれ、勝手な行動は慎むようお願いいたします。…特に『幼火』、あなたが意思を見せれば同行してしまう者がいるでしょう。少なくとも、隣にいる『魔女』は。」
「…対処しない、って結果になれば勝手に行動させてもらうから。勿論、『魔女』も一緒にね。」
「勝手に決めないでください。」

一度溜め息を吐き、言葉を続ける。

「『執事』、一つ言い忘れていることがありました。」
「何でしょうか?」
「既に行動させていただいています。答えも想定通りでしたので。わざわざ対応の返答を待っているのも時間が惜しいのですから。」

Keizの言葉をただただ黙って聞いているサーノード。

「私にも秘密にすることないじゃん!」
「あなたも忙しいでしょう?巻き込みたくなかったのです。…あなたも想定されていたことでしょう、『霹靂』?」

Keizは背後を少し見、問う。
そちらの方向には扉があり、彼女の呼び掛けに答えるかのように開かれた。

「流石は問題児。悪名を語るだけはあるわね。」

部屋にいた三人は現れたのは一人の女性を見る。
彼女こそがサンティナであり、上司でもある。

「サンティナ様、いかがなさいましょうか?」
「勝手に解決してくれるって言ってくれているのだもの、何も言わないわ。ただし、魔法協会は何の責任も取らないし、サポートもしない。」
「わかりました。構いません。」
「そして、『幼火』も同行させること。二人が見付けた問題なのだから二人で解決するのが妥当でしょう?解決するまでは魔法協会の集会に出席しなくていいわ。時間が惜しいみたいだから。…サーノード、帰るわよ。」

部屋から出ていくサンティナ。
サーノードは二人に一礼し、主を追って退室する。

「望み通りになりましたか?」
「まぁね。このワーンに隠し事してたのが許せないのにゃ。」
「恋人ではあるまいし報告する義務はありません。…調査結果が届き次第行動します。なるべく予定に余裕を作っておかないとあなた抜きで行うこととなりますので。」

Keizも扉の方へと向かっていく。

「決行日を教えてくれなかったら燃やすから。…服を。」
「地味に酷い嫌がらせですね。それとも、あなたの趣味ですか?」

Keizは笑いながら手を振り、ワーンを残して出て行った。





『慰安旅行』・終わり






後書き

いかにも続く、って感じに終わらせましたが、実は続きはありません。
魔法協会の一部の面々が暴れるだけですし、色々と難しい設定を考えるのが面倒なので。

キメラ技術なんて知識、私にはさっぱりですもの(^_^;)
異種族同士の遺伝子を組み合わせてうんたらこうたら…有り得る話なのでしょうか?
この世界は圧倒的に技術が進んでいるようでしたのでこういう話を出してみましたしけれどね。





EPD・Mark:Ⅵ

消費PPは最大PPと同じ。
消費PPによって威力が比例し、元々の威力がかなり高い(ラ・バータ、チェイン無しで2万ダメぐらい)。
無属性固定であり、属性強化は無し。
ヒット個所数制限が無くなり、また、テクニックの範囲拡大。
細かな制御が出来ず、範囲内にいる仲間にも当たってしまう。

実は初期設定ではバータで氷の壁を作って敵の攻撃を防いで生徒達を護る、という案があったのですが、防御魔法でいいんじゃない?という意見があったので却下に。



マナノラ・メギド

文字通り、マナのラ・メギド。
強力な威力を持つマナのラ・メギドだが詠唱が長く、実戦では不向きとKeizが判断。
詠唱を短く、それでいて出来る限り威力を落とさないようにKeizが提案したのがこの魔法。
飽くまでもKeizは提案しかしておらず、実現出来たのは偏に彼女の努力と実力によるものである。
命名者は…不明。

マナのラ・メギドはこれ↓
(勝手に)コラボ企画「都立インフィニッティ~学園記」