杵築大社(出雲大社) 瑞垣内に鎮座、真ん中の棟が須勢理毘賣命を祀る大神大后社(御向社)
*画像はWikiより







【古事記神話】本文 
(~その78  須勢理毘賣命の嫉妬 1)







須勢理毘賣命を正妻(后)とした大国主命ですが、先に因幡の八上比賣を妻とし、後に高志の沼河比売命を妻としました。

お盛んですな(笑)

もちろん政略結婚なのでしょうが。
再び須勢理毘賣命の元へと戻ります。


次に上げる記事と合わせて2記事で1セット。
今回も2日続けてのUPとなります。


~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

【読み下し文】
又其の神の嫡后 須勢理毘賣命 甚だ嫉妬みと爲す 故に其の日子遲神 和備氐 [此の三字以て音] 出雲自り倭國へ上り坐さんとして 束裝し立たむ時 片御手は御馬の鞍に繋け 片御足は其の御鐙に蹈み入れ歌ひて曰く
━━奴婆多麻能 久路岐美祁斯遠 麻都夫佐爾 登理與曾比 淤岐都登理 牟那美流登岐 波多多藝母 許禮婆布佐波受 幣都那美 曾邇奴岐宇弖 蘇邇杼理能 阿遠岐美祁斯遠 麻都夫佐邇 登理與曾比 於岐都登理 牟那美流登岐 波多多藝母 許母布佐波受 幣都那美 曾邇奴棄宇弖 夜麻賀多爾 麻岐斯 阿多泥都岐 曾米紀賀斯流邇染 斯米許呂母遠染衣 麻都夫佐邇 登理與曾比 淤岐都登理 牟那美流登岐 波多多藝母 許斯與呂志 伊刀古夜能 伊毛能美許等 牟良登理能 和賀牟禮伊那婆 比氣登理能 和賀比氣伊那婆 那迦士登波 那波伊布登母 夜麻登能 比登母登須須岐 宇那加夫斯 那賀那加佐麻久 阿佐阿米能 疑理邇多多牟敍 和加久佐能 都麻能美許登━━


【大意】
大国主命の正妻、須勢理毘賣命は甚だ嫉妬深かったのです。大国主命は妻に詫びて、出雲から大和へ上り住もうと身支度を整えました。そして片手を馬の鞍に掛け、片足を鐙(あぶみ)に入れた時に歌いました。
━━ぬばたまのように黒い御衣を、ぬかりなく身支度をしてくれたが、沖の鳥が胸を見る時、
羽ばたくように腕を動かしてみるもこれは相応しくない。波打ち際に脱ぎ捨てよう。カワセミのように青い御衣を、ぬかりなく身支度をしてくれたが、沖の鳥が胸を見る時、羽ばたくように腕を動かしてみるもこれは相応しくない。波打ち際に脱ぎ捨てよう。山の畑に蒔いたあかね草で染めた衣を、ぬかりなく身支度をしてくれたが、沖の鳥が胸を見る時、羽ばたくように腕を動かしてみるとこれは良い。愛しい妻よ。鳥の群れのように一緒に行ってしまえば、引いて行く鳥のように一緒に引いて行けば、泣かないと貴女は云うが、山のふもとの一本のすすきが
頭をうなだれるように貴女は泣くのでしょう。
そして雨上がりの朝、霧の中に立ち尽くしているのでしょう。若草のように美しい妻よ━━
事の語り伝えはかようでございます。


【補足】
大国主命は嫉妬深い須勢理毘賣命から逃げ出そうと図ります。出雲を飛び出て倭(大和)へ移ろうと。それを歌にして須勢理毘賣命に伝えたのです。

◎「奥つ鳥 胸見る時 羽たたぎも これはふさわず…」という句が繰り返し使われています。こういったものも「韻律」に含まれるのでしょうか。

後世に創作された歌だろうとは思いますが、美しく整った歌という印象を持ちました。

◎「嫉妬」は「うわばみねた・み」と訓むようです。検索をかけてみて分かったのですが…こりゃ訓めんわ!意味はそのままの通り。

◎「和備氐」は「詫びて」。なぜここだけ「万葉仮名(真仮名)」を用いたのでしょうかね?

◎古事記には大国主命の神話が多く描かれていますが、なぜか感情が描かれる場面はほとんどありません。偉大な大神でありながら人情味たっぷりに描かれるスサノオ神とは、あたかも真逆のようにクールに描かれています。

厚情家?…なO型男子さんにとって大国主命は、なかなか親近感が沸いてこない…。

この場面は大国主命が感情をほのめかしている数少ない箇所の一つ。詠んだ歌の中でとはいえ…。

◎「ぬばたまの…」は「黒」に対しての枕詞。前回の記事にも載せましたが…。

日本人の色彩感覚は世界でも図抜けています。また色名は植物に由来するものが多く、四季折々の植物や自然現象と連動して、季節の変化を繊細に感じとってきたからであろうと思われます。

…と、こんなことを書き始めると、「色」についてあれこれ書きたくなるのでこの辺で。
古文献等に色名が出てくると、それに着目することも一興かと。

ぬばたま(ヒオウギ)
*画像はWikiより

◎「御衣」で「みけし」と訓むようです。歌の中でそのように表されています。

◎「日子遲神(ひこぢのかみ)」とは「夫」のこと。

◎「そにどり」はカワセミ(鴗)の古名。

◎「あたね」は「茜(あかね)」の誤りとする説、「藍蓼(あいたで)」のこととする説があるようです。こちらでは「茜」説を採用しました。




今回はここまで。
明日も続きの記事をUPします。

大急ぎで記事作成せねば!



*誤字・脱字・誤記等無きよう努めますが、もし発見されました際はご指摘頂けますとさいわいです。