すずめの戸締まり | 若宮桂のブログ・空と海がぶつかる場所

12月3日。
懐かしい音楽家、藤崎理映子さんが久しぶりに福岡でライブを行いました。会場は以前何度も理映子さんのライブを観に出かけたキャナルシティ。
その前にキャナルで映画を見ましたのでまずはその話を。



すずめの戸締まり

冒頭は、天ノ川がきれいに見える幻想的な夜空のシーンからはじまる。
美しい、満月の明かりが照らす大地を、藪を掻きわけてちいさい女の子が歩いていた。周囲は一面の廃墟。
泣き乍ら泥だらけの靴で歩く女の子はやがて、ひとりの女性と出会う。
そこで目が覚めた。

主人公の岩戸すずめ。高校生。ある事情で叔母と宮崎県でふたり暮らししていた。
夢を見た朝、学校へと続く下り坂を自転車で走っていて、ひとりの男性に目が留まった。
男性から、このあたりに廃墟はないか?扉を探してるんだと声をかけられた。
あの山に人が住まなくなった集落があると教え、別れたが、何故か気になって仕方がない。
もうすぐ学校というところで引き返し、教えた廃墟へ向かった。
何処かであったような気がすると、男性を探して廃墟を歩くすずめ。諦めて帰ろうとすると、扉があった。
おそるおそる扉を開けると、そこには、夢に出てきた天ノ川がきれいなあの平原が広がっていた。思わず扉を通り抜けるが、平原へ行くことはできず扉の反対側へ出てしまう。何度も繰り返すが入れない。
と、扉のすぐ横にあった石につまづいた。その石像のようなものを引き抜いてみると、今度は獣の姿になって去っていった。
ワケも分からず学校へ戻るすずめ。

学校の昼休み。スマホの緊急地震警報が鳴る。地震、そしてあの山の方から、赤黒い渦を成した巨大な龍のようなモノが飛び出しているのが見えた。しかし見えるのはすずめだけのようだった。
きっとあの扉だ。廃墟へ向かうと扉から赤い何かが出ていて、あの男性が扉を閉めようとしていた。
早く逃げろと促す男性。やがて、周囲から金色の光りが湧き立ち、赤いモノを取り囲むと、ソレは大地に横たえた。そしてまた、地震警報が鳴り響く。何か、を感じるのか、鳥が森から飛び立っていく。
ふたりは協力して扉を締め、鍵をかけた。赤い何かは消え失せ、雨が降り注いだ。

すずめを庇って怪我した男性を家へ上げて手当てする。
男性は宗像(むなかた)草太。あの赤い、ミミズと呼ばれている災厄が出てくる扉を閉める仕事で、日本中を巡っているという。
そこへ痩せた猫が現れる。すずめがイリコをあげると急に毛艶がよくなり、そして喋った。すずめ、好き。そして草太を見て、おまえは、邪魔。
草太は肉体を失くし、すずめの母の形見の子ども椅子に意識が乗り移っていた。
猫はあの引き抜いた石の化身だった。日本に2ヶ所ある、災厄を封じている要石(かなめいし)のひとつ。元の場所へ戻さなくてはと椅子の姿で猫を追いかける草太。すずめもそれを追いかけた。
猫と椅子とすずめは愛媛ゆきフェリーへ乗船。

SNSで誰かにダイジンと名づけられた猫をすずめは追いかけて旅する。椅子になってしまった草太の代わりに扉も閉める。まるでロードムービー。
愛媛では同い年の女性に。兵庫(神戸市)ではふたりの子を育て乍らカラオケスナックを切り盛りする女性と、そのお店のホステスに。東京では草太の友人に助けられる。
この、出会う人たちの気持ちの温かさが素敵で、印象深い。

旅のラストは、冒頭部分に見事に帰結する。
また、名作が誕生です。
ぜひ映画館で見てみてください。テレビやスマホとは音が違います。