君と僕の物語(第十話・後篇) | 若宮桂のブログ・空と海がぶつかる場所
僕が消えた朝
天使の羽が生えて
鏡見て笑ったよ
似合わない おかしいね

行きつけの喫茶店
なつかしい保育園
仲良しの肉屋さん
あたたかい僕の家

かなわなかった願いさえも
切ない位同じ姿で
僕に手を振っているよ

悲しみは悲しみのまま
喜びは喜びのまま
僕だけがいない

大塚利恵/「いいよ。」






大塚利恵。

松倉サオリ。

大城光恵。

イノトモ。

岡崎律子。

麗美。

それから、この前年、2001年末にパソコンを買って初めてインターネットに接続した先で、未だ音楽活動をされていると知った相曽晴日。

音楽CDを大量に買い求め、毎日毎日それをくり返し、聴き続けた。
四畳半の狹い部屋。
他にできることも無く、たゞたゞ、残骸のようだった日々を支えてくれた。

チョビは、下痢がちだったが、元気だった。
荒れていた目はよくなった。
よく遊び、すくすくと育った。
飼い猫のめっしゅは、自分がチョビばかり構うからか、少し淋しそうに見えた。

地元のコミュニティ誌に里親募集の記事を載せることに決め、写真を送った。費用は無料だった。
担当さんが親身になってくださり、大急ぎで掲載してくださった。

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モノクロでちいさく、チョビの写真が貼られたコミュニティ誌が投函された。
チョビが家に来て1ヶ月ちょっと経っていた。

電話が鳴った。南区に、夫婦で暮らす男性からだった。
妻が、写真を見てひとめ惚れした。すぐに引き取りたいとのことだった。
その人に猫を任せることに、決めた。

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部屋で猫さんを見つめて、泣いた。
たゞたゞ、みじめで、泣いた。

7月3日。男性が車で引き取りに来た。住所を控えさせてもらい、暫く談笑した。
その夜に電話があり、男性の妻を名乗る女性が嬉しそうな声でお礼の言葉を伝えてきた。

四畳半の狹い部屋が、少しだけ広く感じた。

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めっしゅクンが部屋に入って来て、ドカっとくつろいだ。

その後、チョビの写真を焼き増しし、夫婦宛てに送ったが、返事は無かった。

あの日以来、チョビとも夫婦とも会っていない。

その3ヶ月後の10月。
私は半導体製造工場での職を得、実に約2年もの失業期間からひとまず脱した。




吉崎硝子さんの楽曲を聴いていて思い出した、ちいさなちいさな、いのちの物語。「君と僕の物語」。
この日記は不定期で連載中です。最後までお読みくださってありがとうございます。