伯耆国 赤猪岩神社






【古事記神話】本文 (~その67 「赤猪岩」)






前回の記事では「因幡の白菟」が、実は八上比賣の化身ではないのかとしました。

歴史的アプローチからすればそこには辿り着かないのでしょうし、文学的アプローチをすれば辿り着くのだろうと思いますし。

古事記というものを、文学的アプローチで読み解く必要性は感じています。

頭をやわらかくして…。



【読み下し文】
是に於ひて八上比賣 八十神に答ヘて言はく 吾は汝等の言を聞かじ 將に大穴牟遲神に嫁はむ 故に爾に八十神忿りて大穴牟遲神を殺さむと欲す 共に議り而して伯岐國の手間山本に至りて云ふ 此の山に赤猪在り 故に和禮 [此の二字以て音] 共に追ひ下すは汝待ち取れ 若し待ち取らずば 必ず汝を將に殺さむと云ひ 而して火を以て猪に似たる大石を燒き 而して轉ばし落しき 爾に追ひ下しを取る時 即ち其の石 燒き著かへ而して死すと


【大意】
八上比賣は八十神たちに答えて言いました。「私は貴方たちの結婚の申し出は聞きません。大穴牟遲神に嫁ぎます」と。すると八十神たちは大穴牟遲神を殺してしまおうと思いました。話し合って策を練りました。伯耆国の「手間の山本」に着き、「この山には赤猪がいる。我々が追い落とすのでお前は待っていて受け止めろ。若し受け止め損なえば、絶対にお前を殺してやる」と言いました。そして猪に似た大石を焼いて転げ落としたのです。それを取ろうとして大穴牟遲神は死んでしまいました。


【補足】
◎助けた因幡の白兎から、「きっと貴方は八上比賣を得るだろう」と言われたのが前回の記事の終わり。どうやら八十神たちは八上比賣のもとへ来たようです。

その部分がすっかり飛んでいるのですが、ま…分かるか…。

◎そしてみなが思っきりフラれます(笑)
やはり八上比賣の化身が「因幡の白菟」だったのでしょう。

比賣は大穴牟遲神に嫁ぎます!と高らかに宣言。「將に(将に)…」とあるので決意は固かったようです。

◎そこで八十神たちは悪知恵を働かせます。大穴牟遲神を殺したらええやん!…と。

向かったのは伯耆国の「手間の山本」。比定地は現在の「手間要害山」(標高331.7m)。
出雲国との境に近い山。日本海から内陸10kmほどでしょうか。北側麓に伝承地、赤猪岩神社が鎮座しています。

◎もちろん神話を真に受けるようなことはしませんが…。
八十神たちが落とし、大穴牟遲神が絶命することとなった「赤猪岩」が境内には座しています。この神話を拵えた人の発想力には感服させられます。

出雲国へ敬神旅行する際に、出雲で宿が取れず伯耆国の「大山」に宿を取って大神山神社 奥宮へ登拝したおかげで、立ち寄り参拝が可能となった赤猪岩神社。計画したものではなく、たまたま通過する途上にあったのです。吸い寄せられるように向かったと記憶しています。



大穴牟遲神が八十神たちに落とされたという「赤猪岩(アカイシサン)」。「手間要害山」山中にもあるようです。


*誤字・脱字・誤記等無きよう努めますが、もし発見されました際はご指摘頂けますとさいわいです。